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4月。
気温はだいぶ上がりつつも、まだ肌寒さを残している。
Lと気持ちが通じ合って1ヶ月ほど。
私たちは相変わらずの毎日を送っていた。
昼間は捜査室でお菓子を作る私、捜査するL。
夜になると捜査室へ入りお茶をする。
なかなか進展もままならない二人だが、少し私は緊張が溶けてきた。
とは言っても、まだLを部屋に入れてはいない。
いや、勝手に入って寝ていることはまだ多々ある。そこは最近諦め気味だ。
朝起きてLがいれば、またか、と呆れるくらいで済むようになった。これも成長成長。かと言って、そこからもう一歩は中々進めないのだけれど。
キラ事件は至って進展はない。
新しい容疑者もなく、キラも新しい動きはない。
そんな中、Lは大学の入学式へと向かった。
月くんと接触するために…
彼は口には出さないものの、月くんをキラだと疑っている。
そしてー自分がLだと名乗ると。
私はそれを以前Lから聞いていたため、入学式へ行ったLが気がかりでしょうがなかった。
「髪、伸びたなぁ…」
私は鏡にうつる自分を見て呟いた。
自室の小さな洗面台で、じっと見る。
朝いつも通りお菓子や皆さんへの差し入れを作っていたところ、夜神さんがやってきて言ってくれた。
今日は竜崎も出かけるのだし、たまには君も休みのつもりでゆっくりしなさい、と。
他の方たちも笑顔で見送ってくれたので、私は少しの時間自分の部屋に戻ってきていた。
…とは言っても、やることがない。
以前、竜崎が、もう私をキラ共犯と疑っていないから、と言ってテレビを置いてくれた。無いよりはあったほうが気は紛れるが、かと言って夢中になれるほどでもない。
ニュースを見ればキラを思い出すし、ドラマもあまり見るのは好きでは無い。
私は暇を持て余しながら、穏やかな時間を送っていた。
そこへ、ノックが鳴り響いたのである。
「はーい?」
私がドアを開けると、ワタリさんが立っていた。私はわっと笑顔になる。
「ワタリさん!こんにちは!」
基本夜に来る事が多いので、こんな明るい時間に訪ねられるのは初めてだった。彼はいつもの上品な話し方で言う。
「みなさんに伺ったらこちらと聞きましたので…今、お忙しいですか?」
「いいえ!むしろ暇を持て余してますが…」
「よろしければゆづきさん、この老人と少し外出いたしませんか?もちろん竜崎の許可は取ってあります」
「え!いいんですか!」
「はい、お付き合い頂けますか?」
「嬉しいです、行きます!」
外に出ることなんて、ホテルを移動した時しかないし、ワタリさんと出かけると言うのも嬉しい。私は飛び跳ねて喜んだ。
軽く身嗜みを整えリップを唇に塗ると、捜査員の方たちに一言だけ言って、ワタリさんとホテルを後にした。
彼が運転するリムジンに乗り込み、爽やかな空気の流れる街中は走り出す。
春だなぁ…
日差しも温かく、どこか人々も心踊ってる様子。
ゆっくり外を見ながらドライブだなんてとても久しぶりだったので、私はつい笑みがこぼれた。
「今日はどこに行くんですか?」
「ちょっと色々仕入れしたいものもありまして、お付き合い頂けますか。」
「もちろん!ワタリさんとお出かけっていうのも初めてでワクワクします!」
Lの元へきて数ヶ月。はじめ愛想の悪いLに悩んでる時も、ワタリさんだけが癒しだった。
完全に、私はワタリさんに懐いてしまっている。だって優しくて上品で気遣いができて、懐くなと言う方が無理だ。
「そんなことを言われては、Lに嫉妬されてしまいますよ、恐ろしい」
おどけてワタリさんが言う。私は笑いながら言った。
「Lも、ワタリさんにはそんなことしないですよ!前聞きました、すごくワタリさんは信頼してるって…孤児院の責任者だったんですよね」
「おや…Lはそんなことまであなたにお話ししてましたか」
「キラ事件が片付いたら、イギリスにある孤児院へ遊びに行きたいって話したことあります」
「そうですか」
ワタリさんが目を細めて笑う。
「Lは子供の頃から何も変わっていません。あのように頑固で用心深くて…」
「…ちょっと大変な子ですね」
「私も初めは手を焼いたものです」
懐かしむように、ワタリさんが言う。
本当に、Lを自分の子のように思ってるんだろうなぁ…
小さい頃父を亡くした私は、父と子の関係とはまさにこんな感じなのかなと想像を馳せた。
「Lは最近とても楽しそうです。あなたという存在が出来て、明らかに変わりました」
「そ、そうでしょうか…」
「守りたいものができると、人は頑張れる。きっとLはそれを自覚したのです。…もしかしたら、もうLの死の未来は変わってるかもしれませんよ」
どきっとする。
死の、未来…
最近めっきりキラも大人しいし、捜査も進展がないから忘れそうになる。
彼の、死ぬ未来を…
「あなたと出会った事で、彼の力が今まで以上に発揮されれば、そんな未来も変わってしまうかもしれません」
「そう…だと嬉しいんですけど」
私はぼんやりと外を見る。
「最近は捜査員の方達とLと…ワタリさんに囲まれて、幸せだなって思えてるんです…こんな日々が続けばいいのにって。だから今日、月くんと接触するのも、怖くてならない…」
「夜神月、ですか…」
彼はキラなのだろうか。Lがこれだけ怪しんでる時点で、その可能性は少なからずある。
でも彼は夜神さんの息子さんだし…そうであって欲しくない、と思う私はやっぱり甘いのだろうか。
「Lはあなたがいるから、無理はしないと思いますよ」
「そう、信じてます」
そう話しているところで、車がどこかへ停車する。
「ゆづきさん、こちらで一度降りていただけますか」
ワタリさんに言われて、私は車から降りる。
ここ、は…
「さ、中へどうぞ。」
言われるまま入ると、お洒落な内装の店に入る。あれ、まさか…
「いらっしゃいませ」
上品な女性がこちらへ来る。
「この方をお願いします」
「え、私ですか!」
ここはどう見ても美容院。しかもかなりVIPな人が来そうな…
「さ、私は少し近くで用がありますので、こちらでお待ち下さい」
朝、確かに髪が伸びたなぁって思っていたところ。
このタイミング…!恐るべしワタリさん!
慌てて頭を下げる。
「す、すみません…気遣ってもらって」
「たまにはリフレッシュしてください」
そういうとワタリさんは丁寧にお辞儀して、一度店から出て行った。
「こちらへどうぞ」
私は案内されるままに進む。そこは全室個室らしく、私は見晴らしの良い窓がある部屋に通された。
いくつになっても、女は美容院にくるとワクワクするものだ。しかも、こんないいところ来た事ない…
少し緊張しながらも、私は椅子に座り、どんな髪型にしようかカタログをめくったのだった。