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捜査本部であるホテルがうつされた。
私は意外と増えた荷物をまとめ、ワタリさんが運転する車へと乗り込み、新しいホテルでもまた一室与えられた。
新しい捜査本部にはモニターが運び込まれ、監視カメラの設置を待った。
早朝、私は竜崎の隣に座り呟く。
「夜神月…」
私は竜崎に手渡された資料を見ていた。今から監視する人たちのプロフィールだ。
優しそうな奥さん。可愛らしい妹。好青年の兄。
まるでテレビドラマのような、素敵な一家だ。そんな中、私は月くんという青年を見ていた。
「モテそうな子だなぁ」
整った顔立ち。頭もいいみたいだし、テニスの全国大会優勝?スポーツも出来るなんて…こりゃ凄い、どこかの少女漫画の登場人物だろうか。
「なるほどゆづきはそういう子がタイプでしたか」
隣から声が聞こえる。竜崎が、朝焼いたばかりのスコーンを食べていた。
「タイプ…?なんですかね?カッコいいとは思いますよ、多分女性受けする子だと思います」
「まあそれは私も見て分かります。」
「でもまだ17ですからね…年下だし弟って感じに見えます」
「年上がお好きなんですか」
「離れ過ぎてなければいいです」
…って、なんで私は竜崎とこんな会話をしてるのか。ちゃんとせねば。
私は改めて資料に目を落とす。
竜崎は続けた。
「今回はあなたも映像を度々見てもらうことになります、あまりお菓子作りなど無理しないでください。1週間我慢します」
「そうですね…出来る範囲にしておきます。それと竜崎、上がるのも18時では早いので、この1週間だけは私に任せてください。その分空いた時間に休憩入れますから」
「…分かりました、無理しないでください。」
「ホットミルクも、しばらくおやすみですね」
ここ最近すっかり習慣づいていた二人のホットミルクタイム。監視が始まれば、夜通し見なければならないし、捜査員の方々も出入りする。まったりホットミルクを飲んでる暇はない。
ちょっと残念に思う。竜崎と距離をつめれたような気がする、貴重な時間だったから。
私たちがソファで話していると、背後で誰かが入ってきた。
「おはようございますー、あーさむっ」
「宇生田さん、おはようございます」
私は立ち上がって、宇生田さんへ挨拶をする。
「相変わらず早いですね、ゆづきさん」
「宇生田さんも。温かいコーヒーいかがですか?」
「ではもらいます」
私はキッチンへ向かい、マグカップを取り出す。
宇生田さんが、テーブルにどんと置かれたスコーンを見ていた。
「あ、さっき焼き上がったんです。よければどうぞ。甘さ控えめのものもありますよ」
竜崎用にチョコレート、他の方向けに抹茶とブルーベリーを焼いていた。
「一個貰おうかな。いい匂いです」
宇生田さんが笑顔で一つ手に取り、かじりついた。
「うん、美味しい。ゆづきさん、いつも美味しいものありがとうございます」
「いえ、これくらいしか出来ることないので…」
「いや、こういうの大事ですよ。作業の効率化変わりますからね!」
白い歯を出して笑う。私もつられて、笑顔になった。
「…今日、カメラが取り付けられるんですよね」
トーンダウンして、彼がいう。
「はい、ワタリさんが行くようで…そしたら、監視開始ですね。
山手線には、今のところ夜神家たちは映ってないんですよね?」
「ええ、今のところまだ…。ふう、気が重いな」
緊張した面持ちで、スーツの襟を正す。
「…7日間。つらいと思いますが、頑張りましょう」
「ええ。ゆづきさんも、やること増えますから、無理しないように」
誰かを盗撮する。それをみる。
そんな事、普通の精神力では出来ないだろう。
けれど私たちはやらなくてはならない。キラに、近づくために。
「ゆづき、紅茶をお願いします」
離れたところから、竜崎の声が聞こえた。
…この人は、緊張してるのかどうか分からないけど…
私は呆れながら、竜崎の分のお湯も沸かし始めた。
「夜神 月…
カメラを付けた者からの報告では、彼は自分の留守中
部屋に誰か入ってないかチェックしています」
あらゆる角度から見える月くんの映像。
彼はきままに、ベッドに横になったり座ったりしている。
しばらくして部屋から出ると、彼は紙切れをドアに挟んだ。
…なるほど、もし誰かが部屋に入れば、あの紙でわかる、と。
私は用意したコーヒーとクッキーを、二人の前に置いて行く。
「た、確かに…あそこまで気にしているとは…
部屋に何か見られたくない物でもあるのか?」
「17歳という事を考えたらそんなに怪しむ事ではありません。
私も意味なくやった事があります。」
…あるんだ。男の子はあるあるなのだろうか、それとも月くんと竜崎が似ているのか。
まあ、思春期だし分からなくもないが。
竜崎は早速クッキーに手を伸ばす。
「ゆづき、美味しいです。ですが無理しなくていいですよ」
「ありがとうございます。朝大量に焼いたので…クッキーは量産しやすいんですよ、比較的簡単だし」
「そうですか。」
夜神さんはクッキーに手をつける事なく、すでにどこかやつれたような顔で座っている。無理もない、家族が容疑者で監視などと。
私は夜神さんの前に、そっとラップのかかったサンドイッチを置いた。彼は目を丸くして見る。
「…ゆづき、これは…」
「食事どころじゃない気持ちは分かりますが、少しでも食べないと体を壊しますよ。食べられるときにでもつまんでください。夜神さんは竜崎と違って甘いものそんなに食べないと思うので…」
モニターから目を離さず食べやすいものとは種類も知れている。
野菜とタンパク質も取れるものとなれば、必然的にサンドイッチだ。夜神さんは少しだけ微笑んだ。
「君は…本当に気が効く。ありがとう」
「いいえ、無理なさらず…」
どんな思いで今、子供たちの生活を見ているんだろう。子供がいない私には想像しきれない。
しばらくし、月くんが帰ってくる。本屋の袋を持っている。
なんとなく私はその場で、映像を見続けていた。
すると彼が取り出したのはーーー
「………」
気まずい。
「あ…あの真面目な息子があんな雑誌を…」
夜神さんが信じられない、といったように呟く。
早く立ち去ればよかった。
月くんは女性のグラビア雑誌のページを黙々とめくる。
「17歳だと、普通、じゃないですか?ね?竜崎?」
黙ってるのもなんだかなと思った私は、焦って竜崎に話を振る。
「年齢を考えれば普通です。ですが…私には…
「『部屋に誰か入ってないか確かめてたのは
こういう本があるからです』と言い訳してる様に見えるんです…」
うっと、夜神さんが竜崎を睨む。
竜崎が言うに、キラに最も似た人物像は夜神月くんだと言う。
学生であることや、正義感が強い、頭がいいことなど…
しかし、夜神さんの前でだけでも、そんな発言はしない方がよいと思うのだが、彼はそんなことは気にしない。
私はなんとなくその空気に耐えられなくて、モニター室をあとにしようと背を向けた。必要があれば、私を呼んでくれるだろう。
そのとき、目の前にある映像が浮かぶ。
…ん?んんん???
つい、意味もなく振り返った。
久しぶりに予知が来たのだけれど、ええと…
私は理解に苦しんだ。白昼夢かな?
それは、竜崎が大勢の人に紛れ、テストのようなものを受けている映像だった。
竜崎のみ膝を抱えて座っていて、めちゃくちゃ浮いている。
…なんだ、今見えたものは??
私は竜崎に言おうとしたのだが、緊急性のない予知な気がするし、今はモニターに夢中だ。私はまた今度言おうと思い、そのままモニター室を後にした。
モニター室を出た後も、さっきの映像が気になって考える。
周りは若い子だらけだった。
あれ、そういえば、月くんっぽい子が映ってたような気も…?
『ゆづきさん今いいですか?』
ポケットに入っていたトランシーバーから声が聞こえる。すぐに私の呼び出しができるよう、竜崎が用意してくれたものだ。
声は、北村家の監視をしてる相沢さんと模木さんからだった。
おそらく、女性が入浴かトイレなのだろう。
「すぐ行きます」
私はそう答え、もう一方のモニター室へ急いだのだった。