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やはり。
Lは目を見開いた。
爆発物はカイドウの部屋にあったのか。ゆづきのずっとそばにあったとは、彼女も動揺を隠し切れていない。
ジェシーがガタンと立ち上がる。ワタリはじっと一点を見つめた。
だがしかし。これは好都合だ。Lは呟く。
爆弾も救い出したい人も1107号室に揃っているとは。
「行くんですか、L」
ジェシーが切羽詰まった声で聞いてくる。
「ワタリ、ここには拳銃1つだったな」
「はい。それと催涙弾が2回分」
「なんとかなるか」
この部屋から脱出、そこから11階へ移動し部屋に入る。
ゆづきの救出と、爆発物の回収。ボスがいるとなればその道は生易しくはないだろう。しかしここにいても危険は迫るばかりだ。
「しかし、爆弾を処理したとしても、他のソマディアのメンバーたちはどうしますか。武力が足りません。人質は向こうの手にいます」
ジェシーが尋ねる。Lは爪を噛んだ。
「…とりあえずは爆弾の回収に行きましょう。それさえ処理できればこちらの勝機が一気に上がります」
Lは立ち上がり、テーブルの上のチョコレートを口に放り込み、味わう様子もなく乱暴に噛んで飲み込んだ。
「カイドウの元へ行く手筈を整えます。慎重にやらねばこちらも命が危ないので」
Lがそう話し始めたときだった。マイクから、カイドウが『4桁の暗証番号』の話を始めたのは。
はっと3人は止まって音声の出所を見つめる。
Lは眉を潜めた。
…なるほど、スーツケースの中か…
それを開く暗証番号と爆発物は連動。二度入力ミスすれば即作動…
ジェシーは心配そうにLを見上げる。珍しくLは苛立ったように頭を掻いた。
「…やはり一筋縄ではいかないか」
ただの爆弾ではないとは。
それなりに処理に要する機器や道具が揃ってさえいれば、そのような小細工、多少時間がかかるが解除は可能だ。
だが。問題なのは今その『処理する機器や道具』が手元にないことだ。
さすがの私も手ぶらでその解除はできない。
閉鎖されたスイートルームには、あまりに必要なものが欠けすぎていた。
「…仕切り直しです」
Lはまたソファに座り込んだ。まだ早かった。
こんな状況ながら、Lはゆづきの冷静さと人の心に入り込む才能に感嘆した。彼女があちらに潜入していなければこの短時間でここまで情報を得れていなかった。
「4人とソマディアの関連はどうですか」
ワタリが答える。
「やはりそう言った確定的な情報は出てきません」
Lは少し考え込む。松田が次々と送ってくる4人の情報を読む。
家族構成、初犯時の様子、逮捕後の様子、学歴、情報は増えてはくるがめぼしいものはない。
「4人に関係があるんでしょうか…」
眉を潜めたジェシーが小さく呟く。Lはそれに返事が出来なかった。
4人のうちのだれかが、何かしらの形でソマディアと関連しているのは確信している。
だからこそ奴らは解放を要求しているのだ。松田への恨みなど後付けに過ぎない。たまたま松田が逮捕した犯人が重要人物だったのだ。
だがそれは誰だ?そして、どんな関わりが?
ただのソマディアのメンバーぐらいの立場ではここまでしないだろうに…
Lは電話で警察庁長官に再び連絡を入れた。
「Lです。4人の解放の準備は整っていますか」
相手によれば、すでに4人は護送車に乗せられこちらに向かっているという。
「監視カメラで撮影してますね?その映像を送ってください」
Lはそう求めると、少し経ってからパソコンに要求通りの物が送られてきた。
4人の男女、それぞれ手錠はしたまま護送車に乗っている映像だった。警察も勿論同乗し4人を見張っている。
誰しもが戸惑ったようにしていた。喜ぶような顔をしている者もいれば、恐怖に震えている者もいる。
特に不審な言動をしてる者はいない。
いつのまにか背後から覗いてきていたジェシーが腕を組んで考えている。
「突然の解放…喜ぶのも恐れるのも自然な感情です」
それぞれの顔をじっと見る。不審な動きなどは特にない。若い男は嬉しそうに口角を上げており、女性は一人怯えたように眉を潜めている。
Lは長官に再び声を掛けた。
「Lです。この4名に司法取引を持ちかけたい。こちら爆発物の保管場所を特定しましたが、その解除には暗証番号が要する事が分かりました。カイドウの誕生日だそうです。
この4名はカイドウと何らかの関わりがある可能性が非常に高い。
カイドウが何者か情報をこちらに寄越せば、刑期短縮するとの取引を持ちかけてください。」
電話口から戸惑った声が聞こえる。
「千人の命がかかってますよ。早急に実行してください。このまま解放されてもすぐに捕らえられることを強調して。こちらの取引がより魅力的に感じるよう説明するのです」
Lは淡々と述べる。こういう時、日本の警察は少し頭が固い、とLは苦々しく思う。日本は建前や評判を恐れすぎだ。アメリカの奔放さが少しは欲しい。
だが今回は唸りながらも長官はすぐに決断した。中々の勇断だとLは思った。
また通信を切り、Lは監視映像を見守る。
その間も4人の情報に再び目を通す。ソマディアとの関係を決定付けるものは何もなく、勿論カイドウが何者かの情報もまるでない。
少し時間が経ち、監視映像に動きが見られた。
ソワソワとする4人の傍で、一人の付き添いの男が電話に出た。中々ベテランそうな男だった。年は50代ほどか。眉間に入った皺と鋭く光る目は、中々仕事の出来そうな男だ、とエルは思った。
電話をとったのち少し驚いた顔をしたが、すぐに真剣な顔に戻った。やや緊張した面持ちで何度も頷く。
「割るでしょうか」
ジェシーがパソコンで調べ物をしながらチラチラとこちらを気にしている。
「相手にとって悪い話ではありませんが…なんとも言えません」
そう言いながらエルはじっと映像を見つめた。
男は携帯を切り、やや古びた背広のポケットに仕舞い込んだ。
低く渋い声が、スピーカーから聞こえてくる。
『今から解放されたとして、どうなると思う』
4人は小さく首を傾げた。
『ホテルからは無事脱出はするだろう。だがここまで派手な事をしでかした組織が海外に逃亡出来るわけない。それにおそらくだが…この組織はまた他の事件を起こすつもりだろうなぁ。どっかの観光地やホテルをドカン、だ』
男はゆっくりと4人の顔を見比べて言った。
『もしボスのカイドウという男について心当たりがあれば小さな情報でもいい、ここで落として貰えれば、お前たちの刑期短縮を約束する。』
『まじ?』
一人の若い男が驚いたように言う。
『ああ。テロリストについて行ってもどうせまた捕まる。連れ戻されるだけだ、もしかしたら刑期は長くなるかもな。ここで話して貰って刑期短縮した方がずっとお得だ』
『おいおい羨ましいよ!知ってる奴いんのか?』
また若い男…確か村田と言ったか。大きな声で言う。
しかし他の3人は何も答えなかった。警察はなおも揺さぶる。
『カイドウの名前だけでも。勿論ここで言ったということは決して漏らさないし、カイドウとの関係も何も問いたださないと約束する。』
やはり中々出来たベテランだ、とエルは思った。
下手に綺麗事を並べて必死に説得するより、こういう場合は利点と欠点を並べて淡々と話す方が相手は揺れやすい。
重みのある声だ。さて、どう反応するか。
村田だけは面白そうにキョロキョロと他のメンバーを見比べたが、誰も口を開かない。
というより、「知らない」という反応をしている。
Lは眉を潜める。
「…言いませんか」
ジェシーが心配そうに尋ねてくる。
「ワタリ。ゆづきとカイドウの録音した会話から、重要な内容を除いた声を長官へ送ってください」
「はいL」
Lは少し乱暴に紅茶を飲んだ。
「カイドウの声色を聞かせます。この計画を知らずにいる可能性もあります。ですがどこかでカイドウとの関わりは必ず持ってるはず。声を聞けば何者か思い出すかも…」
どこか祈るようにLは呟く。
そう、もしかしたら解放される側は、まるでこの計画を知らない可能性もある。
カイドウが一方的に立てた計画かもしれない。
ワタリが長官に送った後、それを4人に聞かせるよう指示を出した。その通り、監視映像では警察の男が携帯からカイドウの声をその場で流した。
だがしかし、またしても4人とも首を傾げるばかりで、こんな男は知らない、と述べたのだ。
Lは強く爪を噛んだ。
そんなはずはない。計画に携わってるにしろ知らないにしろ、カイドウとは面識はあるはずだ。
…ともなれば。ここまで割らない理由は一つ。
この解放の計画を知っているな?
つまりは…共犯か。
Lはスッと目を細める。
この4名からカイドウの情報は割れそうにない。
…ではどこから攻める。
ワタリとジェシーはソマディアやカイドウについて必死に調べ続けるもまるで情報はない。4人については松田からも次々さまざまなデータがきたが、めぼしい物は何もない。
あまりに情報が足りない。
「この4人の誰かはカイドウと知り合いなのは間違いないでしょうか」
ジェシーがパソコンから目を離さないまま尋ねる。
「何かしら繋がりがあるのは90%の確率でそうだと思っています。そして、それが正しいのならおそらくこの解放計画を知ってるでしょう。これほどカイドウを知らないと否認するのは計画を知っているからです。とんだ名演技を見せてくれたようです」
「ソマディアの一員でしょうか。それとも、カイドウの個人的な…例えば家族や、恋人など?」
「そこですね…これほど大掛かりな解放計画ですし…ただ組織の一員とは考えにくいのですが…」
そう言った時、ふとLは思い出した。
『だが他に興味を持った人間はお前くらいだ。』
カイドウは、ゆづきにそう言っていた。神が最も大事だ、それ以外は興味がないと言う意図。そこへあまり出会ったことのないタイプのゆづきを面白がっていた。
この台詞が彼の本心だとすれば、これから解放される者は?これほど周りくどいやり方で解放するならばよほど大事な存在なのでは?
釈然としない、Lはそう思った。
思い返せばそう言った不可解な点はいくつか存在する。一つ一つが釈然としないのだ。だがどれも繋がりはしない。
「……足りない」
Lは苛立ったように言うと、チョコレートでは不足だと言いたげに、隣のシュガーポットの角砂糖を摘み上げて口に入れた。
足りない。何もかもが足りない。
糖分も、時間も、情報も、道具も、
愛しい人のぬくもりも。
Lは再びパソコンで松田が新たに送ってきた情報を素早く読む。
新井ともや 振り込め詐欺
土井みさ 結婚詐欺師
村田慶 強盗罪
天堂清 窃盗罪
必ずカイドウと、ソマディアと繋がりをもつ人物がいるはずだ。
カイドウはこの中の誰かを解放したいがために、松田に恨みがあると嘘までついた。
司法取引も食いつかないか。ともすれば果たしてどう攻めるか。
時計を見た。2時間のタイムリミットはだいぶ近づいてきてしまった。
その時夜神から通信が入った。
『竜崎!カイドウから通信が』
Lはぐっと目を見開いた。
『伊藤です、カイドウさん』
『要求のものは進んでるか』
『解放者はもう護送車でこちらに向かっています。ジェット機と金も準備は進めていますが、やはり時間が厳しいかと。』
『1分過ぎたら一人撃ち殺す』
『待ってください。こちらは全力で要求を飲んでる。先ほどの話では、要求を飲んだとしても一人一般人を人質にすると』
『一人女をそばに置いてる。こいつをジェット機に同乗させる』
『まずはそこだが、それでは話が違う。全ての人質の解放を約束してくれないか』
『断わる。要求の物を準備してる様子を映像でこちらに送れ』
『それは構わないが、ならばそちらも、人質の無事を確認させてもらえないか。』
『さっきから要求ばかりするな。俺はお前たちの希望に何一つ添えるつもりはない。お前らはこっちの要求を飲め、出来ないなら人を殺す。それまでだ』
『分かった、何も求めない、しかしジェット機の準備だけはどうしても時間がもう少しだけほしいんだ、なんとかそこだけは』
通信は何も言わずに切られた。
Lはまた砂糖を口に入れると、すぐにパソコンに目を移す。
随分徹底した組織のボスだ。情のかけらもない。ゆづきと話している様子では、少しは人間らしいところがあるように思えていたのだが。
「夜神さん、ジェット機の準備は実際のところどうですか」
『竜崎…実際かなりギリギリだ、ややアウトかもしれん。あと40分しかない。もう少し時間に余裕があればいけるかもしれん』
「…そちらでカイドウにまつわる情報は何もないですね」
『長官に言われて警察全力で調べあげてるが…めぼしい情報はない』
「…わかりました」
果たして、本当に要求全てが揃わなければやつはどう動くか。
そして解放された4名は、あのホテルに入ったあとどうなるか。
Lは天井を見上げた。
眉を潜め、苛立ちを隠せないように息を吐く。
最後の切り札と言っても、やはりこれほど全てが足りない状況では何も思い浮かばない…
焦りが自分の首を締める。冷静さを失う。
…こんな時あなたがいてくれたら…
スピーカーから時折聞こえる声は遥か遠く、どこか無機質に聞こえる。
…何を弱音を吐いているのだ。私ともあろうものが。
自分の危険を顧みずカイドウの部屋に行きこれほどの情報を流してくれたあの人に、申し訳ない。
死なせない。
あの人だけではなく、ここにいる全ての者を死なせてはならない。
誰かが欠けてはあの人の心に傷がつく。
私はいつでも、彼女には笑っててほしい。
Lは再び正面を向くと、パソコンに羅列した文字を素早く読んでいく。
何か小さな情報でもあれば。
そう、この胸の中に存在する小さな疑問や釈然としない点の一つでも解決するものがあれば。
きっと繋がっていくはず。
ぎょろぎょろと黒目を動かしながら、Lはふと4名の名前を思い出し、ある人物の顔が浮かんだ。
ミサ。弥海砂。
土井みさという同名の女の名前で、つい連動して出てきてしまった。ゆづきの友人。
かつては第二のキラであったが、今は記憶をなくして一人の女性として、ゆづきとかなり仲の良い友人になっている。
今となっては信じられないが、『KIRA』と表示された陳腐なビデオテープをこちらに送りつけてきたのが始まりだった。
…待て。
