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「…いい匂いがします光さん」
「え?あ…保湿クリームですかね?ワタリさんが用意してくれてるやつ」
「甘い匂いです」
「Lこそ甘いですよ…お菓子の匂いがします…」
「最近あなたに叱られるので甘いもの以外も食べてるじゃないですか」
「ほんの少しですけどね…ちなみに今日出したクッキーにはにんじんのすりおろしが入ってます」
Lは驚いたようにばっと顔を上げる。私はふふふっと笑ってしまう。
「ちょくちょく入れてますよ、気づきませんでした?」
「あなたに盛られるとは思ってませんでした」
「毒物みたいに言わないで貰えますか」
私はなおも笑いが止まらず、一人笑ってしまう。
Lはちょっと拗ねたように口を尖らせた。
さらに私をぎゅっと力強く抱きしめる。
「…Lって意外と甘えんぼなんですね」
「普通です」
「そうなんですか?」
「本当は昼間もあなたを隣に置いてこうしたかったのを我慢してたんです、褒めてもらいたいですね」
「そ、それは…勘弁してください…」
私はずっとうるさい心臓を治めるために深呼吸する。
「…正直、私はこの状況についていけてないです…昨日まで、Lとは触れることすらしたことないのに…夢みたい。ドキドキして、心臓が持ちませんよ」
私は顔を手で覆う。恋愛初心者の私には受け入れるのに時間がかかりそう。
Lはゆっくり離れて体を起こすと、私を困ったように見た。
「…光さん…あなたは…素でそんなことを言ってるんですか?」
「え、何がですか…」
「…困りましたね」
Lはじっと私を見つめ、すぐに俯いてため息をついた。
「L?私、なんか変なこと言いました?」
焦って聞くも、Lは顔をあげない。
「…光さん。あなたは…」
「?」
「…可愛すぎます」
「へ!?」
Lから飛び出した言葉に脱力する。
ば、バカップルか!
私はLを睨んで非難する。
「L!ふざけないで!」
「ふざける?私が?至って真面目です。男の心を刺すような発言をなんの考えもなしにするあなたが怖いです」
「私はLの見たことのない面が出過ぎてて怖いです!」
始めの頃、まるで無表情で視線すら合わなかった頃が信じられない。本当に同一人物なのだろうか?
「私自身も怖いです。自分がこんなふうになったのは生まれて初めてなので。」
Lが膝を抱える。
「はじめて、ですか…?」
「人を愛した事も愛された事もはじめてです。正直、戸惑っています」
そういう彼の顔は確かにどこか戸惑ってるようにも見えた。一気に愛おしさが溢れる。
「…じゃあ、嬉しいです」
私は言う。
「Lでさえ知らないLを…私が一番初めに見ることが出来るなら、嬉しいです」
Lがゆっくりこっちを見た。
優しく微笑んでくれる。
私だって、同じ。
こんな気持ちになるのは生まれて初めてのこと。自分自身が分からない。
少し怖いけど、面白くもある。
そっとLが私の手を握る。
ちょっとひんやりした、大きな手だ。
いつもお菓子を摘んでるのを見てた、あの綺麗な手。
私はなんだか嬉しくなって、思い切ってそのままLにもたれかかる。
「懐かしい。こうして寝たこともありましたね」
「あなたがよだれを垂らしてた時のことですね」
「え!?」
「冗談です」
「L!」
冗談も、憎まれ口も、愛しくてならない。
私は幸せを噛みしめながら、Lのぬくもりを感じていた。
そう。あの時、私はこうして眠っていたんだよな。心地いい揺れだったのを覚えている。
「…光さん」
「なんですか?」
「あなたの部屋に行ってもいいですか」
「?なぜですか?」
きょとんとして尋ねた。
私の部屋?なぜわざわざ移動するの?
私は疑問をそのまま出したのだが、Lがぐっと押し黙る。
「……言わせるつもりですか」
……え、
……!!
え、まさか、まって、そういうこと!?
私はばっと体を起こして離れる。
「だ、だめです!」
Lは恨めしそうにこちらを見ている。私は自分の顔が赤くなっているのを自覚した。
だって、え。そういうことでしょう?
そんなの!!まだ私には到底無理だよ!
「なぜですか」
「心の準備です!」
私は断言した。
「そんなもの必要な…」
「あります、最も必要なものです!」
私は赤い顔を隠すようにLから背けた。Lはそれでもしつこく私に尋ねた。
「どのくらいの期間必要ですか」
「そ、そんなの分かりません、私次第です」
「……」
Lは残念そうに爪を噛んだ。
だって、手を繋ぐだけで緊張するのに、そんなステップ進めっこない。それに色々こちらだって準備がいるんだから!
私はここにいる恥ずかしさに耐えられず、ソファから立ち上がる。
「きょ、今日はもうねます。Lも、たまには睡眠とってくださいね!」
「…分かりました。おやすみなさい」
思ったより素直に引き下がったため、私はほっとする。
「では…おやすみなさいL」
私はそういうと、Lに背を向けて捜査室を後にした。
ドキドキしてる心臓を抑えるように手を置く。
すぐに自分の部屋に入って、ベッドに倒れて顔を埋めた。
…だめだ、恋愛免疫がなさすぎて…
なんでも恥ずかしくて死にそう。こんなんでやっていけるのかな。
私はLはと繋いだ手をそっと見た。
大きな手だった。男性と手を繋いだのは初めてだった。
思い出しては、わあーと枕に顔を埋める。
私はもう成人したいい大人だ。
なのに…あまりに恋愛スキルが低すぎて、Lも呆れたかもしれない…
人と関わることを避けてきた私に恋愛は遠い存在だつたから。
男性に抱きしめられるのも、キスをされるのも、全て初めてのこと。
嬉しいけれど同時に恥ずかしい。いつか、慣れるのだろうか。
そんな日が来るとは到底思えない。
好きだからこそ。
L、あなたが好きだからこそ、なんですよ…
昨日も寝るのが遅かったためか、すぐ私を睡魔が襲った。
素直に身を任せ、私は目を閉じる。
幸せを、噛みしめながらー
真っ暗だった部屋に、少しの光が入る頃。
妙に寝苦しい感じがして、私の脳が目覚める。
なんだろう、なんか…狭い…?
私は目を閉じたまま寝返りをうつ。
すると指先に、何かが触れたのが分かった。
不思議に思い、目を開けた途端ー
「えっ…!」
る、まで言えなかった。叫び出したい声をなんとな飲み込む。
そこには、私の隣で目を閉じてぐっすり眠るLがいたのである。
私は驚いて起き上がる。
な、な、なんでLが!?
いつから!?
どうやって入ったの!?
あらゆる疑問が浮かぶ中、私の頭を占めた感想は、
…Lが寝ていることに対する驚きだった。
ここに来て3ヶ月以上。私は彼が寝ているところを見たことがなかった。
恐らく私が眠りこけてる間に、仮眠ほどの短い時間寝ていたのだろう。
だから、貴重すぎる寝顔に呆然とした。
…Lが、寝てる…
叩き起こして色々突っ込んで聞きたいことはあったけれど、それすら思いとどまるほどの感激があった。
…Lの寝顔、初めて見たなぁ
しみじみと見つめる。
白い肌に長いまつ毛。クマは相変わらずクッキリ…。
胎児のように丸まって、膝を抱えるように寝ている。
寝る時もこの体制なのね。
私はくすっと笑うと、とりあえず毛布を彼にかけた。
問い詰めるのは起きてからにしよう。
私はそっと、Lの髪に触れた。
思ったより柔らかい髪質。いつも無造作にボサボサでいることが多いけど、ブラシを通したら意外とサラサラなのかも。
こうして見ると、いつもの奇行も分からないし、子供みたいで可愛らしい。
微笑みながら時計を見ると、朝の5時だった。
もう起きる時間だ。準備をしよう。
Lを起こさないようにそっとベッドから出ようとした途端…
服の裾が引っ張られる。
「…もう起きるんですか」
見れば、彼の目はぱっちりと開いている。
「え、L!起きてたんですか!」
「つい今さっき覚めたところです。あなたが寝起きを襲ってくるのを待ってました」
「襲うわけないでしょう!?そもそも、なんでここにいるんですか!」
起きた途端、いつものLのペースだ。さっきの寝顔の可愛らしさはない!
「あなたがたまには寝ろと言ったんですよ」
「一緒になんて言ってませんよ!いつからいたんですか!?」
「0時ごろにきました。まったく気づかなかったんですね」
「夜女性の部屋に勝手に入るなんて、非道ですよ!変態!」
「変態はひどいですね…」
Lは頭をかきながら起き上がる。
「しかし、光さんの隣はよく寝れました。こんなに寝たのは久しぶりです」
「〜っそれはよかったですけど!私は起きた瞬間叫び出しそうでしたよ!反省してください!」
「すやすや寝ているあなたを見て襲うことも必死に我慢したのに…」
「そもそも勝手に入ってくるからでしょーが!!」
なんて自由な!
確かにLとは気持ちが通じ合ってるけど、まだ日も浅い、親しき中にも礼儀あり!!
「では次からは驚かさないようちゃんと予告してから行きます」
「そ、そういう問題では…!」
「あなたは私を好きで、私もあなたが好き。お互い分かってる大人が、隣で寝るのもダメなんですか?」
そう言われてしまうと!!
…反論できないではないか。
私はぐぬぬと押し黙ると、Lを見ていった。
「〜わかりました、じゃあとりあえず予告してください、許可するかどうかは私が決めます」
「許可してもらわなくとも私はマスターキーを持ってますので問題ないです」
問題だらけ!!
私はらちのあかない会話に痺れを切らし、びしっとLを指差して言った。
「L!はじめに言っておくけど、私は恋愛超!初心者です!そこんとこ!覚えておいて!!」
「…そんなに堂々と宣言することですか」
「さ、私は今から朝の準備します!出て行ってください!」
私はLを立ち上がらせ、背中を押して部屋へ押し出していく。
Lは私に押されるがまま部屋から追い出されていく。
「ずいぶんな扱いです…」
「不法侵入者に優しくできませんよ!」
私はLを部屋の外へと追い出すと、何も言わず扉を閉めた。
扉の向こうで、Lが歩いて去る音が聞こえる。
私はほっと息をついた。
…ちょっと、冷たかったかな。
Lがいうことも最もだ。ただ、私が大人になれないだけ…
まさかここまできて自分の恋愛経験の乏しさに悩むとは、思っても見なかった。
…でも
貴重なLの寝顔を見れたのは、よかったかもしれない。
Lには言わないけど。言ったら調子に乗る。
私はため息をつくと、とりあえず顔を洗いに行ったのだった。