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ワタリさんに様々な食料やキッチン用品を買ってきてもらい、私はお菓子を作ってはLに出す1日となった。
時々Lに紅茶を入れたり、部屋の掃除をしたり…。
Lは日本の捜査本部と通信して、キラの殺人の時間の分布図を確認したりしていた。
私とLの間には、会話はなく…正直、気まずいのは否めない。
焼くためにオーブンに入れた後、少し時間ができる。私はそういう時Lの邪魔にならないよう、一番遠いイスに座って時間を潰した。
そんな私を、Lはちらりとも見ない。
あるのは、紅茶どうぞ、ありがとうございます、この会話ばかり。
愛想がない…。いや、愛想が必要ないのだけれど。
ただ一つ意外だったのは、作った物は必ず美味しいです、と感想をくれた。
改善点もあればいってくれた。(私はもっと甘めでお願いします、だったが)
どうやら私の出すお菓子を気に入ってくれてるのがわかって、とても嬉しい気持ちになれた。
誰かのために料理をするのは久々だったから。
しかし…思った以上にLは食べるので…(ワタリさんが用意してくれたお菓子もあるのに)
私はお菓子のレシピを増やす必要があった。
そんな中、唯一見えた予知は、またLがFBI長官と通信しているところだった。
残念ながら、会話の中身までは予知に出てこなかった。
ただ…あのLが、なんだか驚いて、取り乱してるような…そんな風に見えたのが気になった。
もちろん、すぐにそれをLに告げる。
Lは何も言わず、親指の爪を噛みながら天井を見上げた。これがLが何か深く考えていることだとさすがに私もわかっていたから、それ以上何も言わなかった。
心の中で、私はなんだか見えたLの様子が気になって仕方がなかった。
夕方18時にもなると、Lは私に休むように告げてきたので驚いた。
まだ大丈夫です、と返しても、あなたは一般人ですと突き放された。
Lのそばは気まずいけど、私はなるべく長くいたかったのに。
同じ部屋にいないとー私は予知ができない。
Lを助けるためには、予知で危険を避けるしかないのに。
それでもLは私を部屋へ行けと促した。
逆えず、私は簡単に自分で作った夕飯を済ませると、自室へ戻ることを余儀なくされ渋々従った。
とりあえずお風呂に入ってリラックスし、ゆっくり髪も乾かし終えたのだが、それでも19時半。
私の部屋はテレビも無ければ携帯ももちろん持っていない。
そう…私はひま、だった。
とりあえずワタリさんが買ってきてくれたお菓子の作り方の本に目を通し、明日は何作ろう、と想像を馳せるくらいしかやることがない。
…Lは、何してるんだろう。
Lが休んでいるところを見たことがない…。
ここにきた初日、Lの前でほんの数時間寝ただけだったけど、目を覚ましたら彼は平然とパソコンを眺めていた。
「…もう少し、向こうの部屋にいさせてくれてもいいのに」
Lなりの気遣いなのだろうけど、まだ働いてる人がすぐそばにいるのを知りつつ休むのはとてもやりにくいのだけれど…
しょうがない。
よし、明日は4時起きだ。朝の支度をして、5時ごろ向こうへ行こう。
明日はちょっと手の込んだお菓子を作ろう。私にできることはそれくらいなんだし。
そう決心して、私はお菓子の本にしっかり目を通して、夜を更かしたのだった。
計画通り、私は4時に起床した。
かなり早くとこに着いたためか、この時間でも十分睡眠時間はとれていた。
私は起き上がり、ゆっくり身支度を整える。
まあ、会うのはLとワタリさんぐらいなのだけれど、一応女だ。簡単にでも化粧ぐらいしておきたい。
ワタリさんが用意してくれた高級化粧品も使わねば勿体なかったので、私はドレッサーに座り顔を作った。
服はまたブランド物ばかりの、ワンピースが多い。
いまだかつて来たことのない値段であろう洋服を見に纏うと、私は早速部屋から出たのであった。
Lはさすがに、まだいないだろう。
もしかしたらまだ寝ているかもしれない。Lがどこの部屋で寝ているかはしらなかったけれど、私はなるべく音を立てずに移動した。
そして、そっと扉を開ける。その途端、
「おはようございます」
そんな声が聞こえてきたもんだから、ぎゃっ、と声が出そうだった。
「え、L…!は、早いですね…!」
Lはまたソファの上で膝を抱えて、何か分厚い紙の塊を見ていた。
昨日と全く、同じ姿勢だった。
「こちらの台詞です。眠れませんでしたか?」
「いえ、9時には眠ってしまったので…」
「そうですか」
またしてもこちらを見ることもなく話している。もう、彼と目が合わないことには慣れた。
「紅茶…入れましょうか?コーヒーにしますか?」
「紅茶をお願いします。」
私はまたキッチンは立ち、お湯を沸かし始める。
…一体いつ休んでるんだろう、Lは…
私はちらりと彼を見、その目の下にくっきりと浮かび上がったクマを心配した。
私も飲もうと、ティーカップを二人分用意する。
ケトルからお湯の沸く音が響いてきた。
(朝食は…あまりお腹空いてないな。)
無理に食べる必要はない。お腹空いたら適当にパンでも摘めばいいし。
沸いたお湯を注ぐと、紅茶のいい香りが周囲に広がった。
私はそれを一つ、Lの元へ運んだ。
「ありがとうございます」
相変わらず、私を見ない。
私はそそくさとキッチンへ戻り、またLから一番遠い椅子に腰掛けて、自分で入れたお茶をすすった。
ひまだし…これを飲み終わったらお菓子を作ろう。私に与えられた唯一の仕事だし。
…今日は、なにか見えるかなぁ。
予兆もなく訪れる予知。ないときは1週間ほどなにも見えない。
(…私の、チカラが…)
どうか、Lを救えますように。
私は願いながら紅茶を飲むと、立ち上がって小麦粉を取り出した。
静かだった部屋が騒がしくなったのは、Lがパソコンを通じて通信している音声が流れてきたからだった。
私は焼いて冷まし終えたチョコレートタルトを取り出している最中のこと。
ガヤガヤと機械から音声が漏れ、いくつかあるモニターには色々な資料が映し出された。
おそらく、警察の捜査本部。
素人でも、それくらいは分かった。
『1時間おきに…』
『これだけの犯罪者が…』
戸惑ったような、相手の声。
Lは親指の爪を噛みながら、モニターを厳しい目で目つめていた。
…なんだか、すごく、険悪な空気だ…
タルトを切り終え、Lに持っていこうとしていたが、それも迷うほど。
Lはマイクで警察に指示を出している。
私はとりあえず動けず、チョコレートタルトを持ったまま立ちすくんでしまっていた。
…なんだか、ようやく…
Lが殺人者を追っているんだって、自覚した気がする。この人ってやはり普通の人ではないんだな。
私とはまるで違う世界に生きてきた人なんだ。
「どうしました」
はっと気づくと、Lはすでにパソコンの電源を切っていた。会議は一旦終わったらしい。
いつものように、Lは無表情で座っていた。
「あ、邪魔かとおもい…空気になってました」
「別にあなたが動くことくらい邪魔ではありません」
私は持っていたタルトをようやく、Lの元へと運び込んだ。
「どうぞ…」
「ありがとうございます」
Lは指先で器用にフォークを持つと、タルトをパクパクと食べる。
「あのL、キラがなにか…?」
「とても美味しいです、私好みの味です」
Lは私の言葉を聞いてるのか聞いてないのか、ケーキの感想を述べてくる。
…キラ共犯容疑者には、さすがに教えられないかな…
私は素直に引き下がろうとしたのだが、意外にもLはこたえてくれた。
「昨日まで、今までの殺人時刻の分布図から、キラは学生ではないかという線が捜査本部で出てました。が、1日で崩されました。今日、キラは刑務所内にいる犯罪者を1時間おきに殺したのです」
「…え、それって…??」
「私に対する挑発でしょうね。それに…被害者の中には、世間に情報が流れていない者もいた。」
「…」
「十中八九、キラは警察の情報をリークしている」
Lが紅茶をごくごくとのむ。
「そして…もしかするとキラは…」
「「死の時刻が操れる」」
私の声と、マッチした。
Lは驚いたように、私を見る。
「…Lに、それを見せしめて…挑発してるんですね…」
「…恐らく。藍川さん、ケーキをもっとお願いします。糖分が足りません」
「あ、はい…」
「紅茶もお願いします」
「…でも、人の死を、時間まで操れるなんて…そんな人間離れしたこと、ありますか?」
ぞぞっと寒気がする。
「直接手を下さず殺せる時点で人間離れしすぎてます。この事件に常識は通用しない。」
Lは平然といってのけた。
もし、Lのいう通りならー
キラは、もう人間には戻れない、悪魔。そう名称するのにふさわしいと思った。