「松田さんが持ってきた映像を確認しました。##NAME3##を攫ったあと、ここの道に来るまでを時間計算しその範囲に通った車は9台」

Lはいつものように膝を曲げたまま座り、皆に言った。

一度全員がホテルに戻ってきていた。皆真剣な表情でそれを聞いている。

「そこから軽自動車を除きます。今までの推理を筋道立ててみると、軽自動車の可能性は極めて低い」

「すると何台ですか?」

Lは右手を広げる。

「5台です」

ほうと、捜査員から感嘆のため息が漏れた。容疑者の車が5台まで絞れた。

「今ワタリが警視庁に映像を届けに行ってます。警察庁長官に連絡しておきました。映像を分析して車のナンバーを全力で割るように」

「割れそうですか?」

「同じようにアメリカにも依頼を掛けました。双方から攻めます。割れさせます。必ず。」

Lの強い口調に、捜査員は黙った。

「夜神さん、和菓子屋の客は辿れなさそうなんですね?」

「ああ…常連というわけでもなく、店員は特徴すら覚えていない…」

「…仕方ないですね、こちらの分析結果を待ちましょう。結果がで次第、その車の持ち主を調べ上げてください」

監視カメラの映像からナンバープレートを分析し、その番号の持ち主を辿るのは決して容易いことではない。それなりに時間を要する。

Lは苛立ちを隠すように時計を見る。

切り裂き男なら、3日後に殺す。時刻は昼だった。

「みなさん食事もとってください、ジェシーに用意させした。休まなく動いている。体力が持ちません」

食事は取らねば、まだまだ捜査は続く。捜査員は複雑な表情をしつつも、並ばられたサンドイッチを口に放り込んだ。

「はあ…##NAME3##ちゃんの作った豚汁が食べたいですよ…」

「いうな、松田」

思わず漏れた本音を、夜神が注意する。でも松田のため息は止まらない。ふとLを見る。

「竜崎こそ…前は見てるだけで吐きそうなくらいお菓子食べてましたけど…食べないんですか?」

Lの座る前には、山積みの角砂糖のみだった。ジェシーが心配そうい言う。

「そう言ってるんですけど…」

「ちゃんと糖分はとってます」

「さ、砂糖じゃないですか〜…それも見てるだけで気持ち悪くなりそうだけど…」

「…今は##NAME3##が作ったもの以外食べる気になれないので」

世界の名探偵が呟いた声に、一同はやるせない気持ちでいっぱいになった。

変人の頂点を飾るようなこの名探偵。しかし彼女に対する愛情は誰しもが認めている。

普段自信に満ちてあまり感情を出さない彼がこれほどまいっているのは初めてだった。

「竜崎、だいぶ参ってますね…」

「##NAME3##さんとあれだけ仲良かったからな…無理もない」

小声で模木と相沢が言う。そう話す自分たちも食が全く進まない事にすぐ気づき、視線を落とす。

見ていたジェシーが小さな声で話しかけた。

「食欲、ありませんか?」

「ああ、やっぱり…##NAME3##さんが心配でな。しかし食べておかないと」

そう言って模木は無理やり口に入れた。ジェシーは不思議そうに首を傾げる。

「年も離れてるし性別も違うのに、あの子とそんなに仲よかったんですか」

相沢は寂しげに微笑んだ。

「なんてゆうか…凄く気遣いの出来る、優しい子で、家族みたいな感覚なんだ」

松田は鼻息荒くする。

「あんなに素敵な人いないですよね!そこにいてくれるだけで安心感があって…その場が和んで…落ち込んでる時にはほしい言葉をくれる…はあ…素敵すぎて狙われたのかなぁ…」

話を黙って聞いていた夜神は進まないサンドイッチを手に持ちながらLに尋ねた。

「竜崎。やはり切り裂き男なのか」

「私の中では90%以上の確率で、切り裂き男の犯行です」

捜査員が絶望感で満ちる。

「が、切り裂き男であると証明しろと言われれば無理です。やり方が同様という事だけですので。」

「他は今までと条件が違うもんな…」

「でも!切り裂き男だとしたら##NAME3##ちゃんはまだ無事ですよ!今までの被害者も、殺害されるまで水分や食事を与えられていた事がわかってるんですから!」

「………そうですね」

Lは素直に松田の言うことに同意した。それは普段のLを知ってる者からすれば、なんだか違和感のある答え方だった。

黙って聞いていた夜神はすぐにサンドイッチを飲み込むと、コートを手に取った。

「食べ終えたら聞き込みを続けよう。少しでも情報を集めるんだ」

彼女を、一刻でも早く助けよう。

その目はそう強く語っていた。

ほとんど寝ず、食べずに働く捜査員は誰も休みたいとは言わず、強く頷いてすぐまた出て行った。

ジェシーは大量に残されたサンドイッチを回収しながらLに尋ねた。

「この次はどうなさるのですか。確たる証拠もないまま逮捕はできません」

「どんな手を使っても##NAME3##を探し出します」

Lは角砂糖をかじった。##NAME3##が薄くなってきたと笑ったクマは、また濃くなっていた。








それから時間が過ぎ、連絡が届いた。

全ての車のナンバーが割れたとの事だった。

また、そのナンバーから車の持ち主が判明した。

時刻はすでに夕方18時。

##NAME3##がさらわれて、24時間以上経っていた。


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