1
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
その後、私は一日中竜崎の前にいた。
手足を縛られたりするのかと思っていたけど、そういった拘束はされなかった。
ただひたすら、パソコンをみたり何かの資料を見たらする竜崎を眺めていた。
長期化すると思われた軟禁生活だが、意外にもたった1日で終わりがくることになる。
それは、次の日流された例のテレビ放送で、私の予知通りのことが起こったこと。
あとは竜崎が、FBI長官と電話してる私の予知があったこと。
…しかし、決定的となったのは、
翌日のワタリさんが用意したお菓子の内容を、私が一つ残らず言い当てられた、なんていうどうでもい予知だった。
夜はあまり眠れなかった。
お風呂にも入っていない。死ぬ覚悟があっとはいえ、不潔なのは嫌だった。
それ以上に見た予知を忘れないように神経質になることに、私はとても疲れていた。
「藍川さん。」
「…はい」
「やはり、あなたの力を認めざるを得ませんでした。」
昨日の軟禁宣言よりちょうど丸一日。竜崎は私にそう告げた。
幸運なことに、昨日はよく予知を見ることができた。それが本当に良かったと思う。
竜崎はぐったりしてる私の前で、あの調子で説明を続けた。
「先ほどのキラへの放送はあなたも見ていた通りです。予知通り。私とFBI長官の電話ですが、まだ実際に起こってはいませんが、私が今極秘にFBIへ捜査依頼をしていることは当たっている。そして、これ…」
竜崎は、テーブルに置いてあった、あるチョコレート菓子を摘み上げた。
「ワタリは毎日、違う種類のスイーツを用意してくれます。このチョコは私が初めて目にするもの。ワタリに聞いてみれば、今日、たまたま仕入れの時に目に入ったから買ったものだそうです。ワタリは、あなたの予知を聞いていない…」
そういって、そのチョコレートを口へぽいっと投げ入れた。
「決定的です。あなたには未来を見る力がある。」
「…決定打がお菓子の種類だなんて、なんか締まりが悪いですね…」
私は眠い目を擦って返す。
「いいえ、甘い物は私の原動力です。とても重要です。」
「はあ、ならよかったです…」
あまりの眠さに、私は適当に返事した。
「あなたは帰って頂いてかまいません。ですが、分かってると思いますがくれぐれも私のことを他言しないでください。命を狙われかねないので。」
「大丈夫ですよ…話す相手も、いませんから。」
私はぽつんと、呟いた。
「…昨日はあまり寝ていないでしょう。部屋を貸します、仮眠していってはどうですか?命の恩人を軟禁状態にしてしまったほんのお詫びです。」
「そうですね…」
かなり体力を消耗してしまった。死ぬ、というエネルギーを使う行為の前に、それを回復させておきたいのは事実だった。
予想外の時間を潰してしまったけれど。
これでひと段落つける。世界のLを救えたのなら、別に時間ぐらいくれてやる。
あと、もう少し…
「お言葉に甘えることにします。」
「はい。では、案内します。」
Lはそう言ってソファから降り、私の側へくる。
私も立ち上がろうとした、その瞬間だった。
白い服、青色のズボン
独特すぎるその座り方
座る、その後ろ姿が…
ゆらりと揺れて
床に打ち付けられたーーーーーー
「……え?」
目眩が、しそうだった。
息が止まる。
頭の中が真っ白になる。
(い、ま…見たのは…)
L……の
『死』の、未来ーーー??
「藍川さん、どうしました?」
耳に入る低い声。
私はゆっくりと、その人を見上げた。
私を不思議そうに見つめる彼。
体が震えてくる。
間違いなかった。
この人はーLは。
死ぬ、未来。
「顔色が悪いです。何か体調が?」
Lは私の隣に座り込み、顔を覗きこんでくる。
「〜〜っL!」
私はつい、声を張り上げた。
「キラ事件から、今すぐ手を引いてください!!」
Lはテーブルにあったマドレーヌを手に取り、私の言葉が聞こえてないかのようにもぐもぐと口にした。
「急になんです。」
その緊張感のない様子に、つい苛立った。
「あなたはこのままでは…死んでしまう!!」
ピタリと、Lの手が止まる。
「お願いします!キラ事件から手を引いてください…!」
一体どれくらい先の未来かは分からないけど、この流れではキラ事件によって死んでしまうと考えるのが適切だ。遠隔操作で人を殺せるキラ相手では十分に考えられる事。
私が懇願するのをよそに、Lはまたもぐもぐと口を動かし、キッパリと答えた。
「できません。」
「え…」
「逃げるなんて私の中では死よりありえません。それにお忘れですか、私は今日の放送でキラに戦いを挑んだのです。もう、手遅れです。」
そうだった。生放送で、彼は市民の前でキラに宣戦布告したのだ。
もうキラは、Lが自分を狙っていると知っている。是が非でも、Lを探し出すのに躍起になっているだろう。
ここで逃げ出しても、死の未来からは逃げられないのかもしれない。
心の中で焦りが生じる。
「…では!私もあなたと一緒にキラを捕まえます!」
「なにを言うのですか、突然」
「私の予知は…思うようにみえないしランダムだし…けど、もしかしたらLに有益なことも見えるかもしれない。私も一緒に戦わせてください!」
「だめです。」
キッパリと、Lは言った。
「あなたは警察関係者でもない。そんな人を危険に晒すわけにはいきません。」
歯痒かった。
私はどうしても、Lを助けたかった。
『あなたは…悪くないのよ…』
助けられなかった。大切な人を。
こんな力あるくせに、一番大事な人を助けられなかった。
だから…せめて、死の未来が見えた人を…助けたい。それが、贖罪のように思えたから。
「では…L。」
私は両手で、彼の肩をがっしり掴んだ。
「私と結婚して。」