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それからしばらく。
ヘッドスパやトリートメントなどのフルコースをワタリさんは予約してくれていたらしく、
私はありとあらゆるサービスを堪能出来た。
それはもううっとりとしてしまうほど。
そしてだいぶ長く伸びた髪は、思い切って20センチほどカットした。
気持ちよくリフレッシュ出来たところで全てのサービスが終了し、受付へいくとワタリさんが立って待っていた。
「ワタリさん!お待たせしました!」
「とても似合っています、竜崎が喜びます」
会計はもう終わっているようで、私は美容院を出て再びワタリさんと車は乗り込んだ。
「本当にありがとうございます、凄く気持ちよかったです!」
「それはよかった。更にお綺麗になりましたよ。」
とても紳士だし気もきくし、ワタリさんって凄すぎる。
夜勝手にマスターキーで私の部屋に入り込むLも、見習って欲しいくらいだ…
髪を切った事で気分が高揚している。女とは単純なものだな。
私はニコニコしながら外を眺めている。
L見たら、何ていうかなぁ。
そんなことを思いながら車に揺られていると、
「…あれ。もしかして…」
「お気づきですか」
「東応に、行くんですか?」
そこは今日入学式が行われる東応大学だった。
Lと、月くんがいる…
「もうお迎えに上がる時間なので。」
「うわー、ここがLが通う大学かあ!」
頭の良い人たちばかりが通う大学。私には縁ないけど…
通る人たちが珍しそうにこっちをみる。そりゃ日本じゃリムジンなんてあんまり見ないよね…
ワタリさんはある場所で停車した。
「もうすぐLが来ます。夜神月も一緒かと。後部座席はスモークがあるのであまり外からは見えませんが、念のため端によっていてください」
私は言われた通り、なるべく端によっておいた。今日、Lは月にLだと名乗るはず。Lの乗り込む車に女がいたら、そりゃ気になるだろう。
私はワクワクしながら待っていた。そもそも、外に出たLを見ること自体が初めてなのだ。
するとそれからしばらくたち…
Lと、月くんが歩いてくるのが見えた。
月くんはしゃんと背筋を伸ばして。
Lは酷い猫背で。
…てゆーか、入学式にあの格好で行ったんかい!私は愕然として頭を抱える。
Lは普段通り、白い服にジーンズだった。
そうだ、そういえば予知もあの格好だった…。全く、頭脳以外はてんで生活力ないんだから。
はあと呆れながら、彼の隣にいる美青年に目がいく。
月くん、初めて生で見たけど…
写真やカメラ越しよりずっと爽やかでかっこいい。周りの女子大生も何人か彼を見ている。これはモテる子だぞ、間違いない。
…キラ、とは思えないんだけどなぁ…いやいや、人は見かけにやらない、だ。
何か言葉を時々交わしながらやがて車まで付き、ワタリさんが車から降りた。
颯爽とLのために後部座席の扉を控えめにあける。
Lはすぐに乗り込んだ。私は言われた通り端の方に小さくなっていたため、多分月くんからは見えていない。
…あ
予知が、見えた。
しかもLでもワタリさんでもなく…この短いタイミングで、月くんのものだった。
ワタリさんが扉を閉めて、運転席に移動する。
すぐに車を発進させた。月くんがじっと、私たちを見送っていた。
月くんが見えなくなったところで、Lは私の隣でいつものように座り、くるりと首をこちらに向ける。
「あ、L、入学式はどうでし…」
「光さんとても綺麗です。かわいいです。似合ってます。素敵です。」
私が言う間もなく、Lが褒めちぎってくれる。
「あ、ありがとうございます。ワタリさんに連れて行ってもらって…それでL、らい…」
「いつも綺麗なあなたの髪がもっとサラサラです。たまりません、とてもいいです。いい匂いもします」
「あのえ…」
「長いのもよかったですがこれくらいの長さもとても…」
「L!」
息をつぐひまもない。私は強めに彼の名を呼んだ。
褒めてくれるのは凄く嬉しいけど、今は月くんとのことの方がずっと重要だ。
「お褒めの言葉ありがとう!それで、入学式はどうでした?月くんは?」
私が尋ねると、Lは親指の爪をかじる。
「私がLだと告げました」
「…どうでしたか」
「特に不審な言動はしません。まあキラならこれくらいで動揺しないと思いますが…」
「…そうですか」
じっと考え事をしている。
いつもより、なんだか険しい表情の気がした。
「…L、何か悩んでるのですか」
私が聞いても、力にならないと思うけど。
聞かずにはいられなかった。
「…いずれ、月くんに捜査依頼をすることになるかもしれません」
「…え」
「彼も参加を望むでしょう。彼を監視するにもいい。もしキラでなかった場合は、とても強力な仲間になる。それに以前も言いましたが、彼は私の正体を知った事で私に手出し出来にくくなりました。今私が死ねばかれが疑われますからね」
「捜査メンバーが増えるということですか…」
「…そうなれば光さん、あなたは捜査から外れて頂きたい」
Lの言葉に、私は驚いて横を見た。
「あなたが私の恋人だとなれば、同じように月くんはそう簡単に手出ししないでしょう。…しかしそれでも、あなたと月くんを近づけるのはリスクが大きすぎる…」
それを、悩んでたのか…
Lは今までもずっと、私の安全を気にしてくれていた。
予知能力があるとなれば、きっとキラはこの力を利用しようとするから。
キラと疑わしき月くんとの接触を避けようとしてるんだ。
…でも、私の気持ちは?
あなたを救いたいという私の気持ち。
私はあなたの側にいなければ予知も見れない。
それに何より、私は自分が死んだとしても、この事件の結末を見届けたい。
そして、Lのそばにいたい。
「…L」
「あなたが反対するのは目に見えています。しかし今回ばかりは…」
「月くんに、捜査依頼しましょう」
Lが私をみる。
「では、光さん、あなたは…」
「私は動きません。」
ピタリとLが止まる。
「月くんの予知も見れるチャンスです。もしかしたらキラと断定できる予知が見えるかもしれない」
「光さん。あなたを危険な目に…」
「L、ひとつだけ選んでください。
あなたの前で私が月くんと接触するのがいいか、
あなたの知らぬ所で接触するのがいいか。」
Lは目を見開いた。
私はにこっと笑う。
そう、追い出されたら追い出されたで、私は独自に月くんと接触するだろう。
彼の予知を見るために。
彼の学校も家も分かってる。接触は容易い。
Lはしばらく停止したあと、はあと息を吐いて頭をかいた。
「…私はとんでもなく恐ろしい女性を愛してしまったようですね」
「褒めてもらってありがとうございます」
「生まれてこのかた脅迫されたのは初めてです」
「人聞きの悪い言い方しないでください」
Lは負けを認めるように頭をうな垂れた。
心配してくれるLには悪いけど、私ももう引けない。
私はあなたの未来を変えるためにいるのだから。
「分かりました、あなたも引き続き捜査に参加してください。そのかわり月くんとは捜査室以外では絶対に関わらないでください。何かあれば必ず私に言うこと。」
「はい!」
私たちの会話を聞いて、運転してるワタリさんが小さく笑った。
こんなタジタジなLは初めてです、と言わんばかりに。
Lはゆっくり腕を伸ばし、そっと私の髪に触れた。
「…柔らかいです」
「あ…トリートメントもしてもらったから…」
「光さん、あなたに何かもしもの事があったらと思うと…私は気が気でない」
そう言って、そっと髪に唇を落とす。彼の顔が近づいてきて、私はどきっと胸を鳴らした。
「…もしもの事なんてないですよ。Lが守ってくれるんでしょう?」
「もちろん全力を尽くします」
「それにキラも私の能力がほしいなら、殺したりしませんからね。むしろ最後まで生かされるのは私でしょう。ある意味安全ですよ」
Lは私の髪を指先で遊ばせるようにいじっている。そして視線を逸らしながら小さな声で呟いた。
「…命だけではなくて…月くんもあなたにきっと惚れるでしょうから…」
「…L、何度も言いますがあなたは私を買いかぶりすぎです」
私は呆れたように彼を見る。そんなわけないでしょうに。あんな完璧な美青年がこんな普通な女を?年も離れてるのに?ありえない!
Lはまさにいじいじという言葉が似合うように私の髪を触りながら言う。
「そんなことありません。十分にありえる話です。あなたに他の男が近寄るなんて耐えられません」
…ただ単なる嫉妬になってる…
私はついくすっと笑った。
「L、宣言通り独占欲が強いんですね」
「はいそうです」
「ほかにどれほど素敵な男性がいようが、私はあなたしか興味ありませんよ?知ってるでしょ?」
Lに言うと、彼はすぐに口角をあげて笑った。
子供みたい。すねたりご機嫌になったり。その様子をつい可愛い、なんて思ってしまう私はもう重症だ。
「そういえば…月くんの予知が見えました」
Lがばっと顔をあげる。
「何が見えましたか」
「えっと…あまり関係なさそうですが…
彼が黒い大学ノートに、名前を書いてます」
「…名前?」
「はい、名前だけ。ただそれだけの映像でした」
やけに真剣な眼差しで、黒いノートに名前を書き続ける月くん。
Lは考えていった。
「その名前は覚えてますか」
「えっと少しだけ…」
私は覚えてる限りのノートの名前をLに告げる。
「…ありがとうございます」
キラの決定打とは到底思えない映像だ。
もう少し見たいように見れればいいんだけどなあ。
「さ、お二人とも。着きますよ」
ワタリさんの声がする。
Lが私の手を握った。
私も握り返して言う。彼のひんやりした手はいつも気持ちいい。
「二人でドライブなど珍しかったですね」
「事件が解決したらいくらでもいけます」
「楽しかったですよ、デート」
Lが大学を歩いてるって言うレアな場面も見れたし。
私は満足してる。
「…またあなたはそうやって私の心を揺さぶることを言う」
「そ、そうですか?なんら普通の会話かと…」
「光さん、今日あなたの部屋に行ってもいいで」
「だめ」
そんな会話をする私たちを、ワタリさんが温かく見守っていた。