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夢小説設定
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真っ白なスクリーンを前に、私達はとりあえず落ち着くためにお茶を飲んでいた。
今、何が起こっているのか。
みんな無事なのか。
心配な気持ちで押しつぶされそうになりながら、私は一人じゃなくてよかった、と感じた。
そしてしばらく経った後、竜崎から電話がかかって来た。
私は慌ててそれを取る。
『ゆづき』
「竜崎、よかった…!無事なんですね」
聞き慣れたあの人の声が、とても安心する。
『全て、終わりました。みんな無事です。今から帰ります。…事の真相は、帰って詳しく説明しますので』
どうも、声に覇気がないように、感じるのは気のせいだろうか?
「…分かりました、待ってます」
そう言って私は電話を切る。
「竜崎さんだった?」
「うん、みんな無事みたいだよ、よかったね」
「よかったあ〜!これで安心だね!」
ミサがギュッと抱きついてくる。
それに答えながら、さっきの竜崎の声色が気になっていた。
いくぶんか経ち、ミサと3杯目の紅茶を飲もうとした時、竜崎たちは帰ってきた。
捜査員みな怪我もなさそうで私はほっとして立ち上がる。
しかし、どうもみんな、顔が晴れない…?
「みなさんおかえりなさい!」
私が言うと、竜崎は少し微笑み、ただいま、と言った。
と、そこで私は、背後にいる人に気付いた。
「…え、……相沢さん!!?」
私は驚いて声を上げる。そう、そこにいたのは、あの日この捜査本部を抜けて警察へ戻った相沢さんだったのだ。
相沢さんは恥ずかしそうに頭を掻く。
竜崎がミサの手錠を外しながら話した。
「火口が逃走しそうな時、スモークを貼ったキラ対策したパトカーが止めてくれました。それが、相沢さんです」
そうか、彼は…警察にいつつも、キラのことを忘れなかった。いざというとき協力して、こうして戻ってきてくれた…!
私はぐっと涙がこみ上げる。なんだかんだ、寂しかったんだ。
「おかえりなさい、相沢さん…!」
「ゆ、ゆづきさん…!」
「あ〜ゆづきちゃん泣かせた!相沢さんあとで竜崎に殺されますね!」
松田さんがおどけて言うので、私はつられて笑う。
「あーやっと自由になった。ゆづきちゃん、これからミサの部屋来ないー?」
解放されたミサが言ってくれたが、私は事の真相が気になるため断る。
「ごめんね、また明日行くから」
「ま、しょうがないよね。じゃあ、また明日ね!月ー、愛してるよー!」
ミサはそういう時ひらひら手を振って、捜査室から出て行く。
私は月くんを見上げた。
「月くんも、無事でよかった…」
「うん、ありがとう、ゆづきさん」
そっと微笑む。
…
なんだろう。なんか、…違和感が…?
「ゆづき、火口は死にました」
突然、竜崎が言う。私は驚いた。
「えっ、…なぜ?」
「突然死です。死因は調べてますが、十中八九心臓発作でしょう」
「…な、に…?」
そして竜崎は、すっと私にあるものを差し出した。
それはーーーー
黒いノートだった。
「…竜崎、これは…」
「そのかわりこれを手に入れました。触るかどうかはあなたの判断に任せます。
これに触ると、死神が見えます」
淡々と信じられないことを話して行く竜崎。
普通なら、正気?と笑い飛ばすような内容を。
私は周りを見渡すと、捜査員みんな見たことのないくらい真剣な顔で私を見ていた。
…みんな、見えてるのね。
私は一度だけ息を吸うと、そっと指先でそのノートに触れた。
感触。ただの、ノート。
しかし次の瞬間、隣に気配を感じる。見上げれば、巨大な体をした白い怪物が立っていた。
「…〜!!!」
声にならない息を漏らす。
今まで見たことのないその姿は、あまりに恐ろしく、…神々しく感じた。
「よく叫びませんでしたね」
「…予告されてましたから」
私はじっと見つめる。死神も私を見つめている。
「初めまして…」
とりあえず挨拶を交わすも、返事は聞こえなかった。
「…このノートに名前を書かれた人間は死ぬ…」
竜崎が言う。
「え?」
「そのノートには、ノートにまつわるルールが書かれています。英語ですが」
私はそっとノートをめくる。確かに、英語が書かれている。
竜崎はそのままルールを読み上げる。
殺したい者の顔を思い浮かべなければならないことや、死因の指定、詳しい状況など…
私は黙って聞いていたが、竜崎が読み上げた最後のルールを聞いて声を漏らした。
「このノートに名前を書き込んだ人間は、最も新しく名前を書いた日から13日以内に次の名前を書き込み、
人を殺し続けなければ、自分が死ぬ…」
「…え」
13日以内?
私は頭を巡らせる。
月くんの予知のことで、彼はキラであることは間違い無いと思っていた。本人に自覚があるかどうかは置いといて。
でも、ミサと月くんは50日以上も監禁されていたはず。
そうなれば、…二人とも、無罪ってことに…
竜崎をちらりと見た。彼は何も言わず、じっと考え込んでいる。
「13日ルールがある以上、ミサと月くんは無罪だ。監視をやめるべきだろう」
夜神さんが言う。他の捜査員たちも口々に同意した。
でも、今ここで監視を解くのは…!
「あの、私…!」
「とりあえず。あまり意味はないと思いますがこのノートの成分などを調べてみましょう。興味はあります」
竜崎が被せて答えた。
分からない。
何が?
信じられない。
誰を?
「…もう遅いです、ゆづきは休んでください」
「しかし竜崎…!」
「またゆっくり話しましょう」
竜崎は私に発言させまいとし、ここから離したがっている。
何か、考えがあるのだろうか…
私は言いたい気持ちをぐっと押さえ込み、無理に笑顔を作った。
「では、先に休ませてもらいます。みなさん、おやすみなさい。」
そう言い残し、捜査室を後にする。
…不可解な流れだ。
私は自室に戻りながら、いつの日か見たあの予知を思い出していた。
月くんが机でひたすら名前を書いている。
…確かに、表紙が黒いのはチラリとみた。でも、今日見た表紙に書かれていたデスノートという不気味な文字は見ていない。
彼はひたすら名前を書いていた。のちに竜崎が調べたところ、犯罪者と一般人だということが分かってる。
もしあれがデスノートじゃなかったら?ただの黒いノートに、キラの被害者の名前を書いてただけ?
そんな偶然があるだろうか。竜崎も、犯罪者の名前をノートに羅列させる行為は不自然だと言っていた。
…だめだ
「…なんか…いやな予感がする…」
このままでは、ミサと月くんの監視は終わる。
それは本当にいいのだろうか?
二人は本当に無実?じゃあ、あの予知は…
考えを巡らせても、竜崎のように推理など出来るわけがなかった。
翌日。
捜査室に入ると、あの死神(レムという名前らしい)が立っているのに少し叫んでしまった。
昨日は我慢できたのに、油断していた。
彼女はただ何もするでもなく、捜査員たちを眺め、時々竜崎の質問に答える。
しかしその答えも明確でなかったりはぐらかされたり…と言った感じのもの。
あまり有力な情報は掴めなかった。
朝から色んな意見と推理が飛び交う。
見れば、竜崎と月くんはもう手錠で繋がっていなかった。
13日ルールがあるのだから、もうミサや月くんの監視をやめるべきだ。
昨日に引き続きみな口を揃えて言っていた。
私はあえて、今日はなにも言わなかった。
昨日私が予知のことを言おうとしたのを竜崎は止めた。話して欲しくないのだろう。竜崎の作戦の邪魔になってはいけない。
歯痒い気持ちで、私は働いた。
…そしてついに、
月くんとミサの監視を止めることを竜崎は決断した。
明日、ミサはここを出て行く。
月くんはまだ捜査があるため残るようだった。
その決断を聞きながら、私は震える手で竜崎の紅茶を入れた。
心が、なんだか騒がしい。
昨日から、ざわめいて止まらない。
月くんと竜崎の手錠も無くなったので、私は今日の夜、竜崎に会いに行こうと心に決めていた。
きっと彼も待っているだろう。
私はなぜだか、確信していた。
物語は、もう終わりに近づいている