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「竜崎、夜神さんからです」
ワタリさんが自分の携帯を見て言う。夜神さんからかかってきたようだ。
竜崎は北村次長との会話を中断し、すぐ折り返し掛けるよう言った。
ワタリさんはそのように電話をかけ、竜崎に手渡した。
竜崎は至って冷静に言う。
「夜神さん私です。やはりあなたが護送車で」
はっとみんなが竜崎をみた。
夜神さんが…!?
「えぇ!?局長が!?入院しているはずじゃ…」
松田さんが声を上げる。
そう、彼はまだ入院中のはずだ。
竜崎が聞く。
「体の方は大丈夫なんですか?」
まさか、あの護送車が夜神さんだとは…!
竜崎はしばらく話したあと、再び北村次長と話し始める。
テレビの画面では、警察がさくらTV前に集まり固めている。
それは、警察はキラと対立するーーそれを表していた。
「ゆづきちゃん大丈夫?」
松田さんが私に気づき、声を掛けてくれる。
「凄く顔真っ青だよ…立てる?」
私は床にへたり込んだまま、目から大量の涙を流していた。
「…は、い…」
目の前で起こったことが受け入れられず、私は体に力が入らない。
一つ、私にとって確かな事実は、
宇生田さんが死んだ。
それだった。
ぼーっとしながら、最後の宇生田さんを思い出す。
彼は俺が止めるといって走り出した。
同時に見えた、彼の未来。
私は叫んだ。でも、その時すでに宇生田さんはもう部屋にはいなかったのだ。
……また、か
また、未来を見えたくせに、
変えられなかったのか…
あとほんの少しだった。彼を救えたのに。
彼が走り去るその手を、私が掴めていれば。
ーーーーーこんな事にはならなかった
「ゆづき」
竜崎の声が響く。
「こちらに来てください。私の隣に」
耳では聞こえていたが、私はまるで体が動かない。
松田さんが私の肩に手を置き、立ち上がらせようとしてくれる。
でも、まるで体が動かなかった。
少しして、竜崎がこちらに歩いてくる。
私の目の前にしゃがんだ。
「落ち着いて。あなたのせいじゃありません。」
「りゅ…ざき」
「あなたは自分を責めてはいけない。」
竜崎がそういって、私を強く抱きしめた。
その瞬間、私は意識が飛んだのだった。
父と手を繋いで公園に来ていた。
とても優しい父だった。休みの日は家にいて、私を思い切り抱きしめて遊んでくれた。
笑うと目が線になる。目元にはシワができる。
そんな父が、私は大好きだった。
公園で遊んだあと、父はジュースを買ってくる、と告げた。
自販機は公園の前の道を渡ったすぐそこ。
私はうなづいて、砂場でしゃがんでいた。
父は歩いて道路前に立つ。細い道で、車通りはあまりない道だった。
ちゃんと父は左右を確認した。そして踏み出す。
自販機について、ポケットから小銭を取り出す。
それを入れている時だった。
軽トラックが、父を巻き込みながら自販機に突っ込んだ。
私はそれを、砂場から見ていた。
何が起きたのか分からず、ただそこで座ったまま。
誰かの叫び声と救急車を呼ぶ声が響き渡る。
そばにいた知らない女性が、私を抱きしめて見えないようにしてくれた。
私と事故にあった男が親子だと、見ていたのかもしれない。
居眠り運転だった。
たまたま父が立っていた所に突っ込んで止まった。
運転手は無事だった。
はっと目が覚める。
全身に汗をかいているのが分かる。
…お父さんの、夢を見た…
真っ暗な部屋で、ここが自分の部屋だと気づくのに少し時間を要した。
そして今日、何があったのかを思い出す。
そうだ、私、あのまま意識を失って…
がばっと起き上がった。汗だくなのもそのままに、私は部屋を飛び出した。
捜査室からは光が漏れている。
私はその部屋の扉を開けた。
普段ならもうみんな帰ってる時間だろうが、今日はまだ残っている。
竜崎は何かテレビを見ていた。
夜神さんがソファに横たわっている。
その他の人もー松田さん、模木さん、相沢さんがおり、私を見てほっとしたような顔をする。
…宇生田さんが、いない
「ゆづきさん目が覚めたか?よかった」
模木さんが笑顔で言ってくれる。
その笑顔をみた瞬間、私はまた涙をこぼした。
そして頭を下げてさけぶ。
「ご…ごめんなさい!」
「…え、どうしたのゆづきちゃん…」
「わ、私の予知が…あと少し早ければ…宇生田さんは…!」
床にパタパタと涙が溢れた。
寝ていた夜神さんも起き上がったのが分かる。
「私…こんな力持ってるくせに…役立たずで…!ごめんなさい…!!」
何のために生まれてきたのか。
何のための力なのか。
その答えが欲しくて、死ぬのをやめて竜崎を助けようと思った。
キラを共に捕まえたいと。
それがなんだ。なんの役立つ予知も見れず。
ショックで気を失って、足手まといもいいところだ。
「ゆづきさん…顔をあげて…ここにいる誰一人、君を責めちゃいないよ」
相沢さんの優しい声がする。
「気休めじゃない。本当だ。ゆづきさんは一人辛い予知を見ながら戦ってる。俺たちは、むしろそれを助けられなくて謝りたいくらいだ」
「そうだよゆづきちゃん…自分を責めちゃだめだよ…」
無言で、模木さんが私を起こしてくれる。
周りを見れば、優しい目でみんなが私を見ていた。
夜神さんまでもが立ち上がり、私のそばに来てくれる。
「ゆづき、君の魅力は予知力があることではない。そうやって人を思いやれる優しさだ。我々はそれに何度も助けられてる。君は何も悪くない。」
ぽんと肩を叩かれる。
やがて竜崎が、ズボンの裾を引きずりながら私に近寄ってくる。
「全くあなたは…自分を責めすぎです。皆さんの言ってることは偽りじゃない。あなたが自分を責める必要はないのです。」
ゆっくりと、私を抱きしめる。
「それに…宇生田さんが、あなたを責めると思いますか?」
言われてはっとする。竜崎の胸の中で頭を振る。
宇生田さんは、
優しい人だった。
「さあ、早くいつものあなたに戻ってください。私たちにもっとも必要なのは、あなたの懺悔ではなく、あなたの笑顔ですよ。」
なんて優しい人たち。
こんな私を受け入れてくれる。
一言も責めず、励ましてくれる。
私は…恵まれている。
「…ありがとうございます…みんな…優しくて…」
私は泣きながら、みんなにお礼を言った。
「ゆづきさん…」
誰かが鼻声で呟いた。
私は宇生田さんの顔と声を、頭の中で思い出した。
決して忘れない、あなたの犠牲。
悲しみと同時に、私の心の中には、今まで生きてきて感じたことのない感情が芽生えた。
震えるほどの、怒り。
あんなにも簡単に宇生田さんを殺したキラへの強い怒りだった。
人の命を、こうも簡単に奪えるのか。
何も思わないのか。
これではまるでー 死神だ。
私がこうして落ち込んでいる暇はない。
宇生田さんの仇をうつためにも、
そしてLを死なせないためにも、
私たちは進まなくてはいけない。
泣くのは、これで最後だ。
私は竜崎の服をぎゅっと握った。
しかし、この日を境に、私の予知能力に変化が起きていることをー
この時はまだ気付いていなかった。