5
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「さて、時間も近づいてきたな。あと10分か。先ほど送られた映像を見ると、ほんの少しは時間が過ぎそうだが、爆発には間に合いそうだ」
「1分過ぎたら一人撃ち殺すって本気ですか」
「俺は嘘は言わないんでね」
「少し待ってください。ほんの少しだけ」
私は懇願した。カイドウは鼻で笑う。
目の前の酒たちはかなりの量が減った。もうさすがに腹も膨れたのか、カイドウは飲む手を止めていた。
「だって、そんなのあんまりです。」
「人質にしてる時点であんまりなことしてる自覚があるが」
「警察は要求を揃えるよう動いてるんでしょう?あなたの勝ちですよ、少しくらい慈悲を見せてください」
クラスメイトたちや、あの会場にいた小さな子供の姿が浮かぶ。
「どうせ爆発でみんな最後は吹き飛ぶんだよ」
「爆破も本当に止めないんですか」
「言ったろ、そんな気はない。うるさい少し黙れ」
カイドウはそういいながらちっともうるさくなさそうだった。むしろ、私が喚いているのを面白そうにみている。
握り締めた拳が震えた。
爆発は、きっとエルが何とかしてくれると信じている。
だからそれまで、誰も死んで欲しくない。少しでも時間を稼ぎたい。
「…どうせ死ぬなら、せめて恐怖心をこれ以上与えないで。一瞬で消し飛ぶなら楽だけど、撃ち殺すなんて辛すぎます」
カイドウは口角を上げたまま私をただ見つめている。そんな態度がまた、私の神経を逆撫でさせる。
「お前はやはり変わってるな」
「はあ?」
「ひどく狼狽たかと思えばやはりそれは自分の為じゃない。まさかお前は人質でジェット機に乗せられることを忘れたわけじゃないよな」
「…忘れられませんよそんなこと」
「普通はそこでうろたえろよ。助けてくださいって。酷いことしないでくださいって泣けよ」
「私はそれより、ここの人たちの命の方が大事なんです」
「だから変わってるって言うんだよお前は」
唇を強く噛んだ。
どうか、吉沢くんたちが。遠藤さんたちが。無事であってほしいと願ってるだけなのに。
全てはエルが何とかしてくれる。それは間違いない、だってエルはLなんだもの。爆弾だって、私が人質とされることだって、どうにかしてくれるはず。
その前に人を殺されては敵わない。
…かと言って、非力な私にはどうすることもできない…
「すごい顔してるな。」
睨み付ける私をみて笑う。
「とんでもない目だ。」
「お願いです、撃つのだけはやめてください。」
「おーおーしつこいねぇ」
カイドウは視線を下ろして銀色のスーツケースを見る。私も釣られてそれをみた。
「どうせ死ぬんだよ。お前以外はな。」
「……」
「まあお前も連れ去った後は生きる保証はないが…」
カイドウは再び私を見る。
「お前。うちの組織に入るか」
「…は」
耳を疑った。
「うちの一員になれば少なくとも犯しも殺しもしない。まあ組織の任務によっては結局お陀仏になる可能性は高いが」
「…あの」
馬鹿にしてるんだと思った。
私はゆっくり怒りの息を吐く。
「…聞いてましたか?私は自分のことはどうでもいいんですよ。他の人を助けてって言ってるんです」
「最後までさすがの返答だな」
そういうとカイドウは少しだけ笑って、ゆっくりと立ち上がった。
つい私は後ずさる。
「分かった。じゃあお前に取引を持ちかける」
「わ、私?」
カイドウはゆっくり私に数歩近づいた。つい身構える。
すると男は私の腕を強く持った。その力は肌に食い込み痛みが生じるほど。
そして力任せに思い切り引っ張られ、私はそばにあったベッドに投げつけられる。
柔らかなスプリングのおかげで痛みはなかったが、その突然の衝撃に驚いた。
はっと顔を上げれば、カイドウが靴もそのままにベッドに乗ってきた。
慌てて上半身を起こしたところで、カイドウの右手が私の首を掴んだ。
そこまで強くない手で喉元を抑えられる。私はカイドウの顔を見上げた。
「人のために自分を賭けられるか?」
「…え?」
「その煩い口を閉じて俺に許しを乞えば、お前の安全は保障してやる」
「え?」
「この2時間暇せずにいられたからな。褒美に人質にはしてもお前には指一本触れないと約束してやる。もちろん部下たちにもそう指示する」
「……」
彼は面白そうに白い歯を見せる。
「だがどうしても待ってて欲しいと言うなら。
5分警察を待ってやる。その5分の代償はお前の身体だ。飛び立つ前に遊んでやる」
「…そんな時間ないと言いませんでした?」
「もう警察との交渉もほとんど終わりだ。息抜きでもしとくか。どうする?勿論、空に飛んだ後も部下たちに可愛がらせてやる」
面白そうに見下すカイドウは私に馬乗りになっている。
身動き出来ず、私はただ男の顔を見上げるしか出来ない。
「さあ、5分の代償になるか?」
「いいですよ」
即答した。
カイドウの笑ってた口が、突然結ばれる。
「本当に待っててくれるなら。いいですよ」
「……」
「どうしました?私を抱くのでは?」
決して目を逸さなかった。
不思議と、恐怖心など何もない。
そりゃ不本意にも程がある。避けられる物なら避けたい。平気なわけじゃない。
…それでも、5人の人が助かるなら安いものだと思う。
カイドウの目がすっと細くなった。
「堂々としてるな」
「ええ」
「正直、いざ危険が迫ればさすがにお前も綺麗事を並べないのかと思って提言したんだが」
「まさか今から無しだなんていいませんね?」
「ふてぶてしいな。どうせ犯すなら泣き喚いた女がよかった」
「趣味最悪ですね」
「お前俺に言いたい事はないのか」
「10分になりませんか」
「そうじゃねぇよ」
カイドウはちょっとだけ笑った。その間も喉を抑えられている。やや話しにくい。
「仕方ない。7分にしてやる」
「8分」
「7分だ。お前の価値はそれくらいだ」
ちょっとだけイラッとした。
…だが、仕方ない。
7分。つまりは7人助かるなら、私は全然構わない。
でも、
ごめん。
エル、ごめんね。
「わかりました、7分で手を打ちましょう」
「本気か」
「まさか冗談のつもりだったんですか?」
「いや」
意外なことに、少しだけカイドウの目が揺れた気がした。その三白眼に、どこか戸惑いの色を感じる。
「お前なぜそうまでする」
私の首に手を置いたまま尋ねた。
「クラスメイトは大した仲良しでもなかったんだろ。理由なんてないと言っていたが、普通ではないぞ」
「…私が、幸せだからですよ」
私の顔を、細めた目ですっと見つめた。
「言ったでしょう。人は不幸せだと人を蹴り落とす。でも幸福であれば…大事な人を助けようとするんですよ」
私は本当なら死んでた人間だから。
それを助けられ、愛する人と日々を過ごし、愛情をたくさん貰えている。
過去の呪縛を解き放ってくれたクラスメイトたちと笑って過ごして、とても幸せな1日だった。
私が今幸せでいれるのは、私を囲む大事な人たちのおかげだから。
その人たちを守りたいと思うのはー至極真っ当なこと。
「…終わってもそうやって強い口をきけたら褒めてやる」
カイドウは低い声でそう言うと、私の首からようやく手を離した。そして、紺色のワンピースに手を掛ける。
エルが選んでくれた服だった。
私はそれでも目を逸らさずカイドウを見つめた。
後悔はしてないが、やっぱり酷く胸が痛んだ。
こんな愚かな選択をした私を呆れるだろうか。
エル
