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「というわけで、火口がキラです!」
あぜん、とはこういう時に使うべきなのだと思った。
捜査員はぽかんと口を開けてミサを見ている。
誰より早く反応できたのは、私だった。
「す、すごい…!ミサ、すごい!!!」
私はわっと声を上げてミサを抱きしめた。
「きゃー!ゆづきちゃんに褒められた!ミサ嬉しい!」
「でも、どうやってこんな自白を…?」
「え?それは〜…火口はミサにゾッコンで〜…ミサのこと第二のキラだって思い込んでたから…さ」
なんだかスッキリしない言い方だけど、もうそこはどうでもよかった。
キラが特定できた。
あとは殺し方と逮捕。
逮捕すれば、今までのキラや第二のキラも分かるかもしれない。
竜崎が死ななくて済むかもしれない…!
私はもう一度ミサをぎゅっと強く抱きしめた。
「すごいよミサ。でも、これからは一人で危険なことしちゃダメだよ?」
「うん…ありがとうゆづきちゃん」
「無事でよかった。」
自白録音を聞いて、竜崎と月くんが一致したのは逮捕の前にどのように殺しを行っているか掴んでおく必要があるということ。
しかしこれから犯罪者裁きがストップしてしまう。
竜崎は親指を噛みながら、
「少し考えさせてください…」
と言った。
夜、捜査室を訪ねていいかと聞こうとしたが、
月くんと作戦を練るだろう。私は出かけた言葉をぐっと飲み込んだ。
その後話された作戦はとても大胆で、かつ松田さんの協力が必要不可欠な内容だった。
さくらテレビで3時間のキラ特番を組ませる。そして「番組の最後に、キラが誰なのかを発表する」と宣言させる。
そのキラの正体を知ってる者として、松田さんが出演するのだ。
番組中はすりガラス越しに松田さんに証言させ、途中でミスを演出して彼の顔を画面に映させる。
「番組終了までには、キラである”H”の名前を発表する」と言っておけば、
1秒でも早く松田さんを殺そうと必死になった火口が何かを起こすだろう。
死んだはずの松井マネージャーが生きている。会議を盗み聞きしたと火口は思うはず。
松田さんはこの危険な役割を、受け入れた。
火口が第二のキラのように顔だけで人を殺せるなら、今現在松田さんが無事なはずがないからその線はないだろうと月くんは言っていたけど…
不安がゼロにはならなかった。
私は心配で松田さんをチラリと見たけど、松田さんは大丈夫だよ、と言わんばかりに私に笑顔を見せた。
犯罪者裁きが止まって早3日。
ついに私たちは、
キラとの戦いの場を整えた。
「ゆづきちゃん大丈夫?」
ミサが心配そうに覗き込んだ。
私は震える体を必死に自分で押さえ、深呼吸をした。
私が緊張してどうする。
おとりとなる松田さんならともかく…何の役目もないくせに。
私はにこりと笑顔を作った。
「ちょっと緊張しちゃって、でも大丈夫」
時計を見る。
そろそろ、番組が開始される。
しっかり目を開けて見てなきゃいけない。
私は、見ることを選んで竜崎と共に来たんだ。
…お願い、成功して。
「ゆづき、もっと近くに来てください」
いつもの飄々とした竜崎が言う。
私は言われた通り、竜崎の座る背後へと近づく。
「私と月くんが考えた作戦です。必ず成功します」
「信じてますよ、竜崎…でも、緊張しちゃって」
「緊張してるあなたも可愛いです」
「…またそういうことを」
「きゃーっ!竜崎さんちゃんと可愛いとか言うのね!ちょっと見直した!!」
ミサはまるで緊張してないようで、楽しそうに笑ってる。私もつられて、少し笑った。
時間になり、火口はさくらテレビをめにした。
そして松田さんの本名をどうにか調べようと、錯綜していった。
ワタリさんから通信が入る。
『竜崎、火口から模木さんに電話入りました』
「はい、次来ましたね」
ワタリさんの操作によって、模木さんとキラの会話がパソコンに流れる。
『模地、ミサはどこだ!?』
あらかじめ台本にあった通り、模木さんは答えた。
『あっお世話になってます火口様!ミサはただ今久々のオフで出掛けております。明日の朝には帰ると…はい』
『どこに出掛けたと聞いているんだ!』
『それがプライベートなので誰にも知られたくないと…
申し訳ございません。明日には連絡がつくかと』
聞いていたミサが面白そうに言う。
「段々聞き方がストレートになってきてるね、火口のバカ」
「余裕がなくってきている証拠です」
確かに口ぶりはかなり切羽詰まってるのが分かる。
電話が切れたあと、さらに他の者へ電話をかけてなんとか松田さんの名前を探ろうとするも、勿論こちらの想定内。
火口はついに自分で名前を確認しようと、ヨシダプロの事務所へと車を走らせた。
『火口確認。所持品はバッグのみ、追います』
ウェディの通信が入る。
「ここまでは思惑通りだな」
「はい」
火口は車を走らせながらも、放送中のテレビを見ていた。
あらかじめウェディが仕掛けた監視カメラと盗聴器は、車内の火口の様子を映し出す。
スクリーンに、火口の運転する様子が映る。
チラチラと運転しつつ、テレビを見ている。
と、彼は言った。
『レム…どう思う?』
無論、どこからも返事ない。
捜査室にある私達は首を傾げた。
「レム?誰だ?
車には一人で乗り込んでるし、あの車の他の者が居るとは思えない。携帯も使ってない…
無線か何かか?」
月くんが言うのを、竜崎はすぐに否定した。
「いえ、あの車に無線器は付いていません。
こっちの盗聴器、カメラ、発信器だけです。ウエディの仕事なので確かです」
月くんは考え込む。
スクリーンの火口は更に話している。
『ああ、そんなことはわかっている。しかし念のため、その後電話してしまったヨシダプロの者、
海砂やマネージャーは殺しておいた方がいいな』
「…独り言…か?」
そうは呟いたものの、月くんもきっと思ってるはず。これは明らかに独り言とは思えない。誰かと会話している。
「もしあそこで会話しているのなら…
死神。ですかね…」
竜崎の声が響く。
どきっと胸が鳴った。
死神…?
本当に、いるっていうの?
まさか、そんな。
私は手に汗握り、ひたすらスクリーンを食い入るように見つめた。
やがて火口の車はヨシダプロの事務所に到着する。
スクリーンの映像が、ヨシダプロの事務所内の監視カメラへと変わった。
事務所の外では、火口を取り押さえできるよう模木さんが待機している。
火口は履歴書のあるキャビネットにたどり着くと、松田さんの履歴書を見つけ出した。
勿論、偽名なのだが…
私達は自然と前のめりになるほど、画面を見つめる。
いよいよ。
キラの殺し方が、判明する。
人間離れした能力を、目の当たりにする。
「さあ、どうやって殺すんだ? 見せてみろ!」
竜崎が珍しく声を高く上げた時だった。
火口はカバンから、
黒い一冊のノートを取り出した