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翌日、捜査室で竜崎は相変わらず座り込んでいた。
変わらないメンバーの中に一人、白い死神。
ふと、松田が言った。
「ゆづきちゃん遅いですねえ?」
竜崎は紅茶に砂糖を放り入れながら言う。
「少し頭痛がすると言っていました、今は寝ています。ワタリに薬を貰ったはずなので、具合がよくなればこちらに来るそうです」
「ええ、心配ですねぇ〜…」
「たまの休みということでそっとしておきましょう」
砂糖まみれの紅茶を一口飲むと、竜崎は言った。
「今後の事について話したい。会議室へうつりましょう。死神がいることでどうも集中しづらい。今日はゆづきがいないため更に私の集中力は40%減です」
「いい加減ゆづきさんの存在に頼りすぎるのなんとかしたらどうだ」
夜神月が呆れていう。
「ほっといてください。では移動します。」
その言葉に、周りのメンバーはしぶしぶといった様子ですぐ隣の会議室へと入って行った。
まるで置物のような白い死神は興味なさそうに、その場から動かずにいた。
ゆっくりと扉を開ける。
普段必ず誰かがいる捜査室は、いまは誰もいない。
…この、死神を除いて。
私はゆっくりとした足取りで、死神に近づく。
彼女は特に警戒心もなく、私を見た。
「こんにちは、レム」
挨拶は、返してくれない。
「少しだけ、二人で話してみたい。暇つぶしに、どうですか」
人間の目とはかけ離れた彼女の目から、色を感じることは出来ない。
じっと見つめる視線を私はしっかり受け止める。
「…いいだろう、構わない」
レムがそう言った時、私はまず一つほっとした。
この役割は、私しか出来なかった。
竜崎が月くんの目を盗んでレムと二人きりになる機会はそうそうない。
私が唯一、動けるのだ。
私はレムを連れて自分の部屋へと移動した。私の部屋は、盗聴器も監視カメラもつけられていなかった。
捜査室からすぐ近くだったことが幸いした。レムと二人きりでエレベーターとか、なんか気まずすぎる。
私は先に部屋に入ると、レムが後から付いてくる。
「話とはなんだ。つまらなければ私はすぐにここを出る」
レムが淡々と言うのを聞いて、私は意を決して振り返る。
落ち着こう。これが、この会話が、全てになる。
「初めに聞いておきたいことがあるの」
「答えれることなら答えよう」
「あなたたち死神が、ノートに名前を書き、自らが灰となってしまうのはどんな時?」
私が発した言葉に、レムの瞳が少し動いた。
しんとした静かさが流れる。
レムは長く答えない。話してもいいかどうか、考えているのかもしれなかった。
「……誰かの…寿命を伸ばすためにノートを使った時だ」
レムが言った。聞いた私は、天井を見上げた。
ーああ。ではこの人は…人じゃないけど
ミサか、もしくは月くんを助けようと…
「なぜ知っている」
「え?」
「私たちが灰と化す事実があることを。なぜ知っている」
私はしっかりレムの目を見た。
「…私はね、未来を見る力がある」
レムの表情は本当に見にくい。読み取れない。
私の言葉に驚いたのかどうかすら、分からない。
「私の未来が見えたと言うのか」
「…そのことを踏まえて…あなたにお願いがあって呼んだ」
私はぐっと息を飲むと、決心して話し出した。
「私は、あなたも、月くんも、ミサも助けたい。
…Lの名前を、書かないで」
死神は少しだけ顎を上げて、私を見下す。
ドキドキと胸が高鳴った。声が震える。
「私は見えた。あなたがLの名前を書いて滅ぶのを。
話を聞いてほしい。ミサも、月くんも、みんな助けたいの」
「話にならない」
私が言い合えるのが先かどうか、彼女は冷たく言い放った。
「私は誰の味方でもない。その中でも、お前たちの言うことを聞く気はさらさらない。」
「聞くだけでもいい、きいて。ミサは…」
「Lはミサや夜神月を長く監禁し、辛い目に合わせた。お前はそのLの仲間だ。そんな奴の言うことなど聞くわけがない」
レムはくるりと踵を返し、私に背を向ける。
「待ってレム、お願い聞くだけでも…!」
「話はそれだけか。時間のムダだったな」
レムは言い残し、その背が動きだす。
……ああ
彼女と話せなければ、もう、私に打つ手はない。
Lを助け出す手立ては、ない…
(…ごめん、エル…)
やっぱり、未来は変えられなかった
「…じゃあ、話は終わり。それより、私のお願いを一個聞いてくれる」
死神は顔だけ、ちらりとこちらを振り返る。
ごめん、エル
ごめん
「Lの名前をノートに書く時…隣に私の名前を書いてくれる?」
私は笑顔で、言った。
死神はゆっくりと私に向き直る。
「藍川 光。見えてるでしょう?それを書いてほしい」
「………」
「細かくて悪いけど、23日後にしてもらえる?Lの死を弔った後、ゆっくり死にたい。死因はなんでもいい」
「……本気か」
初めて、レムはその瞳を揺らした。
「こんな冗談言っても何にもならないでしょう?あなたにもデメリットはないはず。それだけお願い。それで、話は終わり」
散々生きろって言われたのに、ごめんねL。
私はこんな形でしか、今という現状を受け入れられない。
「…お前、もう一つの名を、ゆづきと言ったか」
レムは突然たずねる。
じっと私を見つめている。
捜査室にいる時に、覚えてくれたのだろうか?
「…そう、だけど…」
「………そうか、やはりお前が…」
レムは呟いた。
それはまるで私を以前から知っていたような口ぶりだ。私は首を傾げる。
私が、やはりって…?
「それが、何か…」
「聞くだけだ」
「……え」
「話を聞くだけ、聞いてやる。暇つぶしだ」
そうレムが言った瞬間、まるで色の無い世界が空を見たように、驚きと希望で満ち溢れた。
また少しだけ、希望の糸が繋がられた。
「監視無くなるのはいいけど〜…月やゆづきちゃんと離れるのさみしいー!!」
ミサが叫ぶ。
今日、ミサは監視をとかれ、このビルから出て行くのだ。
「私も寂しいよ、ミサ」
「ゆづきちゃん、これ!」
ミサは私にメモを手渡す。
「ミサの住所に電話番号、アドレス!!絶対連絡してね、家泊まりにきて!」
「ありがとう、絶対連絡する」
私はそのメモを、大切にポケットにしまう。
ミサは私の隣にいる月くんを見た。
「月…本当に会いにきてね」
私はそっとその場を離れ、少し離れたところにいた相沢さんと松田さんに、小声で声を掛けた。
「二人きりにしてあげましょう…」
私たち3人はなるべく物音を立てないよう、捜査室へともどる。
そこには、監視カメラで二人の様子を見る竜崎が座っていた。
相沢さんはそのモニターを切り、
「竜崎、もう二人の監視はしないはずだ」
「……………そうでしたね……………」
竜崎は素直に引き下がり、何も映らなくなったモニターを眺めた。
ちらちと、部屋の奥にいるレムを見た。
相変わらず彼女は、まるで見えない表情のままそこに立っていた。