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特に怪しい人物も見つけられないまま、松田さんと月くんが帰ってきた。
警視庁に行っていた相沢さんたちも、一旦集まっている。
収穫がなかったことにヤキモキするこの場で、自分の話をするのはとても気が引けた。
だが、後回しにしてもしょうがない。タイミングなんてきっといつまでもない。
私は意を決して、声をあげた。
「あの…みなさんに、お話しなければならないことがあります」
みんなの視線が私に集まる。
急に話しにくくなって、私は目を伏せた。
でも、いわなくては。
私は大きく息を吸うと、声を何とか張った。
「実は…予知が、見れなくなりました」
「え!」
みなさんの声がかぶる。
「一時的なものかもしれないし、予知能力が無くなったのかもしれません。それはわからないけど…今まで、1カ月以上も予知が見えないのは初めてのことなんです。」
茫然と、私を見ている。
「私の能力は、子供の頃目の前で父が車に轢かれたのを目撃して発症しました。今回は、宇生田さんの死を目撃したことで、逆の事が起きたんじゃないかと竜崎は推理しましたが…真意は分かりません。
これで私はただの一般人になってしまったけど…でもみなさんと戦いたい、一緒に捜査したいんです!
これまで以上に頑張ります、なのでよろしくお願いします!」
深くお辞儀した。
しん…とした静かさが痛い。
しかし次の瞬間耳に入ってきたのは、予想外のセリフだった。
「なんだ〜そっか、安心したよ、よかったねゆづきちゃん!」
その場に不釣り合いな、明るい松田さんの声。
私は驚いて顔をあげた。
みんな優しいから、気にする事ない、などと言って励ましてくれるんだろうとは思ってた。
だがまさか、よかったね、という言葉が出てくるのは予想していなかった。
「力がなくなったからもう捜査を外れるとか言われたらどうしようかと思ったよ。
それに、ゆづきちゃんの予知は確かに凄いけど、その分辛いこともたくさんあるだろうから…
僕はそんな力が落ち着いたの嬉しいよ。」
にこっと、松田さんが言う。
竜崎が遠くで、ふっと笑ったのが分かった。
「たまにはいいこと言いますね、松田さん」
「たまにはって何ですか竜崎!」
いつものような掛け合い。
そして相沢さんや模木さん、夜神さんまで微笑んでいってくれた。
「松田の言う通りだよ。力があってもなくても関係ないさ」
「そう。何も気にすることはない。」
「ゆづきさんにできることをやればいいんだよ」
「みなさん…ありがとうございます」
目の端に、月くんが笑顔でいるのが見えた。
私に近寄ってくる。
「今、ゆづきさんの人望がよくわかったよ。」
「そんな…出来ることは、死に物狂いで頑張ります!」
もしかしたら、またひょっこり見えるかもしれない。
その日を待つしかなかった。
キラを捕まえるために…Lを救うために。
私は決して、未来を見ることを諦めない。
第二のキラから、またさくらTVにビデオメッセージが送られた。
封筒の消印は5月23日ーあの青山の日だった。
私たちはパソコンを囲んでそれを見る。
「キラをみつけることができました。テレビ局のみなさん、警察のみなさんありがとうございました」
その言葉に、私たちは唖然とした。
キラが見つかった?第二のキラに?
まだみつけることができました、と言っているのなら、接触してない可能性も高い。
私は腕を組んで、震えるのをなんとか抑えた。
もし…顔だけで殺せる第二のキラと、本物のキラが接触して協力でもしたら…!
Lは悔しそうにしつつも、冷静に言う。
「ここまで来てしまったら、第二のキラに今度は警察が呼びかけてみるしかありませんね。
第二のキラに警察側から好条件を出し、キラが誰なのか教えるよう呼びかけるんです」
事はいそげと、その日の夜、すぐに放送が流された。
内容はこうだ。
「まだあなたが誰なのかキラにわかっていないのなら間に合います。
興味本位でキラに近づいては絶対にいけない。
キラに接触すれば、あなたは必ず殺されます!
今あなたにできることは、人の命の尊さをよく考え、キラの情報を我々に教えることで罪を償い、
キラの恐怖から世界の人々を救うことです!」
私は心の中で、きっとこの放送で第二のキラが動くことはないだろうと思っていた。
竜崎も、心の中で思っていたかもしれない。
キラに会いたくてこれほど様々な手を尽くしてきたのに、
今更警察の言うことなんて信じるとは到底思えないから。
でももちろん、それを口に出す事は無かった。
私は月くんの顔をチラリと見た。
真剣な表情で考え事をしている。
もし、月くんがキラならー
やはりあの青山で、見つかったのだろうか。
でもあの日、松田さんと一緒だったし、監視カメラも多く設置されていた。
どうやってキラを見つけたと言うのだろう?
青山で友人とノートを見せ合う…
ノート?
月くんがノートに人の名前を書いてる映像を思い出す。
…なんか、気になるけど、なんだろう…
考えても、こんなポンコツの頭では何も分からなかった。
しばらくして、また第二のキラからメッセージが届いた。
「キラに名乗り出るのはやめます。
警察の皆さん、ご忠告ありがとうございました。
しかし私はキラと共に世の中の悪を消していき、キラに協力して認めてもらいます。
まずはキラがまだ裁けていない犯罪者を裁きます。
そして、この力を与えるに相応しい人間にはどんどん力を分け、世の中を良くしていきたいと思います」
私としては予想外の内容だった。
キラに名乗り出るのをやめる、なんて、そんな返事がくるとは思わなかったから。
私は皆さんのために大量のドーナツを大皿に並べてテーブル中央に置く。
普段なら一番に手を伸ばす竜崎だったが、今日はじっと考え込んでいた。
私はキッチンへ引き返す。
人数分のコーヒーを用意しているところへ、竜崎の推理が述べられた。
キラと第二のキラがつながってしまった、と。
なんとなく予感していた私は愕かず、そのまま手を動かす。
気持ちは暗かった。焦っていた。
Lがキラに殺されるかもしれない…そんな嫌な予感を拭う為に、私は手を動かし続ける。
何もしていなかったら、泣いてしまいそうだったから。
竜崎は、このビデオのおかげで月くんへの疑惑は弱まった、と言った。
もし月くんがキラであれば、これまでのようにテレビ出演を強行させてはずだと。ーLを殺す為に。
しかし、月くんが言う。
「仮に僕がキラだったらそんなことはしないな。竜崎の性格から考えて、メッセージ通りテレビ出演をするとは思えないからね。逃れる手段を考えるだろう?」
月くんが言った意見に、夜神さんがギロリと睨みをきかせた。
「月。例え話でも、『もし自分がキラなら』なんて話すのはやめろ!」
「ごめん、父さん。でも竜崎には自分の考えをちゃんと言いたいんだ…自分の疑いを晴らすためにも。
それに、もし『ボクがキラなら』なんて話せるのは、ボクがキラじゃないからだよ」
月くんは表情一つ変えずに言った。
竜崎は角砂糖を大量に紅茶に放り込み、それを混ぜながら言う。
「そうですね。月くんははキラじゃない…いや、月君がキラでは困ります。
月くんは、私の初めての友だちですから」
はっと、手を止めてしまった。
私は竜崎を見る。
周りの人々も、驚いたように竜崎を見た。
その瞬間、私は本当に心から、月くんがキラでなければいいのに、と思った。
竜崎がなぜこんな台詞を言ったのかは分からない。月くんと探り合いをしてるのかもしれないし、
本心かもしれなかった。
でも、思う。
これが竜崎の本心でなかったとしても、彼の言葉はあながち間違いではない。
見た目も性格もまるで似てない竜崎と月くん。
でも、どこか二人には共通点がある。
推理力だって、今まで竜崎の推理に追いつける人なんていなかったはず。それが、同じ視点で月くんとは話せる。
きっと…竜崎は、楽しいはず。
月くんが本当にキラでなければ、必ず二人は友達になれると思った。
「ああ。僕にとっても、竜崎は気が合う友だちだ。 大学、休学されて寂しいよ。またテニスしたいね」
月くんが、優しく微笑む。
「はい。是非」
その時、私の脳内に二人がテニスをするシーンが浮かんだ。
そう、いつの日か、
キラ事件などない時に、探り合いなどせずに、
二人が心からテニスを楽しめる姿をー