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私は待っていた。
Lは弥を捕らえる為に、捜査員と共に出て行った。
何かあればすぐ連絡します、とLは携帯電話を一つ渡しに残した。
今、何が起こっているのかは分からない。
私は震える手を必死に押さえながら、携帯電話を前に座っていた。
震えるな、私の手。
落ち着け、私の心。
あなたの言葉は何でも信じる、と言ったのは昨日の私。
だからLを信じなければ。
成功させて帰ってくると言ってくれた。
あの人を、信じなければ。
私はただひたすら、Lからの連絡を待っていた。
それから数時間たったところ。
電話か鳴り響いた。
「!!?」
私は急いで電話に出る。
相手はLではなく、ワタリさんだった。
『ゆづきさん、私です』
「ワタリさん…!」
『たった今、無事弥を確保しました。Lは無事です』
聞いた瞬間、体が浮き上がるかのような錯覚に陥った。
押さえていた涙が、安心からか溢れてくる。
『すぐあなたの元は戻りますよ、お待ち下さい』
「ワタリさん…!よかった、よかったです…!」
私は涙を流しながら、ワタリさんに見えないだろうに頭を下げた。
ありがとう、と伝えるように。
すぐに電話を切る。
その電話を胸に抱きしめた。
よかった…L!
あなたが生きている。
愛するあなた。
すぐに会いたい。
それから少しして、ホテルの出入り口が開く音が聞こえた。
私ははっとしてお菓子を作っていた手を止める。
キッチンから出た所で、部屋の扉が開いた。
Lの姿が見えたところで、私は彼に思い切り抱きついた。
Lの体が勢いで揺れた。
「L…!無事だった…!よかったL…!」
彼は少し驚いたようだったが、すぐに私を抱きしめた。
「あなたと約束しましたから。」
「そうですね…!守らなかったら許しませんでした!」
「それより人目も憚らずこんなに積極的に私に抱きついてくれることがなによりも嬉しいです」
ん、人目…?
私が顔を上げたところで、Lの背後にいた模木さんが気まずそうに咳払いをした。
私はぎょっとして慌ててLから離れる。
「す、すみません!!つ、つい!」
「私は全然構いません、なんなら昨日のように熱いキ…」
「Lも模木さんも!!ホットケーキ焼いてるんですどうですか!!」
彼の言葉に被せるように私は大きな声で話し、慌てて部屋の中へ入った。
私が離れたことにLはやや不服そうだが、ゆっくり部屋に入ってくる。
座るとすぐにパソコンに何かを話しかけている。
後からまた、相沢さんや夜神さんもすぐに入ってきた。
「ゆづき、あなたもこちらへ。」
私は呼ばれたため、一旦キッチンから離れた。
相沢さんが竜崎に向かって言った。
「竜崎、やはり次々証拠が出てきましたよ。」
「そうですか」
Lはパソコンで何かを話す。どうやら、ワタリさんらしかった。
「今の弥の様子をおみせします。拘束していますが一言も言葉は発していない…拘束されていること自体に文句すら言っていません」
Lはがちょうど言い終えた時、パソコンに弥の姿が映し出された。
目隠しをされ、全身拘束されている。
私はつい、うっと息を飲んだ。
隣にいた夜神さんも驚く。
「竜崎。これは…」
「第二のキラとして捕まえたんです。これくらい当たり前です。誤認逮捕でしたら問題ありますが、確信があります」
竜崎に続き、相沢さんが言う。
「確かに…指紋は違う人間の物でビデオ機器等は処分した後だった様だが…弥の部屋には日記と同じルーズリーフ。『速達』の判子…。これはクセが同じだし
インクもあり成分も同じ。
大阪から送られてきたガムテープに付いていた花粉も、弥が4月まで暮らしていたアパートの周りに咲いていた、関東ではめったにない物………………」
補うように松田さんが話す。
「それに長野からの速達が届いた前日の東京長野間の切符…。
あの日なら両駅の監視カメラのテープはまだ残ってるはず。きっと映ってますよ!こんなのキラは絶対残してくれなかった」
次々と明かされる証拠の品。確かに、言い逃れできないほどだと私でも思う。
ただどうしても、同じ女性として…この光景はいささか気分が悪い。
しかし相手は、人を時間や行動まで操りながら殺せる。殺し方も分かっていない今では、これくらいしないとこちらが危うい。
「あとは…どう殺したのか?キラを知っているのか?
知っているのなら誰なのか?自供させるしかありません」
竜崎は呟くと、パソコンのマイクを使ってワタリさんに話しかけた。
「ワタリ。十分注意しながら多少理不尽なやり方でも構いません。吐かせてください」
[ハイ]
ワタリさんの声が聞こえる。
どきっとする。理不尽なやり方、なんて…
しかし、私は自分を奮い立たせた。竜崎の命もかかってることだ。…目を瞑るしかない。
「それと…夜神さん…」
Lはこちらをみず、夜神さんに話しかける。
「今月くんには本部の出入りを禁止していますが
今度は…、キラとしての重要参考人で呼ぶ事になると思います。
覚悟しておいてください」
はっと息がとまる。
夜神さんが、呆然として立ち尽くしている。
私は、そちらを見れなかった。
Lが生きて帰ってきた喜びも、すぐに消えてしまう。
…夜神さん…!
月くんと弥が接触していると、Lは言っていた。
確かにタイミング的にも…あまりに、月くんが怪しくなってしまった…
私はその空気にも弥を見ているのにも耐えきれず、すぐにキッチンへと移った。
ーなんて、残酷な。
もし、あの月くんが本当にキラだったら、
息子をキラとして逮捕せねばならない夜神さんが、あまりに可哀想すぎた。
あんなに素敵な人なのに。
私は二つの自分の心で揺れていた。
月くんがキラでなければいい。
でも、ここで月くんがキラと判明できたら、Lは死ななくて済むに違いない。
辛すぎる現実に、私は唇を噛み締めた。
弥は、それから何も言葉を発さず拘束されていた。
しかし3日後、突然、言葉を発したとワタリさんから通信が来た。
私たちは驚いて、その送られた映像を覗き込んだ。
「もう、我慢できない…」
呟く、小柄な少女。
疲れているのが声色でもわかる。
「殺して」
みんながおしだまる。
「早く 殺して…!」
私は口を手で押さえる。
松田さんが隣で呟く。
「もう三日も水も飲んでないって言ってましたよね…二十歳そこそこの女の子には厳しすぎる…。もう極限状態なんだ…」
3日間、この体制で、水も飲まず。
でも黙秘してると言うことは、きっと彼女は、第二のキラであることにほぼ間違いない。
では、ここまでして黙秘できる力はどこからやってくるのだろう?
それほどキラを崇拝している?
こんな若い女の子が…
…それとも
崇拝に足して、キラに、惚れ込んでいる…?
「弥海砂。 それは自分が第二のキラであると認めるということか?」
Lは表情を変えずに、マイク越しで話しかける。
「違う…第二のキラなんて知らない…こんなの、我慢できない…死んだほうがいい…
さあ、早く殺して!あなたなら私をすぐ殺せるでしょ!」
甲高い声が響き渡り、かすかにエコーを作る。
目をそらしてしまいたかった。
でも、私は必死にそれを我慢した。
この事件の結末を Lの隣で見届ける。それは、私自身が決めたことだったから。
…私は目をそらしちゃいけない。
何度も殺して、と懇願する弥が、舌を噛み切らないようワタリさんが猿ぐつわを噛ませた。
なお、痛々しい姿になってしまった。
「まさかもうキラに操られての”死の前の行動”じゃないでしょうね…」
Lが親指をかみながら言った。