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Lは頭の中で浮かんだ文字に、己で衝撃を受けた。
まさか、これはどういうことだ?
偶然では出来過ぎている。
だがしかし、そうなれば…
「Lどうしました」
ピクリとも動かないLを見てワタリが尋ねた。
Lはただ目の前の一点に集中している。その光景はどこか不気味でもあった。
「…アナグラムです」
ぽつんとLは言う。ジェシーが首を傾げた。
「アナグラム?文字の入替えによって異なる意味をもつ語をつくる言葉遊びのことですか?」
それがどうかしたんですかとばかりに不思議そうにしてるジェシーに、Lは言った。
「土井みさ」
4名のうちの一人だった。唯一の女性で、数多くの結婚詐欺を働いた者だ。
「結婚詐欺をしていた女性ですね?」
「彼女の名前を並び替えればソマディアになります」
はっとジェシーが息を飲んだ。
彼女も頭の中で確認する。確かに、どいみさという名前をローマ字表記にし並び替えればソマディアとなる。
「と、いうことは…彼女が今回の解放の目的?でも、組織名をつけるということは、カイドウの恋人なのでしょうか?」
「…それはおかしい」
「え?」
「カイドウはゆづきにこう言っていました。
『俺にとっては神こそが一番大事な存在だ、だが他に興味を持った人間はお前くらいだ』
この発言では彼は愛する人間などいないと言っています」
「それはそうですが…本心じゃないことを言ったのかも」
「何のために?あの場ではゆづきにそんな嘘をつく必要はありません」
「…それもそうですが」
Lは頭の中を動かして考えた。
…まず第一に、あの時は聞き流してしまったが、
『俺にとっては神こそが一番大事な存在だ、だが他に興味を持った人間はお前くらいだ。』
この発言…『他に興味を持った人間??』
そのまま聞き入れれば、…『神』は人間であると受け取れないか?
それに、今日ゆづきから聞こえる音声で違和感のあるものがあった。
あの部屋にはカイドウ以外にももう一人部下がいるのは知っていた。ゆづきはグラスの在り処を、その部下に初めに尋ねていた。
男は言ったのだ。『カイドウさんを待たせるなよ』
なぜ組織のボスを名前で呼ぶのだ??そんな組織は珍しい。名前だとしても、ボスを『さん』付けなどと。あまりに違和感だ。
更にもう一つ。
解除する数字が組織を作り出した者の誕生日だと告げた時、カイドウは言った。『お前たちにとっては不吉な数字』だと。
爆弾を解除する数字ならば、こちらにとっては不吉ではない。むしろ幸運の数字だ。カイドウの発言はどこか引っかかる。
今日自分の耳に入ってきたさまざまなセリフが蘇る。
頭の引き出しを一斉に開けた。聞こえた声までもが耳に蘇る。
『上の時間潰しに付き合ってもらう』
『あの方もそんな時間ねぇから』
『ソマディアのカイドウだ』
『カイドウさんを待たせるなよ』
『解放する4人は特に急げ』
そうか、そうだ。
私は勘違いをしていた。
…ともすれば。
Lはぐっと目を見開いた。
あの時のカイドウの発言も、これで意図がわかる。
「ワタリ、土井みさの誕生日を調べてください」
「はい」
「…土井ですか?」
ジェシーは目を丸くする。Lは再び乱暴に角砂糖を食べた。
「思い込みでした」
「思い込み?」
「カイドウがボスだと、誰が言ったんですか」
「え。それは…」
言いかけてジェシーは止まった。
Lは爪を噛みながら言う。
「誰も言ってませんよ。本人も言ってない。メンバーはカイドウの事をカイドウさん、と呼んでました。組織の中でも上の存在には間違いないでしょうが、彼が特別な部屋にいたことや交渉を持ちかけてきたことで、ボスだと思い込まされていました」
「…じゃあ。ソマディアを生み出したボスって…」
唖然とするジェシー。Lは未だパソコンに映されている護送車の中で、辛気臭い顔をしたよくいる中年の女性を指さした。
「土井みさ。彼女がソマディアの生みの親。カイドウからすれば『神』です」
「神って…想像上の幻聴かと…!」
「思い込みとは恐ろしいですね」
「まさか!」
「これほど大掛かりな解放劇にも説明がつきます。なんとも単純な答えでした。松田が送ってくれた情報は何も必要なかった」
ジェシーは手で口を覆って驚愕した。
まさか、組織のボスを今、護送して組織に戻そうとしてるなんて!
Lは鋭い眼光でパソコンを睨みつける。
「L。土井みさの誕生日は11月13日です」
Lは頭を回転させる。
土井みさは40歳だ。40年前の11月13日は。
やはり…金曜日だ。
「13日の金曜日」
ポツリとLが言ったのを、ジェシーは見る。
「カイドウは言いましたね。『お前たちにとっては不吉な数字』だと。爆弾を解除する数字ならば、こちらにとっては不吉どころかむしろ幸運を運ぶ数字です」
「あ…」
「土井みさが生まれたのは13日の金曜日、世界的にも有名な不吉とされる日です。」
これで合点がいった。カイドウの言葉の不自然さに。
そして、確定した。全ての辻褄が合う。
「決まりです」
Lはゆっくりと立ち上がる。
あの爆発物のケースの暗証番号。
それはカイドウの誕生日ではない。
土井みさの誕生日だったのだ。
なんと愚かな、これだけの事に気づくのにこんなに時間を掛けてしまったとは。
「このまま土井みさを解放させるのは無論、ジェット機も奴らの手に渡すわけにはいきません」
「…今度こそ本当に行くんですね」
「いきましょう。1107号室へ」
ワタリもゆっくり立ち上がった。
Lは座った目でじっと考える。
「…失敗は許されません。武器も限られています。念入りに計画は立てましょう」
3人は小さく頷いた。
Lはパソコンを操作した。
暗い通気口を画像は移動している。
先ほども使用したカメラだ。静かに移動しながら、時折ある通気口の出口から見下ろして廊下の様子を見る。
「この階の見張は一人のようですね」
Lは言った。
「場所はこの部屋から少し歩いたエレベーター前にいるようです。引きつけて隙を狙撃するか…しかしできれば銃声はあまりたてたくない。銃声が響いてどこからかカイドウに異変を知られては。」
「狙撃はカイドウにたどり着くまで置いておきたいですね。大丈夫、一人なら何とかなりますよ」
ジェシーはそう言って、着ていたグレーのジャケットを脱いだ。Lとワタリは目を見張る。
ジェシーはアメニティとして置いてあったヘアゴムで長い髪を纏めた。そして少し踵のあるサンダルは脱ぎ捨てた。
「ワタリ、拳銃を貸してください。」
「ジェシー」
「私だって訓練は積んでます。生憎実戦は初めてなのですが」
苦笑しながらジェシーはLを見る。
司令塔の世界のL。そしてその右腕。
彼らの危険は最小限にしたい。私が行くのが相応しい。
…それに
「大丈夫です。光を助けたい。彼女は私の命の恩人ですからね」
笑ってジェシーは強い語尾で言った。Lはじっと考えた後、ワタリに言って彼女に拳銃を渡した。
少し緊張した面持ちでジェシーはそれを受け取り、しっかりと握った。
「ジェシー。私が合図したら、例のカメラを見張りの頭上であえて音を立てます。恐らく見張りの男は通気口に目を奪われるでしょう。その隙に攻撃を」
「ええL、分かってます。大丈夫」
震えることもなくジェシーは口角を上げた。Lは、この人も中々ゆづきに負けないほど強い人だと感心する。
「…ジェシー。私はゆづき以外の人間はどうでもいいと言ったことがありますが。
仲間を亡くして何も感じないほど人間を失ってませんので。気をつけてください」
Lがそう言った途端、ジェシーは驚いたように目を丸くした。しかしすぐに、嬉しそうに微笑んだ。
「…ええ。大丈夫です。」
「時間はありません。準備を」
ワタリはそっとジェシーの肩に手を置いて頷いた。ジェシーはそれだけで、とてつもない勇気を貰った気がした。
私が死んだら。光だって絶対悲しむ。これからもLの役に立ちたい、こんなところで死んでてはダメだ。
彼女はそう心で呟くと、すぐに部屋の出入り口に移動して扉の前にスタンバイした。
Lはノートパソコンをひょいと持ち、ジェシーの背後に続いた。
彼女の心の準備ができたのをみて、Lはパソコンに指を伸ばす。
Lの視線とジェシーの視線が合った。
「いきます」
Lは小さな声でそう呟くと、パソコンをクリックした。
カツン、と音がパソコンから響いた。カメラが地面にぶつかった音だった。
Lは今だ、と言うようにジェシーに頷いて見せた。彼女はドアノブを音を立てないように下げて扉を開いた。
廊下の様子をみるのはかなり久々な気がした。ジェシーはすぐに右手を振り返る。
そこには、目出し帽の男が天井の通気口に向けて銃を構えていた。先ほどの音に反応したらしかった。
今だ!
ジェシーは素早く駆け出す。裸足であるため、そう足音は響かなかった。
しかしその気配と僅かな足音に男が気付かないわけがなかった。はっとしてこちらを向く。ジェシーは怯むことなく男に突っ込んでいく。強く地面を蹴り続ける。一瞬でも戸惑ったら終わりだと自分に言い聞かせた。
男は驚きながらも天井に向けていた銃をすぐにこちらに向けた。目出し帽から見える目が大きく見開いている。
発砲が先か。私がたどり着くのが先か。
もし撃たれたとしても、私は決してとまらない。
「obstacle!!(邪魔!)」
ジェシーはそう叫ぶと、男が撃つ寸前で銃をためらいなく掴み、思い切り天井に向けた。
抵抗する余裕もないのか、銃口は思っていたより簡単に上を向いた。
その瞬間、今だ目を丸くして驚いている男の顎に目掛けて、ジェシーは手加減なしで思い切りアッパーを打ち放った。
顎が揺れれば脳も揺れる。ジェシーは突き上げた拳に痛みが走ったのを自覚する。
男はそれなりの大男に見えたが、意外にもそのまま地面に倒れ込んだ。
その衝撃で幸いにも、男は銃を手放した。重い音を立てて銃は地面を滑る。
ジェシーはそのまま一瞬の隙も与えないように倒れた男に飛び乗り、馬乗りになった。
「なん…」
初めて男から声が漏れる。ジェシーはお尻のポケットにしまって置いた拳銃を取り出して、男の頭にあてた。
「だまりなさい」
男は黙るしかなかった。突然目の前に現れた外人の女が銃を持って自分に馬乗りになっている事実に呆然とした。
そしてジェシーはそのまま男の喉元を狙って拳を打ち込んだ。
男は一度苦しそうにごふっと息を吐くと、そのまま気を失った。
目を閉じて口を半開きにした男はやや白目気味で横を向いている。
…本当に気絶したかしら。演技だったらどうしよう。
ジェシーはそんな不安がよぎり、念のため何度か男の喉を今度は何度か手を開いた状態で攻撃した。
「ジェシー、十分ですよ」
そんなワタリの優しい声が背後から聞こえ、彼女はようやく振り返る。
Lとワタリが立っていた。
ワタリはすでに転がった男の銃を手に持っている。
「…はい…」
「よくやりました。怖かったでしょう」
「いえ。無我夢中で」
改めて下を見れば男は確かに気絶していた。でも大丈夫、生きてる。
Lは少しだけ微笑んで言った。
「お疲れ様です」
「い、いえ…」
「さて、武器もまた一つ増えました。行きましょう、時間はないです」
そう言ってLは気絶する男をじっと見下げた。
