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振り返りエルを見上げた。

風が吹く。

それがエルの黒い髪をまきあげて、彼の白い肌がよく見えた。

エルは優しい目で私を見ていた。

「……え」

「まあ、別にあなたの名になってもいいんです。そこにこだわりはないし、私は普通の人とは違うので名前が変わってからも使えることはないでしょう。正式な届出さえも、普通通りには行きません。

今までと特に大きく変わることはないのですが…」

エルはゆっくり空を見上げる。

「それでも…あなたと一つの名を共有したい」

青い空にエルの白い服が映えて眩しい。

空を見上げるエルの横顔と首筋のラインが綺麗だ、と思った。

「もっと早く言おうとしていたのですが…あなたのご両親の前でと思ってたら遅くなってしまいました」

「…エル」

真っ青な中にエル一人。まるでその中に吸い込まれてしまいそうなくらい、

どこか幻想的だった。

風に吹かれて木々がざわめく音が心地よい。

「あなたといると私は周りの世界が色を変える。目まぐるしく、それは眩しいほど。あなたがいなくては、世界は色を失くしてしまう」

ゆっくりエルは私を見た。

風であなたの服が膨らむ。髪がゆっくりなびく。

「一生私のそばにいてください。私の隣に。私はあなたに色を見せてもらってる変わりに何を返せているのかは分かりませんが…あなたを一生愛し続けることだけは自信があります」

あなたの黒い瞳に私が映る。

心が震えた。

こんなにも、あなたは私の心を揺らす事ができる。

それは世界でただ一人あなただけ。

私はゆっくりと立ち上がった。

「私だって…色を見せてもらってますよ」

あなたと同じだよ。

灰色にしか見えなかったこの世界が、あなたがいることで鮮やかとなる。

揺るぎのない幸せの世界へと。

恋をして知った世界の鮮やかさ。あなたに出会うまで、私は知らなかったから。

「私はずっとあなたの隣にいます、エル…何があろうと。私が命を掛けて愛した人。全力で、最後まで愛し続けます。」

エルは優しく笑った。そしてそっと私の手を握る。

自然と二人とも空を見上げた。

雲一つない快晴。今日の色は青色。

鳥が鳴く。その音だけが響いた。

…綺麗だ

私たちが生きてる世界は、こんなにも美しい。



手のぬくもりが、確かに命を感じさせる。

太陽の光とあなたの白い服の眩しさに目がくらむ。

それでも私は目を閉じない。

あなたと二人これからもこの世界を見て生きていく。




寒いこの冬に、風が吹いた。

その風はなぜか、とても温かく私たちを包んだ。








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