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「##NAME3##ちゃあああああん!!!」


病院内に響き渡るんじゃないかというほどの声。

突然のことに私はぎょっとした。

ミサは入ってきた瞬間、私に抱きつこうと突進してきたが、寸前で急ブレーキをかけた。

さすがに病人に力一杯抱きつくのはよくないと、意外にも冷静に考えたのかもしれない。  

ミサはポロポロと涙をこぼして私のベッドに縋り付いた。

「ゆ、##NAME3##ちゃーん!よかったよぉ無事で〜…」

「み、ミサ…なんでここに?」

私は驚いて Lの顔を見ると、彼は平然と言った。

「あなたのパソコンを借りて私から連絡しました」

「そうだったの?」

そうだ、ミサとは会う約束してたのに、完全に私は忘れてしまっていた。

エルからミサに連絡しといてくれるなんて、ちょっと意外過ぎ。

ミサはベッドのシーツを握りしめて顔を押し当てている。

心配掛けちゃったなぁ…

「ミサ、ごめんね、心配したでしょ」

「したよぉー!約束の時になっても来ないし連絡しても返ってこないし…ソワソワしてたら竜崎さんから切り裂き男に狙われて怪我したって連絡きて!」

私はまた驚いてエルを見た。切り裂き男の事まで説明したとは。

エルは変わらぬテンションで言った。

「ミサさん、##NAME3##の事はマスコミにも伏せてますから絶対内密ですよ」

「分かってる!絶対言わない!」

「適当な嘘では信じてもらえないと思ったので…」

エルは頭をぼりぼりかいた。私はちょっと笑ってしまう。エルってやっぱりミサに弱い気がする。

まあ、そんなに詳細に話してはないだろうけど。

「もう大丈夫、少しずつ動いていいって言われてるし」

「本当!?##NAME3##ちゃんに何かあったらもうミサ終わりだよ…」

「ごめんね、せっかく久しぶりに会えたのにこんな形になって…」

「##NAME3##ちゃんは悪くないよ!そう…悪いのは切り裂き男!」

がばっとミサは顔を持ち上げる。怒りに震えるように拳を握った。

「ミサ周りの人に散々いわれたけどね、狙われやすいぞって!」

「そうだね…今までのターゲットの特徴は似てるもんね…」

「なのにまさか…##NAME3##ちゃんは全然タイプ違うのに。##NAME3##ちゃんが可愛いからだね!可愛いは罪!」

ミサにしろエルにしろ、なんでこんなに私を持ち上げてくれるんだろう。

喜びを通り越してなんだか呆れてくる。

背後で黙って聞いていたエルが口を開いた。

「同感ですね、##NAME3##は可愛すぎます」

「そうよねーって、竜崎さんいたの??」

ミサが目をパチクリとさせてエルを見る。私はつい吹き出した。

「か、会話してたじゃない!」

「そうだっけ?##NAME3##ちゃんに会えた喜びで頭沸騰してたから認識してなかったや」

私は堪えられず声を上げて笑う。ようやくミサも泣き顔から笑顔に変わった。

しかしすぐ思い出したようにはっとして、エルを指差す。

「そうだ!最近仲間になった女に言い寄られてない!?浮気してない!?」

はっとして慌ててミサを止めた。

「み、ミサ、それは…」

「もし##NAME3##ちゃん泣かしたりしたらミサ竜崎さん許さないからね!」

「失礼なことを言わないでください、私は##NAME3##以外眼中にありませんしなんならミサさんが裸で言い寄って来ても何とも思いません」

「なにそれ凄く失礼!!ムカつく!でもそれでいい!」

「ミサさん2年前から全然変わってませんね…」

「こっちのセリフよ!竜崎さんかわらなすぎでしょ、タイムスリップしてんじゃないの、その服何枚持ってんのよ!」

懐かしい掛け合い。仲がいいんだか悪いんだか分からない私が好きなコンビ。

私はまた声を上げて笑った。

私が笑うのを見て、ミサが釣られて笑った。

エルはそんな様子を少し微笑んでしばらく見た後、ゆっくり椅子から降りた。

のそのそと歩き出す。

「せっかくなので泊まって行ってはどうですか。一晩くらい譲ります」

「え…いいの?」

「あなたといると##NAME3##も楽しそうなので。」

エルはそういうとこちらをチラリと見た。

「##NAME3##、無理はしないでください」

「うん、竜崎…ありがとう」

また少しだけ口角を上げて微笑むと、そのまま彼は病室を後にした。

ミサは感心したように言う。

「意外と気が効くんだね、竜崎さん?」

「ふふ、竜崎はね、ミサに弱いんだよ。周りの人間に無頓着な彼がミサに連絡取ってたなんて、凄くびっくりしたもん」

「ふーん?確かに、外見はぜんっぜん変わってないけど、雰囲気は柔らかくなった気がする。」

「そうかな?」

「##NAME3##ちゃんのおかげかもね!」

ミサはそう笑って、エルが座って椅子にぴょんと腰掛ける。

「あ、来るとき街中でミサの看板見つけたよ。すごいね」

「あ、見てくれた〜?仕事はまあ順調ってとこかなー。」

「ミサも、いい意味で全然変わってないよ。可愛いまんま」

「もー##NAME3##ちゃん嬉しいこと言ってくれるー!」

ミサは本当に変わらない笑顔で笑う。

第二のキラだった記憶を失ってる彼女は本当に一人の女の子として、順調に立ち直ってるようでホッとする。

「で?本当にライバルはもういいの?」

「うん、もう大丈夫。仲直りしたよ。すごい綺麗な人でね…ミサとはタイプ違う美人だった」

「ライバルと仲直りできるなんてすごーい。ミサなら出来ないなぁ〜」

ミサは感心したように言う。

「てゆーか竜崎さんにお似合いなの##NAME3##ちゃんしかいないから。それは2年前から変わらない!」

「はは…あ、ありがとう」

ミサは少し首を傾けて、優しく微笑む。

「何か竜崎さんと会って思い出しちゃったなぁ、まだ監視されてた頃」

切ない響き。

あの頃とは違う確かなこと。

……月くんが居ない。

「ミサ…」

「あの頃結構ミサ楽しかったんだ。##NAME3##ちゃんも近くにいたしさ」

「……」

「あ、ごめん、暗い話じゃないの!ほんと、懐かしんでるだけ!」

彼女はそう言って、窓の外を眺めた。

もう日は落ちて夜に変わっていく。窓ガラスにミサの顔が反射して映った。

「寂しいけど、それなりに楽しいこともあるよ」

「そう…」

「こうやって、##NAME3##ちゃんにも会える。たまにだけど」

「私も会えて嬉しいよ。いつも話聞いてもらって凄く助かってる。」

友達のいない私にとって、一番仲良くて一番古い友達。

エルもきっとそれを分かってる。

やっぱりミサといると、エルとは違う楽しみがある。

ふと、ミサはまた一筋涙をこぼした。

「なんか…##NAME3##ちゃん無事だって安心したら、ホッとしてまた泣けちゃった」

「…ごめんね、私今、ミサがそうやって心配してくれてるのが凄く嬉しい。」

ミサは涙を拭きながら、私を見てニッコリ笑った。

「##NAME3##ちゃんは大事な人だもん。あんまり会えなくても、ずっと変わんない。ミサの命の恩人だよ」

可愛らしいその笑顔を見て、私は微笑んだ。

「そんな大そうなことしてないよ…今のミサがあるのは、ミサのおかげ。その他のなにものでもない」

私は何もしてない。

遠くから応援してるだけで、頑張って来たのは紛れもなくミサ本人なんだ。

両親と、好きな人を亡くして…本当に強いと思う。

「##NAME3##ちゃん変わんないね!相変わらず優しい」

ミサはそう言ってまた涙を拭いた。

「さ、楽しい話しよーよ!イギリス生活どーう?」

「と、特に変わらなくて話すことないなあ…ミサは?前言ってたモデルのライバルどうなった?」

「あー!あれね!読者投票ミサ勝ったからもう眼中なし。」

「あはは、ミサらしい」

二人の笑い声が部屋に響き渡る。

尽きることのない話を語る。

久々の友人との会話を、私は噛み締めていた。










それから二週間。

私は入院生活をつづけた。

お粥から開始になった食事は徐々に普通食となり、点滴は抜針された。

抗生剤は経口投与となり、それも終了。

少しずつ活動量を増やして、歩き回れるようになった。
 
よくよく考えれば私が入院してる部屋は特別室という豪華な部屋で、シャワールームもついてるし部屋も広々していた。

余計なお金を掛けてしまったことに申し訳ない…反省。

捜査員の方々は順番にお見舞いに来てくれ、ミサも仕事のない夜に顔を見せてくれたりと、私は退屈することなくすごした。

何より、エルは片時も離れず付き添ってくれた。

仕事に戻っていいよ、と言ったのだが断固として受け入れず…(本人曰く、頭の中でちゃんと仕事してます、だそうだ)

一日中私の横で座ってお菓子を食べてる生活。

そんな彼の姿はいつのまにか看護師さん達の間で名物になっていたらしく、訪室されるたび「今日もいるね〜竜崎さん」と笑われた。

しかも、「ナースステーションに余ってたから!」と甘いお菓子を与えられて餌付けされるほど。

初めはその見た目と奇行で引かれていたようだが、話してみれば案外普通、笑えば意外と可愛いとのことで、珍獣扱いされてるようだった。

エルが他の人と関わる様子なんてほぼ見たことない私には新鮮で面白い光景だった。

そうこうして私の怪我や体調も完全に回復。

ようやく、退院の運びとなったのだった。
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