昔の夢
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
『ほら、今から走るこの馬たちさ〜順番わかんない?お菓子あげるから』
酒の匂いのする男の人が言った。
片手には缶ビール。
母の買い物を近くの公園で待っていた私は、唐突に声をかけられた。
ブランコに乗りながら顔を上げる。知らない男だった。
『…分かんない』
『ほらよく見て、な?お菓子あげるぞ?』
『何してるんですか!』
突然声が上がる。買い物袋を持った母だった。慌てて私の元へ近づいてくる。
『やめてください!』
『ケチケチすんなよ!お前も娘で稼いでるだろ?』
『私は娘でそんなことはしません!警察呼びますよ!』
怒りに襲われた男が、持ってた缶ビールの中身を母に掛けた。母の洋服にアルコールの匂いが飛び散る。
男は何かを叫びながら去っていく。母は強くそれを睨みつけながら臆する事なく凛と立っていた。
男が見えなくなり、私は恐る恐る声をかける。
『…お母さん…大丈夫…?』
私を振り返る。微笑みながら、言った。
『怖がらせてごめんね。あなたは何も悪くないのよ』
母は私に手伸ばした。
いつものように私の頭を撫でようとした腕。じっとそれを見つめていると、突然それは
細く、痩せ細ってー
「!」
目を開けた。
周りは暗い。
まだ真夜中のようだった。
「…夢、か…」
心臓がドキドキしている。
悪夢。最悪の、目覚めだ。
ため息をついたまま起き上がろうとした時、ふと隣に気がついた。
「L…」
暗闇でうっすら見えるいつもの白い服にジーンズ。寝るときなのに変わらない服装。
私の隣で、胎児のように丸くなって寝ている。
時々マスターキーで私のベッドに入り込んでることがあった。今夜も私が知らぬ間に入り込んだらしい。気持ちよさそうに寝息を立てている。
普段ならまたか、と呆れるところ。
でも今日は、その姿を見てほっと安心感に襲われた。
私は無言でLの腰に抱きつく。
「…どうしました」
声が聞こえた。Lを起こしてしまったらしい。
「すみません、怖い夢みちゃって」
「そうですか」
どんな夢とは聞いてこなかった。説明するのすらおっくうだから、ありがたい。
Lはそっと私を優しく抱きしめた。
「もう大丈夫ですよ。あなたを脅かすものはありません。まだ夜中です、寝てください」
「はい…安心しました」
「次はきっと幸せな夢を見ますよ」
「どんな夢ですか」
「そうですね…巨大なショートケーキに飛び込む夢です」
「ふふ、それLにとっては確かに幸せそう」
黒い静寂の中に、二人の声が響く。
体に伝わるぬくもりが、心地よい。
「ではあなたの幸せな夢とはなんですか」
「そうですね…」
Lをぎゅっと抱きしめ、その匂いに顔を押し付けた。どこか甘い、Lの匂い。
「…夢の中でも、こうしてあなたと寝てたいです」
「…いいですね。幸せです」
Lがそっと私の頭を撫でた。
言わなくても、私がどんな夢を見て見てたかは分かってるだろう。
あなたは世界一の名探偵。
「おやすみなさい…悪夢はもう終わりですよ」
Lの低い声が心地いい。
あなたがとなりにいることが、私にとって何よりの幸せ。
いつまでもこうして、
寝ていたい。
