Lの憂鬱3
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彼女の朝は早い。
早くから色々な料理をしこみ、出来立てを私に提供してくれる。
私に朝も夜もないも等しいが、彼女がこの部屋に来るとああ朝か、と自覚できた。
甘い匂いが部屋に立ち込めると気分が良くなる。
その部屋に最近、新参者が現れた。
「ゆづきちゃんおはよ〜!」
「松田さんおはようございます。早いですね」
ニコニコと早朝から気合十分で入ってくる松田は、どこからどう見ても彼女に恋をしていた。
分かりやすいにもほどがある振る舞いだが、当の本人であるゆづきは気付いていないようだった。
仕事仲間同士の恋愛は禁止、などとプライベートを禁止するつもりはなかった。それで仕事に支障がでるならともかく。
その辺は寛大になってるつもりだが、どうもここ最近自分の機嫌が悪い。イライラすることが増えた。
その日、いつものように松田が朝早くやってきては、背後でなにやら話している。私は床に座り込んで考え事をしていた。
「竜崎と、付き合ってるの?」
声をひそめたつもりの松田が、そんな事を彼女に尋ねた。
私の耳にはしっかり届いている。
なぜか、考えていた捜査内容が吹っ飛ぶ。
「え、ええっ、ま、まさかまさか!とんでもないですよ!!ありえない!」
慌てた彼女の声が響き渡った。
自分の不機嫌がメーター全開になるのを自覚した。
彼女はなんら間違った事を言ってはないが、そんなに強く否定する必要はないじゃないか。
それともそう見られることがそんなに不都合でも??
…いや。不都合か。
難しい事件と甘い食べ物以外何も興味ない私は人間性が歪んでいる。
女性に好まれる身だしなみもしてはいないし、優しい言葉をかける事もない。
一方彼女は私と正反対に、人当たりよく優しい、綺麗な人だ。
私と恋人に見られると、迷惑なのは当然か。
…それとももしかしたら、
彼女も松田に思いを寄せていたか。
それなら納得した。松田は仕事はなかなか出来ない馬鹿だが、人当たりだけは認めている。彼女が惹かれても不思議はない。
なるほどたどり着けば納得のいく答えだ。
しかし…
(…なぜ私はこんなにイライラしている)
誰と誰が恋をしてようが関係ない。私は恋など無縁の生き物だし正直くだらないとさえ思っている。
人が人を愛すという現象、頭ではわかってるつもりだが理解は出来ていない。
そう、私に恋愛は無縁。愛した事もなければ愛されたこともない。
人の愛し方を、どこかで置いてきた。
「えっと、竜崎…どうぞ」
気がつくと、ゆづきが作りたてであろうぜんざいを置いた。
「…ありがとうございます」
私は湯気の出てるそれを、共に置いてあったフォークですくって口に運んだ。
彼女の作るものは基本何でも美味しい。…はずだが
「……ゆづき」
「はい?」
「新メニューですかこれは」
「へ?」
「たいへん、しょっぱいです」
私が言うと、彼女は目を見開く。
慌てて私からフォークをぶんどると、そのまま一口食べた。
「うわーー!砂糖と塩間違えました!!ベタな間違いを…!すみません!!」
「別に構いませんが…それより」
それは、私が使ったフォークですがいいのですか。
そう続けようとして言葉を飲んだ。
しかし、彼女は私の視線に気がついたようだった。
「あっ…す、すすすみません!」
顔を赤くしてフォークを置いた。
「すぐ、作り直しますね!」
そう言って出されたばかりの私の朝食はまた下がってしまった。
「あはは、珍しいねゆづきちゃん!」
一部始終を見ていた松田が笑って話しかける。
「やってしまいました〜…」
「大丈夫、そんなこともあるって!僕なんていつもやってしまってばかりだよ!」
「ふふ、松田さんの前向きさは見習わなきゃですね」
微笑む彼女に、笑う松田。
その光景を見てると、なぜか息苦しい。
そして彼女が持っているフォークを見ると、なぜかむず痒い気持ちになる。
なぜだ??
