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夜遅くまで私も映像をともに見ていたが、Lに促されて私は入浴と仮眠を取りに部屋に戻った。
ショッキングな映像を見たせいか、なかなか寝付けるわけもなく…
数時間なんとか眠ることをした私は、起きて身支度も適当にし、すぐに捜査室へ向かった。
弥は、どうしてるだろう。
あれほど追い詰められ、でも頑なにキラの事は口を割らない。
…彼女から自供を聞くのは難しいのではと思ってきた。
でもそうしないと、キラを捕まえられない。
…予知じゃなく、読心術でもあればよかったなぁ…
私はぐちぐち考えながら、捜査室の扉を開けた。
「ストーカーさぁーん!」
ぎょっとする。
なんだ、今の声は?
弥の声…だと思ったけど…
私は Lの元へと向かう。
するとやはり、空耳ではなく弥が叫んでいる言葉だった。
ストーカーさん、とこちらに必死に呼びかけ、拘束を離すように仕向けている。
昨日とまるで別人なんですけど…
ぽかんとしてる私を見つけて、松田さんが挨拶をしてくれた。
「ゆづきさん、おはようございます」
「あ、おはようございます松田さん。…弥、どうしちゃったんですか?」
「一度気を失ったかと思うと、それ以降これなんですよ…」
何がなんだか分からない、というように松田さんが顔をしかめた。
Lを見ると、彼もかなり戸惑ってるように考えている。
「弥海砂。 寝る前はほとんど黙秘し、殺せとまで言っておきながら、今さら悪あがきか?」
Lがマイクを使って話しかける。
「え?…何言ってるの?…海砂を眠らせて連れて来たのストーカーさんでしょ!」
「キミは今、なぜそこに縛られている?」
「なぜって…海砂がアイドルだから?でもここまでしてくれたストーカーさんは、あなたが初めてだよ」
「弥。夜神月を知っているか? なぜ彼に近づいた?」
「自分の彼氏知らないわけないでしょ!」
開いた口が塞がらないとはこのことかな。
唖然と私はLとの掛け合いを見ていた。
Lも普段より大きく天井を見上げる。
「あれだけ黙秘していたのに、今度はあっさり”彼氏”か…」
見上げたところで私に気づいたのか、Lがこちらを振り向いた。
「ゆづき、おはようございます」
「あ、竜崎、おはようございます…」
「早速ですが、簡単なもので構いません、何か甘いものをくれませんか。あなたの作ったものでないと今はだめです」
Lの周りには相変わらず高価スイーツが並んでるが、あまり手が進んでないようだった。
Lが吐いた、弱音のような気がした。
私は承諾し、キッチンへ向かう。
その時、Lの持つ電話が鳴った。
Lが出る。
相手と何か話している。
私は急いで、スイーツ作りに徹していた。
それからわずかな時間が過ぎた頃。
ここへやってきたのは、月くんだった。
私は手を止めて彼を見る。
先ほどの電話は、月くんだったようだ。
「竜崎…電話でも言ったが…
僕がキラかもしれない」
「ばっ…!」
夜神さんが月くんの両肩を掴む。
「何を言ってるんだ!月!」
慌てたようにつめよる夜神さん。
私もその場面から目を逸らさず、ただ呆然と見ていた。
「父さん、竜崎がLなら世界一と言っても過言ではない探偵だ。そのLが僕をキラだときめつけている。
きっと僕がキラなんだ」
「な、何を言ってるんだ月!」
松田さんたちも、呆然とその光景を眺めている。
竜崎は私の作ったぜんざいを食べながら言った。
「はい、確かに…。私の中では九分九厘、月くんがキラです。だから近々事情聴取する事になるかもと…
月くんは鋭い洞察力を持っているがゆえ、私の心理がわかったのでしょう…」
「FBI捜査官のレイ・ペンバーが来日してから死ぬまでの間に調べていた相手…5月22日に青山に行った人物…第二のキラの容疑者である弥海砂が関東に出てきて、最初に口説いた人間…全て僕だ。僕が竜崎の立場でも、僕ををキラだと推測するだろう。
これは僕に自覚がないだけで、僕がキラなのかもしれないってことだ」
自覚がなくキラ…?
無自覚の時に、人を殺しているということ?
二重人格というやつだろうか。
月くんは淡々と推理を述べていく。夜神さんの悲痛な声が、心に響く。
竜崎は月くんの言葉を聞きながらなにやら深く考え込んでいる。
そして、決断した。
「何か私には少し話の展開が気に入りませんが…いいでしょう。
月くんのの手足を縛り、長期間牢に監禁!
その代わり、やるなら今からです! 一度も私の目の届かぬ場所に行くこともなく」
夜神さんが必死に抗議するが、月くんは潔くそれを引き受けた。
「僕がこのままキラではないのかと心のどこかで悩みながらキラを追っていくことはできない。
その代わり竜崎がボクがキラだとわかるか、キラじゃないと納得するまで、僕が何を言おうと、どんな状態になろうと絶対自由にしないでくれ」
強い口調で、月くんが言った。
愕然とし、夜神さんが肩を落とす隣で、月くんが連れられて行った。
そして、月くんがいなくなった後、夜神さんは自分も監禁してほしいと竜崎に訴えた。
それは彼の強い願いだった。
竜崎はそれを承諾し、夜神さんもまた牢に入れられることになったのである。
私は彼を諫めたが、頑なに聞かなかった。
夜神さんはぽんと私の肩に手を置くと、彼もまたどこかへ連れて行かれたのである。
計3人の男女が、監禁されることとなった。
目まぐるしすぎる展開に、私は何も喋れなかった。
月くんを監禁したあとすぐ、キラによる裁きが止んだ。
やはり彼がキラだったのか、と周りが落胆する中で、竜崎は逆に混乱してるようだった。
月くんらしくない、いや、キラらしくない、と。
監禁7日にして、ある変化が訪れた。
月くんが発する言葉が、180度変化した。
「確かに僕は監禁されることを承諾し、こうすることを選んだ…しかし今はっきりと気付いた。
こんなことをしていても無駄だ!なぜなら、僕はキラじゃない!早くここから出してくれ!」
彼は真剣な目で訴えた。
無論、竜崎が月くんを解放するわけもない。
相沢さんも、月くんらしくない…と首を傾げる。
…弥も、月くんも、
監禁されて数日たつと、まるで別人格になるという共通点があった。
私達は頭を悩ませる。
竜崎ですら、混乱してるようにみえる。
そして監禁14日。さらに混乱が生じた。
キラによる裁きが、再びスタートした。
完全に月くんがキラだと断定していた私たちは仰天する。
竜崎は、それを月くんには伝えなかった。
「月君。もう2週間以上、新たな犯罪者が裁かれていません。
いいかげんキラであることを自白してもらえませんか?」
「バカ言うな、竜崎。お前は間違ってる。今までの状況からボクをキラだと推理するのはわかるが、これは罠だ!
僕はキラじゃない! ズームにでも何でもして、ボクの目を見てくれ! これが嘘をついている人間の目か!?」
真に迫る月くん。
竜崎は次に、弥にも話しかける。
「弥。本当にキラが誰なのか知らないんだな?」
「またそれ? 海砂が知りたいよ…キラは、海砂の親を殺した強盗を裁いてくれた正義の味方だもん」
あれほど黙秘していた弥はそうキッパリといった。
竜崎が珍しく、眉間にシワを寄せて呟く。
「…何がなんだかわからない…」
竜崎がここまで混乱し、参っているのを、私は初めて見た。
模木さんや相沢さんも、頭を抱え、心配そうに竜崎を見る。
「…あの、甘いもの、作りましょうか竜崎…」
私は慌ててキッチンへ向かおうとする。彼に甘いものを提供するしか、私はできることがないのだ。
しかし、竜崎は私の手を握りそれを止める。
「ゆづき、頼みがあります」
「はい、なんでも!」
私が返事を言い終わると同時に、竜崎は強い力で私を引き寄せ、自分の隣に座らせた。
そして、両手でぎゅっと抱きしめる。
「!!?竜崎…!」
「この状況も理解できませんしあなたと長く二人の時間もゆっくり取れていない。私は限界です、せめて触らせてください」
せめてって!周りには模木さんや相沢さんもいるのに!
そっと二人を見ると、なんとも気まずそうに他所を向いていた。すみません二人とも。
「しかし竜崎…」
「充電です。しばらくそのままでいてください。」
私を強い力で抱きしめたまま彼は言い切った。
どうも今までの竜崎より、だいぶ凹んでるような気がして、私は強く振り払えなかった。
相沢さんと模木さんも、特に何も言わずモニターを見ている。
確かに、あまりに不可解なことが起きている。
弥も月くんも、それぞれ第二のキラとキラで確定だとみんなが思った。
現に月くんは、監禁されてからすぐにキラの裁きがおさまったのだし…
そこまでは順調かと思いきや、またキラによる裁きが再開されてしまった。
それに、弥も月くんも、別人格のように振る舞うようになった。
…何が二人に起きたのか。
竜崎は顔だけモニターを見ながら、私を抱きしめて言った。
「あなたはどう思いますか、この状況」
「私に聞きますか。竜崎ですら何がなんだか分からないのに…」
「推理でなくて構いません。感で。」
以前もこんなやりとりしたきがする。
「…もう、とんでもない妄想しか浮かびませんよ。死神が二人に乗り移ってキラとなり、今は他の人間に乗り移ったとしか。ホラー映画好きなのでそういう展開しか考えられません」
「そうですねあなたの意外な趣味はそれでした」
竜崎は手を緩めることなく続ける。
「しかしいつもあなたは面白いこと言いますね。確かにそれだと辻褄が合います」
「ですが、一般的に悪魔は乗り移っても死神が乗り移るのは聞いたことありません」
「それに…もしそうなれば、必要なのは私ではなく霊媒師ですね」
霊媒師でも、死神は払えるのか…?
竜崎は私の髪の毛をいじりっている。
「…竜崎、一つお願いがあります」
「なんですか」
「弥のお世話の手伝いを、させてください」
竜崎は私から体を離し、呆れたように見た。
「またあなたはとんでもないことを言い出しますね」
「弥と話してみたいんです。」
「許可すると思いますか」
「許可させようと思ってます」
竜崎はテーブルの上の紅茶をとって一口飲んだ。
私は続ける。
「相手は若い女性です。話し相手に歳の近い同性がいれば、心を開きやすいと思います。特に今弥はかなりギリギリの状態ですし…話してるうちに何か口を滑らすかもしれません」
「だめです。あなたを危険な目に合わせられません」
「今の状態で、世話をしてるワタリさんが無事であることが、安全を示しています。もちろんあなたとワタリさんの指示に従って動きます。少し手伝いをしたいだけなんです」
私は竜崎の目をしっかり見て言う。
隣で聞いていた相沢さんが、こちらむいた。
「竜崎、弥は極限状態が続いてる。安心感を与える事で心を開きやすいのは一理ある。ゆづきさんはプロではないが、物腰は柔らかいし気もきく。きっとむいてると思う」
竜崎はじっと考え込む。
「お願いします竜崎…」
正直、私は仕事が欲しいと言う思いもあった。
相変わらず予知は見えず、ただ料理をするくらいしか出来てない。
私にしか出来ない仕事を…何か役に立てることを。あしたいんだ。
「必ず私やワタリの指示に従ってもらいます。無理はさせません。弥と二人きりになるのも許しません。それでいいですか」
「はい…!ありがとうございます!」
竜崎は言うと、再び私をぎゅっと抱きしめた。
「いいですか。くれぐれも気をつけてください、相手は第二のキラです」
「ええ、少し話してみるだけです。無理はしません」
「…あなたは本当に頑固ですからね…私が反対しても聞かない」
「さすがですね。私のことをよく分かってます」
私は画面の弥を見た。
…正直、今更弥の自供を引き出せるとは思っていない。
でも、彼女と話してみたい。
画面越しより、直接会う方が感じ方も変わるはず。
私は背筋を伸ばして、気を引き締めた。