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夢小説設定
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え???
火口はそれを開くと、偽名の松田さんの名前を書き込んだ。
「!!駄目だ、名前をメモしただけで出るぞ!
ここでは殺さないのか?」
月くんの声が聞こえる。
しかし私にはその声が、なんだか遠くに聞こえた。
(…黒いノートに、名前を、書く…)
それは以前、私が見た月くんの予知にあった光景。
私はゆっくりと、なるべく不自然にならないように竜崎を見た。
彼は普段噛んでいる親指の爪を口から離していた。
そして、硬い表情で画面を見ている。
竜崎が忘れるはずがない。私が話した予知を。
…偶然、なの?
『竜崎!押さえますか』
待機してる模木さんの声が響く。
「………
まだ殺し方が判明してません。
もしかしたら車内で何かするのかもしれません。
車に付けたカメラから判明できればそこで押さえます
ウエディと連携して尾行に回ってください」
竜崎は淡々とそう言った。
火口は事務所を出て、再び車に乗り込んだ。
私は大きくなる心臓の音をなんとか押さえながら、平然を装う。
しかし次に聞こえた火口の言葉は、更に私を驚かせた。
『くそっ!!死なない!!!』
悔しそうに叫ぶ火口。
「!?
どういう事だ!?
『死なない』って言ったぞ!」
月くんは戸惑うように叫ぶ。
ノートに名前を書いて、それで、…『死なない?』
「もう殺しの作業をしたのか…事務所を出て車に入る間にしたのか…………名前を書く事が殺しの行動なのか…」
竜崎は相変わらずじっとスクリーンを見ている。
ああ、あなたに聞きたいことがたくさんあるのに。
今は話せない。
スクリーンの火口は決意したように一言言った。
『レム…取引だ』
「取引?なんださっきから言ってる『レム』って…
本当にキラの能力は天からか何かのものなのか?」
「それは考えたくないですね」
「じゃあレムって何だ?」
「死神?…」
月くんと竜崎は話している。
「とにかくまだ様子を見た方がいいですね。まだ
いろいろ出てきそうですし…殺し方もはっきりするかもしれません」
竜崎がそう言い終えた瞬間、火口の顔が卑しく笑った。
ゾッとする顔。私はたえきれなくなって隣にいたミサの腕を掴んだ。
「大丈夫?ゆづきちゃん…」
「うん、ごめんね…ちょっと刺激が強くて…」
「ううん、ミサの肩にいくらでももたれて!」
年下のミサに励まされ、私はなんとか前を向く。
火口は車を発進させる。それを、模木さん、アイバー、ウェディが追う。
だいぶスピードが出てるようだ。
しばらくしたところで、巡回中だったのか白バイに止められた。あれだけスピードを出していれば当然だろう。
火口は意外にも、車を止めた。
そして免許証を出そうと車をしばらく探ると…
火口は突然アクセルを踏み、また猛スピードでそこから逃走した。
白バイもそれを追う。
が、次の瞬間。
『竜崎…!白バイがトラックに衝突…!大破…!」
焦った模木さんの声が響いた。
私はひっと小さく声を漏らす。大破って…死んだ?
火口が、何かしたのか?
そうだ、免許証を漁っていたあのカバンには、あのノートが…!
「…………まずいですね…」
「大破…事故死?…」
竜崎は少し考えると、即決した。
「皆さん、火口をこれ以上動かすのは危険と考え、『殺し方』はまだはっきりと判明できていませんが証拠は持って動いていると判断し、火口確保に移ります!
しかし火口は第二のキラ同様、"顔だけで殺せるキラになった"その考えの元での確保です」
高らかに言う。
ついに。
私達はキラを捕らえる。
竜崎は警察庁長官に電話をし根回しをする。
「Lです。キラをある個人に断定しました。
現在国道1号線日比谷から渋谷方面へ向かっている赤のポルシェ911ナンバー…
申し訳ない事に白バイ警官一人が犠牲になったと思われます。
確保はこちらでしますのでそのポルシェには近付かぬ様、全警察官に通達願います」
ほっと息をついた。
なるべく被害が抑えられるよう、彼も考えている。
いつもやり方を選ばない、と人から批判される彼だけれど、出来ることはちゃんとして人を守るのだ。
「では月くん、私たちも行きますか」
「ああ」
これから屋上にあるヘリを使い、空からキラのいるところへ向かうらしい。
竜崎はポケットから手錠を出すと、ミサにかけた。
「ミサさんはすみませんがここでしばらく動けない様にしていてもらいます」
「ええーっ!何これーっ!ふざけないで…」
「ミサ、言う事聞くんだ」
「!…はい………」
ミサは素直に引き下がった。
更に竜崎は、スクリーンの電源を切る。
「え、なんで切っちゃうの!」
「ショッキングな映像が映るかもしれません。女性二人には厳しいでしょう。帰ったら報告しますので」
「ええ〜…まあ、しょうがないか」
竜崎と月くんはそのまま出口へと向かう。
私は小走りでそこへ近寄ると、声をかけた。
「気をつけてください、竜崎も、月くんも…」
ありきたりな言葉だった。でも、私の頭ではこの言葉しか出てこない。自分の言葉の辞書を、もっと増やしたいと思った。
月くんは優しく微笑み、竜崎は私の頭をぽんと撫でた。
「…必ず戻ります、待っていてください」
いつだったか私が言った言葉。あなたは最後まで、私に希望を信じさせて。
それを覚えているのだろうか、竜崎は強い口調で言った。
「待ってます…ずっと…」
あなたと話したいことがある。月くんのこと。
でも今は、目の前のキラを無事に確保することが一番。恐らく今の月くんにはキラの能力はないのだろうし。
二人はそのまま、エレベーターで屋上へと向かっていった。
…大丈夫。きっと。
私が見た竜崎の予知は、室内で椅子から倒れ込む映像だった。屋外ではなかったんだし…
そこまで考えて、私は苦笑した。
死の予知で、死の恐怖心をとってどうすんだ?