Lの憂鬱4
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ある日を境に、夜彼女が私の元へ訪れることはなくなった。
それは初めは想定内だった。
松田に、私との関係を誤解されたくないのだろう。
…しかし、彼女は日に日に元気をなくし、それを無理やり隠していた。
空回っている彼女を見て、ほかに原因があるのだろうと考える。
思い当たるのは一つ。誰にも言えないほどの辛い予知を見た。
それでこの捜査本部への参加に憂鬱になっているのだろう。
もしそうなら、いずれ彼女から何か相談されるはずだろうと思う。
今は、そっとしておくのがいいか…
「最近、光さんはいらっしゃらないのですか」
ワタリが聞く。
「…ああ。何か一人また思い悩んでるようだが…とりあえず様子見をしている。昼間も無理矢理笑ってるのが分かる」
「一人で抱え込む方ですからね」
「初めは松田に私との関係性を疑われたくないのかと思っていたが。それだけではなさそうだ」
私が言うと、ワタリは不思議そうにこちらを見た。
「なぜ松田さんの名前が出てくるのです?」
「どうやら思いを寄せてるようだ」
「…おやおや、悩みの原因はこれでしょうか」
「何か言ったか?」
「いえ、こちらの事です」
ワタリは優しく微笑む。
「それにしても、光さんの事はよく観察なさってるんですね」
「…別に観察しなくても分かる。」
「私は気づきませんでしたよ、彼女が元気がないなんて。」
私より遥かに人の変化に気づきやすいワタリの言葉が意外で、私は顔を上げた。
「光さんに直接聞かれてはどうですか。彼女の部屋に行ってみては。きっと、答えは単純なものですよ」
机の上に置かれた、彼女が昼間作ったお菓子を見た。
…確かにそろそろ潮時か。
私は立ち上がる。
もし捜査から抜けたいと言われても、私は止めるつもりはなかった。ただその後の彼女が気になるが。
もう…死のうとしないでくれればよいが…
「L」
「なんだワタリ」
「私はLのそんな顔が見れる日がくるとは、思っておりませんでした。」
「…?」
どんな顔だ?
「行ってらっしゃいませ」
聞き返そうと思ったが、面倒になりやめた。
「あなたが好きです」
答えは単純などではなかった。
これほど私の推理を上回る答えを聞いたのは生まれて初めてだった。
あまりの衝撃に体はバランス力を失い、床に倒れ込むほど。
彼女は声を上げて笑った。
私はそんな彼女を茫然と見つめていた。
人に好かれるような己でないことは承知していた。
人を愛すると言うことも、よく分からなかった。
しかし目の前で笑う人を見て、今まで感じたことのない気持ちが込み上げた。
なぜ彼女には死んで欲しくないと、笑ってて欲しいと思ったのか。
なぜいつも苦手な会話が心地よく、少しでも長く隣にいて欲しいと思ったのか。
なぜ他の男と仲良く話すだけで自分の機嫌が悪くなるのか。
答えは明白。
しかし、私はこのままこの気持ちに正直になってもよいのか。
いつ命を落とすか分からない状況、その上死ぬ予知まで見られてる。
深入りしない方が彼女のためなのかもしれない。
ふと、私を覗き込みながら困ったように微笑む彼女の顔を見つめた。
それを見た途端、頭の中が停止した。生まれて初めて考えると言う事を拒否した。
世界の切り札が、聞いて呆れる。
全ての考えを取り残して、私に残った強い答えはただ一つ。
この人を抱きしめたい。
抱きしめてしまえばもう止められなかった。
これほど温かく、華奢な、柔らかな肩をこの手に閉じ込めてしまえば、私は引き返せない。
私の全てをかけて守りたい。これが、人を好きになるという感情なのか。
長く抱いていた疑問はようやく解けた。
私の憂鬱な時間は終止符を打つ。
だがしかし、これとはまた別の憂鬱が始まる。
愛しすぎて歯止めが効かなくなる、自分との戦いで。
