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それから暫くして、 Lの元へ捜査員から連絡が届いた。

5カ所のうち3カ所は、近くにあるコンビニや飲食店など監視カメラが設置されてわずかながらも道が映っていた。

となれば、あと2カ所のうちどちらかを、切り裂き男は通ったことになる。

Lはずっと地図と睨めっこをしていた。

『L、雨にかなり流されていましたが、駐車場に残されたものはやはり苺でした。』

ワタリから連絡が入る。想定内の答えだが、これでゆづきが誘拐された現場は確定。

「そうか、分かった」

次に夜神から連絡が入った。

『竜崎。和菓子店に聞いたんだが、あの駐車場にはいつも店員が3台車を停めている。客が停められるのは2台分ほど。それも、大きい車が一台停まればいっぱいになるほどの広さだそうだ』

「…なるほど」

店員が停めた車ならば特定の時間まで動くことはない。

やはり、そこまで調べてここを選んだのか。

『しかしやはりこの辺も防犯カメラは無く、当時どんな車が停まっていたかは定かでない』

「あの時駐車場が一杯なのを確認して和菓子店で買い物した客がいるはず。そこから車の特徴が割れないか探ってください」

『分かった』

通信が切れた。

Lは一度大きなため息をつく。ジェシーが彼に紅茶を差し出した。

「どうぞ、L」

「…ありがとうございます」

「やはりLは凄いです。私、そばで見てて感激してます」

「…##NAME3##がいないことで明らかに集中力も推理力も落ちています…もどかしい」

「そんな…Lは十分凄いですよ」

ジェシーは尊敬の眼差しでLを見つめるが、Lはまるで気にかけていない。

その時、相沢から連絡が入る。

『竜崎、こっちのルートも監視カメラに映っていた。』

Lはばっと顔を上げた。何度も触られシワの入った地図をまた取り出す。

「残る1つは恐らく監視カメラに映らない道。切り裂き男ならそこを通るはず…」

地図を見つめる。

さあ、ここから、どう動く。

それなりに車通りのある道だった。

和菓子店の客から、車の情報が入ればいいが…特徴がわかるだけでだいぶ前進する。

しかし和菓子を買いに来た客など、店員はわざわざ覚えていないだろうし、覚えててもそこから辿るのは時間がかかる。よほどの常連であることを祈るしかない…

そう考え事をしている時、松田から通信が入った。

『竜崎、こっちもありました!防犯カメラ!』

はたと、Lは止まる。

…全てのルートに、防犯カメラがあった??

Lの推理とは違う結果になった。彼は目を見開いて停止している。

ジェシーが隣からフォローに入った。

「さすがの切り裂き男も、そこまで考えていなかったのでは?」

「いえ、切り裂き男なら必ず逃走ルートも細かく練るはず。」

それは今までの4件の事件が示している。

私が上げたルートは正しくなかったのか?

それともやはり切り裂き男ではないのか?

Lの中では9割以上、これは切り裂き男が犯人だと思っていた。

想定外の展開に、Lは天井を見上げる。

『竜崎?』

「…とりあえず当日犯行時刻後の映像を回収してください」

『わ、分かりました』

松田の通信が切れる。Lは上を見たまま額を手で覆った。

切り裂き男らしくない。私が違っているのか?

普段は自分の推理に確たる自信を抱いていたはずなのに、不安と恐れが彼を締め付けた。

いつもと違う自分が、恐ろしい。

彼女を失うかもしれないという恐怖が。自分の思考回路を邪魔する。

きっと自分を信じて待ってくれているはず。きっと無事なはず…



…そう自分を言いかせなければ、狂ってしまいそうだった。

いつも隣にいたのに。手を伸ばせばすぐに届く距離だったのに。

こんなにもあなたが離れてしまうのは初めてのこと。

今、どうしてるんだろう。酷い目にあってないか。

…だめだ、こんな事を考えるより、事件の事を考えねば。

糖分。砂糖が足りない…

「…L」

天井を見ていた視界に、ジェシーが映った。 Lの顔を覗き込んでいる。

「大丈夫、あなたは世界のLです。私が最も尊敬する人。自信を持ってください」

「…##NAME3##に何かあったらと思うと…気が気でないです」

「普段の自信はどこへ行ったのですか。あなたはL。他の誰でもない」

そう言ってジェシーは、額に置かれたLの手を取る。それを握りしめた。

ひんやりと冷えたLの手に、ジェシーの熱い体温が流れる。

熱い眼差しがLに注がれる。

「私はあなたの味方です。どんな時も。」

Lの黒い瞳にジェシーが映る。

その顔がゆっくりと、Lの元へ降ってくる。



『ピー』

甲高い音が響いた。はっとジェシーとLは顔を上げる。

Lは素早くパソコンを操作する。松田からの通信だった。

『竜崎!』

「どうしました」

『ここの防犯カメラ、設置したばかりです!たまたま店主が昨日から設置したそうなんです!昨日ですよ、昨日!』

ガタリと、Lの体が前のめりになる。

「よくやってくれました!」

『データ持ってすぐ戻ります!』

ツキが回って来たかもしれない。

Lは湧き上がる喜びを抑えながら紅茶を口にした。

たまたま昨日からの設置。切り裂き男は知らずにここをルートに選んだのだろう。監視カメラがないと思っていたのだ。

となれば…ここを通る車両を調べ上げれば、

容疑者が絞れる。

Lは今まで解決したどんな時間よりも、心が高ぶるのが自分で分かった。

時計を見る。時刻は午前10時を指していた。









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