5
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「松田桃太、って…」
「我々とキラ捜査をした仲間でした。半年前ゆづきを探すのにも協力してもらいました」
「あの、一番若い子ですか」
Lはゆっくりと噛んでいた爪を離した。
そして電話を取り話す。
「夜神さん松田さんは近くにいますか」
『い、いや…いまここには…』
「すぐに連絡を。ついたら私に転送してください。それと解放の要求があった犯罪者たちの詳細をすぐに送ってください」
『わかった』
Lは一度電話を切った。眉を潜めながら考える。
まず。このテロリストたちは、自分たちは犠牲になるつもりはないらしい。
世界中のテロリストの多くは自らの命も共に他者を葬るパターンが多い。それは神からの使命だとか、理由はそれぞれだ。
だが金とジェット機を用意させるあたり、少なからずここから逃走しようと目論んでいるのが分かる。
ともすれば。
「ゆづきを連れ込んだのは、逃走する時の人質のつもりでしょうね」
味気のないチョコレートを口に入れた。ジェシーが天井を見上げる。
逃走する際人質がいればこちらは手を出しにくくなる。奴らは彼女を連れて行くつもりだ。共にジェット機に乗り込み、果たしてそのあとは。
…させない。絶対に。
Lは鋭い眼光で前を睨みつける。
これで一つ無事に残されている裏口の意図が分かった。解放された犯罪者をそこから中に入れるのだろう。
「ジェシー今度は再び長官へ連絡を」
ジェシーはすぐに動く。Lは電話を耳に当てる。
「Lです。犯人の要求の準備は可能ですか」
想像通りの言葉が返ってきた。テロに屈することになる、逃亡されたあとの被害…
だがしかし、さすがに相手も戸惑っていた。前例のないほどの大事件だ、日本の犯罪歴史に残るだろう
。
「いいですか。とりあえず用意は必ずしてください、犯罪者の解放もです。時間内に必ず。」
Lはそう短く強く言うと、相手の返事も聞かずに電話の電源を切った。
電話を放り投げた瞬間、マイクからゆづきの苦しそうな音と激しい物音が聞こえた。
はっとしたLは思わず足を下ろす。
ゆづきは苦しそうに咳き込んでいる。これまで感じたことのないほど、Lの心臓は早まった。
「…L、落ち着いて…」
ジェシーはそう言いながらも自身も戸惑ったように目を泳がせている。何も出来ない自分の非力さを二人は共に嘆いた。
じっと耳を済ませると、彼女は無事のようだった。あまりに常識離れした彼女の度胸に、警察関係者と疑われていたらしかった。
またすぐに酒を求められる。
Lはふうと長く息を吐いて座り込む。
心臓がもたない。今までどんな事件とかかわろうが、自分の命を掛けようがこんな風にはならなかったのに。
背後でワタリの声が聞こえた。
「L、1107号室の住所と名前は架空のものです」
「決まりだ」
とりあえず一歩。彼女とボスの居場所が分かった。Lはとりあえず一つ安堵した。
さてここからだが…
まず第一に爆発物だ。これの解除をしなくてはならない。全員吹き飛んでしまっては終わりだ。恐らくだが奴らは爆発物を停止させる気などないに違いない。テロリストの思考とはそういうものだ。
銃をもったテロリスト達もどうにかせねばならない。このままでは用意したジェット機に乗せられゆづきまで連れて行かれてしまう。
逃げられたあとのことは…考えたくもない。
珍しくLは眉を潜めて頭を掻いた。動けないし情報も足りない…ここまでこちらが不利な状況も初めてだ…
手元の携帯が鳴る。Lは瞬時に耳に当てた。聞こえてきたのは半分泣きそうになっている松田の声だった。
『り、竜崎〜!!!』
「松田さんですか」
『は、はい!そのホテルにいるってまじですか!?』
「ええ、お陰でさすがに戸惑っています。松田さん、犯人達はあなたにとんでもなく恨みがあるようですが」
『僕全然心当たり無くて…いやないって言うのもおかしいですけどね?』
「よく考えてください」
『考えても分からないんですよ〜…』
頭を項垂れる様子が目に浮かぶような細い声だった。
Lはため息をつく。
2時間、か。
「…あなたが逮捕に携わった事件で最近釈放された者がいればデータを送ってください。あと今から解放される者たちの事は事細かに調べて」
『ええっ…そんなことしてる暇ありますか…』
「やつらに逆に取り引きを持ちかけられるカードが何かあるかもしれないでしょう、今はどんな情報にも縋り付きたいのです」
松田が電話先で息を飲んだのが分かった。
『は、はいすぐに…!えと、ゆづきちゃんもそこにいるんですよね?』
「彼女はソマディアボスのカイドウの部屋で人質になっています」
電話口からガチャンという物音が響いた。驚きのあまり松田が何かを落としたのか、はたまた足をぶつけたのがしれなかった。
『……は……い、ま、なんて…』
「説明してる暇はないです、今言った通りです。よろしくお願いします。ゆづきを助けるためです」
Lはそういうと、松田の返事も聞かずに電話を切った。
ソファに軽く放り投げると、爪を噛む。
奴らのいうように本当に恨みがあるとすれば、やはり松田に逮捕された経歴があると考えるのが一番だ。本当にあるとすれば、だが。
だが松田の言うように、今カイドウたちの正体がわかったところでこちらに勝機が訪れるわけではない。
爆発物…それの場所を突き止めたいが…
監視カメラも破壊、自分も身動きが出来ない。
ひとつなのか、複数個なのかもわからない。
もしどこにあるかさえわかれば、やや強引に動いて解除しにいけるのだが…
しかし。合理的に考えれば。
「爆発物はどこかに保管してあるんでしょうか…」
ジェシーが不安げに言う。
「このホテルを崩すような爆発物、単体ならば大きさもそれなりになります。小型なもの複数個だとすれば、1箇所ではなく計算されて満遍なく配置されてるはず。」
「奴らはここを制圧してから爆弾を設置したんでしょうか」
「そこです」
Lは天井を見上げる。
「やつらが何人いるか把握してませんが、人質の見張りもしながら爆弾をいくつも設置するにはあまりに膨大な人数と時間を要します。しかし制圧前の設置は考えにくい。ここはそれなりの高級ホテルです、監視カメラの設置など警備は怠ってないはず。」
「そうなると…」
「断言は出来ませんが、爆発物は複数個ではなく単体なのでは」
「単体ですか…」
「どんな種類のものか分かりませんがスーツケースくらいの大きさがあればこのホテルの破壊は可能なものもあります。
…もしたった一つの爆発物を保管するとすれば」
Lはゆっくりと正面を向いた。鋭い目が光る。
「ずっと見守れる者が、そばに置いて大切に保管するでしょうね…」
ジェシーがはっとLの顔を見た。
「まさか…」
「まだ仮説です、動くには少し早いです。もう少し情報を得なければ」
掠れた声を自覚して、Lは冷めた紅茶を飲み切った。
