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「安心しました、夜神さん…」
お土産です、とLが買っていてくれたケーキをつまみながら話す。
ワタリさんが紅茶を入れてくれる。今日は人によくお茶を入れてもらう日だ。
「比較的元気そうでした。あなたに謝っておいてくれと言われました」
指先で器用にフォークを使いながらLが言う。
「え?私?」
「せっかく予知してくれたのに、体調管理できてなく申し訳なかったと」
「そんな…」
「家族を疑われて盗撮までされたので、彼の疲れは最もです。ほとんど私が原因です」
Lはすでに3個目のケーキ。とても美味しいケーキだけれど、私は3個は食べられないな…
「月くんがやはり捜査協力を申し出てくれました。夜神さんも私をLだと証言してくれたので、月くんも信じたようです」
「…」
「昨日お話しした通り、私はそれを受けようと思っています。光さん、いいですか」
「Lが決めたことです。あなたに従いますよ」
私はしっかりとLを見て言った。
この本部の司令塔は彼。私たちは彼についていくしかない。不安はもちろんあるけど、私にどうこうすることもできない。
「ところで、光さんが見た月くんの予知ですが…」
「あ、ノートに名前を書いてたやつですか?」
「調べたところ、書かれていた名前のうち2人はまだキラに裁かれていない犯罪者、1人は犯罪歴もない一般人でした。」
「私の予知はどれほど先のことか分かりませんから…将来的に3人ともキラに裁かれる人たちでしょうか。月くんはキラに裁かれた犯罪者リストを作っていたのでは?」
キラ捜査に参加するというなら、自宅で独自に作っていてもなんら不自然はない。
と思ったのだが、Lはフォークをくわえたまま考えるように上を見た。
「それは不自然です…リストを作るならパソコンの方が便利でファイリングもしやすい…それに、そういったものはこの本部でまとめてるので家で作る必要もないのですが…」
…それもそうか。
「では…例えば、月くんがキラだとして、これから裁こうとする犯罪者リスト、とか…?」
恐る恐る尋ねる。
「どちらかというとその方が自然です。…しかしこれだけではなんとも言えませんね。」
Lは再びケーキに集中を戻す。
確かに、これでは何も決定的証拠ではない。
「どのようなノートでした」
「普通の大学ノートです。表紙は黒いのがちらりと見えました」
「なるほど。これから月くんの予知がみえたら、私にだけこっそり教えてもらえますか」
「わかりました」
月くんが入ってきたら、また捜査室の雰囲気も変わるだろうな。
あ、また差し入れ一人分増やさなきゃ…
「仕事の話はこれくらいにしましょう。せっかくあなたとお茶してるのに」
「それもそうですね。ワタリさんも座ってはどうですか?」
近くで立っていたワタリさんに声をかける。彼は優しく微笑んで言った。
「いえ、私はもう休みを頂きます。若いお二人の邪魔をしてはいけませんので」
「そ、そんな…」
「ではL、何かあれば連絡ください。おやすみなさい」
ワタリさんは丁寧にお辞儀をすると、部屋から出て行ってしまった。
…変な気を使わなくてもいいのに…
ワタリさんとゆっくりお茶するのも好きなのにな。
でもまあ、ワタリさんもゆっくり休まなきゃだものね。
私はとりあえず、まだ半分ほど残ったケーキに口をつける。
「まだおかわりありますよ光さん」
「そ、そんなに食べたら太りますよ…みんなが Lのような体質と思ったら大間違いです」
「別に太ってもあなたを好きなのには変わりありませんよ」
「私が嫌なんです!」
頭を使えば太らない、なんてL論、わたしには通用しない!
「でもここのケーキ凄く美味しいですね。上品な甘さです」
「私のお気に入りです。いつかあなたとゆっくりお店でお茶したいものですね」
Lはこちらをみてにこっと笑う。私も微笑んだ。
「しかし私は光さんが作ったケーキの方が美味しいです」
「それは言い過ぎです」
「本気で思います。しかし、一つ思うのですが…様々なお菓子を作ってくれますが、王道のショートケーキはないですね?作らないんですか?」
うっ。ついに聞かれてしまった。
Lがショートケーキが好きなのは知っていた。初めて会った時もショートケーキを食べてたし。
いつか言われるとは思ってた…私がショートケーキを作らない理由。
私は眉を潜めて言う。
「L。答えは非常に簡単です」
「なんですか」
「不器用なんです」
Lは意外そうにこちらを見る。
「あれほどの料理の腕前のあなたが、不器用?」
「飾り付けは苦手なんです。センスがないというか…時間もかかるし。ショートケーキは特に生クリームといい生物を使うので、時間がかかるのは致命的なんです」
「面白いことを聞きました。あなたに弱点があったとは。」
いや、弱点まみれですけど。
頭もよくないしスポーツも得意ではない。
「Lの弱点はなんですか?頭もいいしスポーツも出来るみたいだし…あるんですか?」
私は最後の一口を食べ終えて、紅茶を飲む。香りの良いアッサムだった。
「そうですね…強いて言えば、あなたです」
「は?」
「あなたが最大の弱点であり、最大の強みですね。
ワタリに笑われました。この前車の中での私たちの会話を聞いて、あんなに弱々しい私を見たのは初めてだと」
確かに、ワタリさんは運転しながらちょっと笑ってた気がする。
「あなたは出会った頃から気が強かったですがね」
「性格です。」
「弱々しいと思えば急に強くなるので驚きます」
「かっとなったら止まらないんです」
「興奮すると敬語を忘れますしね」
ば、バレてた。
「敬語を使わなくていいんですよ。私はこれが通常パターンなので。」
「無理に敬語を使ってるわけじゃないです、Lに釣られてるだけですよ。他の捜査員も年上ばかりなので…Lにだけタメ口なのも気が引けます」
「あなたらしい、律儀ですね」
Lはそう言って4個のケーキを平らげた。なんと、この細い体のどこに入ってるんだろうか。
私は立ち上がってお皿を下げる。
「光さん片付けなんてあとでいいです、こっちに来てください」
「ほんの数分ですよ」
「ほんの数分が待てません、充電させてください」
Lはそう言って立ち上がり、キッチンに立つ私を後ろから抱きしめた。
…ほんと、出会った頃のLが嘘みたいだ…
私は顔を赤らめる。
「わ、分かりましたから…一旦離してくださいL」
「無理です」
「む、無理って…」
Lは私を抱きしめたまま頬にキスを落とす。
「いい匂いがします」
「…最近L匂いに敏感ですね」
よくいい匂いがする、と言われてる気がする。
「光さんの匂いが好きなんです」
「あなたが変態ということはよく分かりました」
「ひどいですね。人間は異性の匂いで自分に合う人を探すんですよ」
「まだお風呂に入ってないのでやめてくれますか…」
「わかりました一緒に入りましょう」
「分かってない!」
私はLの頬を両手でぎゅっと挟む。Lの口がひょっとこみたいに突き出た。
「いたひでふよ…」
「ふ、あはは!」
Lの変顔に笑ってしまう。
私が笑ってる隙に、Lは正面から私を抱きしめた。
「あなたの笑顔が好きです。ほっとします」
「…私もです」
「ずっと私の隣で笑っててください」
「ではずっと笑わせてください」
私はLの胸に顔を埋めながら、Lの匂いも好きだな、と心の中で呟いた。