「朝食中にすみません」

「全然大丈夫です!ワタリさんもいかがですか?」

「私はもう取りました。老人の朝は早いんですよ」

茶目っ気たっぷりで笑う。つられて私も笑った。

「L、頼まれていたデータを入手しました」

「早かったな。置いておいてくれ」

ワタリさんは言われた通り、リビングの机に置く。

「今、日本に帰る話をしてたんです!」

「ようやく大切な人たちに会えますね」

ワタリさんが目を線にしながら微笑む。

「あ、でも二人ともそんな無理しないでくださいね!?私のために帰ろうとしてくれてるんですよね?」

「あなたと出会った思い出のある国ですから。私にとっても思い入れの深い場所です」

エルが言ってくれるのを嬉しく思う。出会ったのはもう…3年ほど前にもなるのか。

「今度こそは急ぎの依頼が来ないことを祈りましょう」

ワタリさんが言う。

「それにしても…Lがちゃんと朝食をとってる姿、未だ見慣れませんね」

「ワタリさんも思いますか!?さっきその話してたんです」

「長年Lに仕えてますが、こんなLを見る日が来るとは。##NAME1##さんのおかげですね」

「わ、私の力じゃあ…」

「いいえあなたの力です、あなたが早死にするなどと私を強く揺さぶったおかげです」

「なんか私が脅迫したみたいな言い方やめてもらえますか」

「事実です」

「…そうだけど」

私とエルの掛け合いを見て、ワタリさんが声を上げて笑った。

「相変わらずお二人は仲がいいですね」

「そ、そうですかね…」

「##NAME1##さんと仲が悪くなったら私の人生は終わりです。世界のLも終わりです」

「ま、またそうやって大げさな…」

困る私を見て、ワタリさんはまた声をあげて笑った。






私はタオル類をまとめて洗濯機に入れる。

洗剤を取り出し測り入れる。

柔軟剤を出し、中身が少なくなってるのに気がついた。

ストックを出そうと棚の奥を見ているとー

「##NAME1##さん」

「うわっ!エル!びっくりした!」

私は振り返る。エルがそこに立っていた。

「洗濯ですか。」

「うん、天気いいし…」

「クリーニングに出せばよいのに…」

「洋服はそうしてもらってるから、他の小物くらい私が洗うの」

資産に溢れるエルは、一度使った衣類は全てクリーニングに出すと言う驚きの生活だった。

洋服は高い物も多いので未だにそうしてるが、(自分で洗うのが怖い)タオルやシーツぐらい私が洗うようにしている。

エルはそっと後ろから私を抱きしめた。

「あなたは私の隣で座っててください。あなたがいなければ私の推理力が落ちてしまいます」

「ちょっと洗濯や掃除してるくらい…私の数少ない仕事だから…」

「何度も言わせないでください。あなたの仕事は私の隣にいることです」

「ほ、ほんの数十分だから!」

私は慌てて柔軟剤を詰め替える。エルの腕が苦しくて邪魔だ。

エルは私を放さない。

「あなたと日本に帰るの楽しみです」

「楽しみだね!ふふ、日本で何しようなぁ。日本食食べ歩きたいなぁ…」

「あなたと出会ったホテルに泊まりましょうか」

「わ、いい!懐かしい…結構長いことあのホテルで過ごしたからなあ」

「あのカフェでお茶もしたいですね」

ようやく詰め替え終えると、私は洗濯機に入れて電源を入れた。

回り始めたのを確認し、エルに言う。

「戻るから…離してくれる?」

「いやです」

「い、いやって…」

「いい匂いがします」

「毎日言ってるそれ…」

「##NAME1##さん」

「なんですか」

「私は世界で一番の幸せ者です」

「わ…私もですよ」

「どうやったら伝わるんですか私の思いは」

「十分伝わってるよ…」

未だ慣れることのないエルのストレートな愛に、私はつい顔を赤らめた。

そっとエルがキスを落とす。
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