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「エル、まさか…」
「で、しょうね」
あの屋敷に…遺体で??
瞬間今まで味わったことのない悪寒が体に走った。ホラー小説なんか比べものにならない、現実の恐怖とは。
両腕をさする。周りが寒くなった気がした。
あの中に死体があったってこと…??はしゃいで眺めていたあそこに?
嘘でしょう!!?
「でも、どうして…」
「彼はこの屋敷を取り壊すための下見に来ていたんですよね。怨恨だとすればこんな辺鄙な場所までわざわざ付けたことになり考えにくいです」
エルはマシュマロを指で挟みむにむにと弾力を楽しむように遊ぶ。
「さて。この屋敷は依頼人の祖父の物でしたね。取り壊すなという言付けの元引き継いだが依頼人は無視して取り壊そうとして服部は行方不明に。
まずはなぜ、祖父はここを取り壊すなと言ったのか」
「え。幽霊たちを刺激しないためじゃ?」
「なんとも不条理な理由です。例えば以前取り壊そうとして事故があった、などあればまだ分かりますが、調べでは今まで一切そういったことはありません。根拠のない理由です」
「じゃあ、なんで?」
「こう考えれば全ての辻褄があいます。祖父は幽霊屋敷になったから別荘を訪れなくなったわけではなく、訪れなくなったあと幽霊屋敷にされたのです」
「さ、された??」
「見方を変えてください。幽霊屋敷は故意的に幽霊屋敷にされたのです。それも屋敷の持ち主によって」
「そんなの、何のために」
「これまた光さんが得意そうな展開だと思うのですが」
エルは潰れたマシュマロを口に放り込む。
「人に近寄って欲しくない物が隠されているのでは?」
「……」
「そしてその隠されていた物を服部が見つけたとしたら?」
「しょ、小説ですか…?」
私は頭を項垂れる。
「得意のホラー妄想をどうぞ。今回はミステリー妄想と呼ぶべきでしょうか」
「依頼人の祖父は例えば…誰かを殺して、その死体を屋敷に隠した!それで誰も近寄らないように幽霊が出るなんて噂を立てた。服部さんはたまたま隠し扉に気付いて死体を見つけて、さらにそれを祖父に見つかって口封じ…!」
「お見事です。なんとも陳腐な展開です」
「陳腐ですかね…!?じゃあ、私たちが昨日見に行ったあの屋敷には、2人の遺体があるってこと…!?」
「服部の分はまず間違い無いかと。もう一つについては断言出来ません。光さんは殺人と仮説を立てましたが他にも考えうる事はあるので。ですがまあ…ここまでして隠し通したがるなんて、殺人ほどの秘密であるのは間違い無いでしょう。
服部がいなくなった日の祖父はアリバイがないことがわかってます。ある防犯カメラには祖父の車が映っていました。どう入手したかは分かりませんが、服部があの屋敷を調べに行くと知って心配で付けたのではないですか。」
「確定的…」
「屋敷の中は調べてませんが、祖父のトランクなどはこっそり調べ済みです。そこからは服部のDNAなどは検出されなかったので車で遺体を運んだとは考えにくいです。そのまま屋敷に隠したと考えるのが一番スムーズです」
卒倒しそうだった。はしゃいで見学していた自分が恨めしい。とゆうか、エル予測出来てたなら教えて欲しかった…
そんなまさか、あの古びた家に遺体があるだなんて想像もしていなかった。
「服部が行方不明になって屋敷の解体が白紙になったので思惑通りでしたでしょうね。そこでまさか孫がコイルに依頼していたのは予想外だったでしょうが。
守秘したいがためにコイルに依頼をかけたと言うのにこれでは無理ですね。早速あの場に警察を向かわせます。昼間に沢山の警察がいたのではさすがに何も事件は起こらないでしょう。」
なんら推理力は必要ありませんでした、と平然というこの人を、今改めて世界のLだと自覚した。
遺体があるかもしれない屋敷を平然と見てたなんて。
…一般人の私とはやはり違う。
現実は小説より奇なり、とはよく言ったものである。