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「ゆづきっちゃーーーーーん」
ミサの部屋を訪れると、いつかの日のように彼女は力一杯私に抱きついてきた。
私は後ろに倒れそうになるのを必死で踏ん張る。
「ミサ、なかなか来れなくてごめんね」
「もーっ、会いたかったんだよー!?ほら、お茶しよーよ!」
ミサに誘われ、私は彼女の部屋に入る。
この高いビルの一室を、ミサは使っていた。
私も一室借りている。
以前いた高級ホテルよりもさらにバージョンアップした、モデルルームのような部屋だった。
「ゆづきちゃんとちゃんとゆっくりお話ししたかったの!」
ニコニコしながらキッチンで紅茶をいれてくれる。
こういうの、初めてだな。
誰かの家にまで行ってお茶する、なんて…
私もつい微笑んだ。
ミサは入れたお茶を持ち、テーブルに置く。ソファにどんと腰掛けた。
私もとなりに座る。
「ミサね、監禁ほんーと辛かったけど、ゆづきちゃんが励ましてくれたから。ほんと心の支えだったよ、ありがとう!」
可愛い笑顔。
そんな…監禁したのはこっちなのに。
「そんなことないよ…私も、ミサと話せて楽しかったんだよ」
「ほんと!?嬉しい!…ミサ、結構思い込み激しいってゆうか、突っ走っちゃうから…本当に仲良い友達って、なかなか出来なくて」
「…私もだよ。なかなかどころか、全然いないの」
ミサが驚いたようにこっちを見た。
「えー!?ゆづきちゃんが?」
「うん。学生の頃少し親交のあった子も、卒業して会ってないし…」
「じゃあ、ミサが親友1号になれるかな!?」
「うん、そうだね!」
今、私は予知が見えない。
それはとことん私を追い詰めて苦しめてる。
でも、友達を作るという点では、むしろ好都合だ。
私は普通の女の子みたいに、友達を作れる。
「嬉しい!ミサ幸せだな〜!月もいてゆづきちゃんもいて…月は二人きりになれないけどさぁ」
頬を膨らませる。
しかしすぐにぱっと楽しそうに表情を変えた。
コロコロ変わる顔に、子供みたいだな、と微笑ましく思った。
「ねえ!ゆづきちゃんはさ〜、竜崎さんのどこが好きなの!?超聴きたかったんだけど!!」
「うっ」
きっと聞かれるとは思ってた。ミサは恋話が好きだし。
でもこれ録画されてるし…竜崎ならまだしも、他の捜査員の人たちも見るかもしれないのに…
今も見てるかも…
「まあ…分かりにくいけど、竜崎は優しいんだよ」
「そうなのー?だって変な人じゃーん!」
正直だな、ミサ。
「はは、私も初対面では思ったよ、実は」
「でしょう!?」
「でも…友達も親もいない私を支えてくれたのは、竜崎なんだよ」
ミサがこちらを見る。
「親がいないって…」
「あ、話してなかったね。父親は小さい頃目の前で車に轢かれて…母はちょっと前、病気で」
「そうだったんだ…」
「一緒だね。両親がいないのも」
私が言うと、ミサは少しだけ微笑んだ。
「実はねー、…死んじゃおうかなーなんて、思ってたこともあって」
「え?!ゆづきちゃんが!?」
「うん、でも、竜崎に会って思いとどまれたから」
「〜〜っ!」
ミサが私に思い切り抱きついた。
「よかったよぉー、ゆづきちゃんが生きてて!会えてよかった!そう思ったら、竜崎さん凄くいい人に思えてきた!」
「あはは、勘違いされやすいけど、結構優しい人なの」
「うん、まだあんまり好きじゃないけど!今の話聞いたらちょっと見直した!」
ほんと正直だな、ミサ。
私はつい笑ってしまう。
「竜崎さんとデートとかはどこ行くの!?」
「え…」
私は言葉につまる。
竜崎とデートというデートは、したことがないから。
「えっと、ドライブに行ったかな」
「他には!?」
「うーんとね…実は、あんまりデートらしいことしてないから…」
「えええーーーー!!!」
ミサの高い声が響き渡る。
「嘘嘘!そんなの信じられない!」
「ほ、ほら、竜崎はキラ捜査で忙しいし…」
「えーでもさあ…」
不満げなミサ。私は苦笑する。
確かに、普通の人は外にデートへ行くだろう。
買い物をして、食事をして、映画を見る。そんな普通なこと、私は彼とはできない。
「まあ、キラが捕まったら色々連れてってもらおうと思って!」
「…」
ミサが少し俯く。
「…ミサね、キラのこと…」
小声で呟くように言う。
「凄く尊敬してたけど…月も竜崎さんもゆづきちゃんも、キラをおってるんだよね…」
ミサは強盗に殺された犯人を裁いてくれたキラに心酔している。
それは、監禁されているときからわかっている。