3
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あさが来る。
私はぼんやりと目を開けた。ずいぶん、明るい気がする。
昨日は全然寝付けなかった。記憶では、3時までは少なくとも起きていた気がする。
今は、何時かな…
私は時計をながめる。
「…げっ」
時計は、7時55分を指していた。
やばい、寝坊!!
私は慌ててベッドから飛び起きる。夢見心地など吹っ飛んでしまった。
急いで顔と歯を磨き、簡単に身支度を整えた。
こんなに寝坊したのはここに来て初めての事だ。
もうきっと捜査員の方たちも揃ってる。私が最後になるなんて!
私は服を着替え、着ていた物をそのままベッドに放り投げると、走って部屋を出る。
そして捜査室へ飛び込んだ。
「すみません、おはようございます!!」
ばたんと、扉を開ける。
見れば竜崎以外の捜査員が、キッチンに集まっていた。
「あ、光ちゃん!よかった〜、今みんなで部屋を訪ねようかと話してたんだよ!」
松田さんが手を振ってくる。
「す、すみません、完全に寝坊しました!」
私はペコリと頭を下げる。相沢さんが笑った。
「それならいい。いつもかなり早くからいるから、体調でも悪いのかと思ってたんだ」
「ご、ご心配をおかけしました…」
そう言いつつチラリと竜崎を見る。彼はいつもとなんら変わらず、ソファに座ってパソコンをながめている。
夜神さんが笑顔で言う。
「いつも早くから頑張ってるから、疲れてたんだろう、無理しなくていい」
「あ、ありがとうございます…」
私はもう一度ペコリと頭を下ろす。そしてキッチンへ入る。
落ち着こうとゆっくり深呼吸する。仕事と私情は分けなくては。私もいい大人なのだ。
「今日は何作るの?」
「何にしましょう…ホットサンドでもいかがですか、パンがたくさん余ってて」
「いいねぇ〜!楽しみだなー!」
松田さんがいつものようにニコニコとする。
模木さんが呆れたように松田さんをみた。
「松田は…仕事より光さんのご飯食べに来てるようなもんだな」
「そ、そんなことないですよ!…楽しみにしてるのは事実ですけど…」
「朝も松田がずっと光さんが来ない、光さんが来ないって煩くてな」
模木さんが笑う。
私は微笑んでお礼を言った。
「心配かけてすみません、ありがとうございます」
「はは…いつもいる光ちゃんがいないとなんか心配で…確かにご飯も楽しみにしてるので…」
「まあ楽しみにしてるのはわかるがな。みんな一緒だ。光さん料理上手だからなら」
「そんなことありませんよ。簡単な物しか作ってませんから…」
私が謙遜すると松田さんが凄い勢いで反論してくる。
「いや、そんなことあるって!光ちゃんのご飯すごく美味しいし光ちゃん自身も凄く明るくて助かってるよ…!」
食い気味に言ってきてくれる。つい仰反るほどの熱意だった。
「あ。ありがとうございます…」
「ぼ、僕…将来の奥さんは、光ちゃんみたいな人がいいなぁって、常々…」
松田さんが照れたように頭をかく。
すると。
「松田さん」
竜崎の声が遮る。
気づけば、そこまで竜崎が近寄ってきていた。
竜崎は松田さんを軽く睨むと、親指を噛んだ。
「光を口説かないでくれますか」
言われた松田さんは顔を赤くして、慌てて否定する。
「そ、そんな口説くなんて!そんなつもりは全く…」
「彼女は私のです」
…静寂が流れる
松田さんが一時停止している。
いや、捜査員みんなが時が止まったように停止している。
私も停止する。
ちょっと、まって…?
ま、まさか…
口裏を合わせたわけじゃない。だけど…こう、暗黙の了解で、みんなには内緒にするのかなと思っていたのだが…!
まさかこんな堂々と…!?
ゆっくりみんなが私を見た。
私は見られて、どう答えようか慌てふためく。
松田さんがパクパクと口を開けて私たちを見比べる。
「え、でも、この前聞いた時は…違うって…」
そんな松田さんにピシャリと竜崎は言う。
「この前はこの前、今は今です」
それだけ言うとまたソファに戻ろうとする。が、足を止めてこちらを振り返った。
「昨日言い忘れてましたが光。私は結構独占欲が強いんです。覚えておいてください」
私は一気に顔を赤くした。
そこまできてようやく状況を理解できたのか、捜査員の声が響く。
『え…ええええ!?』
夜神さんまでもが口を開けて目を丸くしていた。
私は頭を抱える。
松田さんはがくっと頭を垂らし、相沢さんが肩に手を置いている。
私は捜査員みんなの視線に耐えられず、かといって逃げることもできず、ただひたすら俯いて顔を手で覆っていたのだった。
夜になり、Lの元へ行こうと思っていた。
思っていたのだが…なんだか、気まずい。
私は自室でウロウロと落ち着かず動き回っていた。
会いたいけれど、昨日あんなことがあって、今日捜査室でもあんな風なことになって、
私は単純に恥ずかしかった。どんな顔でLと会えばいいのか分からなかったし、会って何を話せばいいのか分からなかった。
はあ、とため息をついて顔を手で覆う。
…私の恋愛スキルはないに等しい。
人並みに恋をしたことはあった。でも、こんな力があるし、一人で諦めることばかりだった。
恋が叶ったことなんてなかったし、これから先も叶うことなんてないと思っていたのだ。
だから急にこんなことになっていて、私は戸惑っていたのだ。予想外の展開すぎる。まさかLに恋心が届くとは思っても見なかった。
これまではなにも考えずに夜会いに行ってたけど、
思えば部屋着だったし、すっぴんだったし、髪も適当で…
恥ずかしいことこの上ない…
しかし時間的にもお風呂に入り終えてる時間だし、今日から急にバッチリおしゃれも気合入ってるみたいでそれはそれで恥ずかしい気が…でもこうなればお洒落した方がいいのだろうか、いやこんな時間から化粧しては肌も荒れる。
…なんて考え出したらキリがない。完全に拗らせている。私は一人悶々と悩んでいた。
そこへ、トントンとノックの音がした。
どきんと胸が高鳴る。
「は、はいっ」
「私です、夜分遅くすみません」
声を聞いて、ほっとした。ワタリさんだった。
私はドアを開ける。笑顔の紳士が立っていた。
「こんばんは、こちらを届けにきました」
ワタリさんが差し出す紙袋を受け取る。様々な生活用品を、彼は定期的に手渡してくれるのだ。
「いつもすみません、ありがとうございます」
「聞きましたよ、Lから」
ぶっと吐き出してしまった。
あ、あの人は…この1日でどれほど周りにいい振り回しているのか…!
確かにワタリさんには伝わるだろうとは思っていたけど…私は熱くなる顔を抑えた。
「あ、あの…今日朝から捜査員の方たちにもLが話していて…その、恥ずかしいんですが…」
ボソボソと言うと、彼は珍しく声を上げて笑った。
「Lはね、嬉しいんですよ。」
「そ、そうなんでしょうか…私はもう、どんな顔したらいいやら…」
ワタリさんは優しい目で私を見ている。
「私はLがあなたを特別視していたのはとっくに気づいていましたよ。本人は気づいてないようでしたが…光さん、私はとても嬉しいです。今まで彼は捜査しかしてこなかった。人としての感情が、どこか欠けてるところもあったので…あなたと出会って、彼は人間らしくなりました」
「ワタリさん…」
「きっとこれまで以上に捜査も力が入るでしょう。さ、 Lの元へ行くのでは?待っていますよ」
ワタリさんが促してくれる。
「あ、はい…ワタリさんもいかがですか?」
「せっかくの二人の時間に私が邪魔しては、Lに叱られますよ」
冗談めかしてワタリさんが言った。
「さ、私は一足先に休ませていただきます。Lが待ってますよ」
私はもらった紙袋を部屋に置くと、促されるまま部屋を出る。
優しく笑顔で見送ってくれる彼を横目に、私は捜査室へと足をはこんだ。
かちゃりと、扉を開ける。
Lはソファに座って、何かの資料を見ていた。
…待ってたのか?今まで通りですけど…1ミリも変わってませんけど…
疑問に思いながらも、声をかける。
「L、何か飲みますか」
「特にいりません。こちらへきてください」
はたと止まる。いらない、なんて言われたの初めてだった。
とは言っても私自身が何か飲みたかったので、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、それを持って Lの元へと行く。
「紅茶も、いいんですか?」
「いいです。ここへ座ってください」
言われるまま、私は隣に座る。Lは資料を読みながら言う。
「遅かったですね。来ないかと思いました」
「え、そうですか?ちょっと色々考えてて…」
「何をですか」
「…複雑な女心をですよ」
私がいうと、Lはこちらをみる。
「…嫌でしたか、捜査員に知られるのは」
「いや、とかじゃないんです、ただ恥ずかしくて…」
Lは考えるように上を見上げる。
「…私だって言うつもりなかったんですが…松田があなたを口説いてたのでつい。」
「く、口説いてないですよ…!私の仕事ぶりを評価してくれてたんじゃないですか!」
「鈍いですね。あれは口説いてました。」
キッパリとLは断言した。絶対違うのに。朝っぱらから、しかも上司の前で口説くなんてことしないでしょうに。
Lって意外と思い込み激しいのかも…
私が呆れて彼を見ていると、ぱっと、目が合う。
私はつい勢いよくそらした。
「…なぜ目をそらすんですか」
「は、恥ずかしいんですよ…!」
「今までは平気だったじゃないですか」
「今までは今まで!今日は今日!」
朝の言葉を拝借する。
ちらりとLをみると、面白そうに笑っている。絶対からかって楽しんでるな、こいつ…
「…ワタリさんにも話したんですね」
「ワタリは私の右腕ですから。とても喜んでました。こうなることを彼は予想していたようです」
感心したように言う。
「本当は街中に自慢して報告しながら歩きたいくらいです。」
「え、L…前から思ってたけど、あなたは私を買いかぶりすぎです。自慢して歩くような女じゃないです」
正直、平凡中の平凡な女だ。
秀でたところも何もない。というか、自慢するのはこちらの方だ。世界のLと付き合ってるなんて誰に言っても驚かれるだろうに。
「いいえ、あなたは自分を分かってませんね。あなたは素晴らしい人です。傷ついて生きてきたためか、人を傷つけないよう心遣いができる。」
「そ、そうでしょうか…」
「以前私が監視カメラをつける時、賛成はしてないものの私の気持ちを代弁してくれ、おかげで夜神さんも踏み切れたようでした。人に合わせるのではなく、自分の意見を言いながらその場に必要な声をくれる。」
「…えっと、嬉しいです、素直に、受け取っておきます」
面と向かってLに褒められ、恥ずかしくなる。
Lが言うほど出来た人間じゃないけど、Lから見てそう見えているのは嬉しい。ここは素直に受け取っておこう。
「捜査員もみな、あなたがいるだけで空気が和んでいるのに気づいてます。みんな感謝してますよ」
「…感謝してるのは私の方です…私に居場所をくれて、家族をくれた…」
帰る場所を失って、家族を失ってたから。そんな私に居場所がまだあったなんて、あの頃は思ってもみなかった。
私の能力を知った上で優しくしてくれる人たちに囲まれ、なんて幸せなのだろうと思う。
「…いつかキラ事件を解決させたら、あなたを連れて行きたい場所があります」
「どこですか?」
「イギリスにある私の故郷、孤児院です。私の後輩たちが沢山います」
聞いて、ぱっと私は笑顔になる。
Lの育ったところか…!
「行きたい!ぜひ行きましょ!Lの育った場所、すごく気になる!」
「英語は大丈夫ですか」
「…L、通訳お願いしますね」
ふっとLが笑う。そして、ゆっくり私の腰に手を回して抱きついた。ふわりとLの匂いがする。
私はドキドキするのを抑えるように拳をぎゅっと握る。
…正直、Lがこんな甘えるタイプの人だとは思わなかった…
「キラに負けるつもりは元々ありませんでしたが、更に負けるわけにはいかなくなりましたね」
「負けたら、許しませんよ」
「負けません。あなたを残して逝くなど絶対にしません」
私は緊張しながらも、少しだけLを見た。
彼は優しい瞳で私を見ていた。至近距離で見るLの顔に顔が熱くなる。