烏野男子排球部
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「あっという間に金曜日な…」
飛雄君と日向君が問題を起こしてから数日後。あっという間に部活の時間。試合、明日だぞ。飛雄君と日向君は大丈夫なのか。そう言えば龍はこの数日間、飛雄君と日向君に練習場所と道具を貸してやるため朝練が始まる2時間前の5時に学校に来て体育館の鍵を開けてやってるんだっけか。私も手伝ってあげたかったんだけどそんなに早く起きれない。5時とかまだ寝てる。ごめんよ、飛雄君。てか他の1年っていつ来るんだ。
「蜜景」
「はい」
大地先輩に呼ばれて振り返るとそこには見知らぬ長身の男子が二人立っていた。一人は眼鏡をかけた飛雄君より大きな子。もう一人はその子の隣になっているせいか小さく見えるがなかなか長身のそばかすの子。あ、他の1年ってこの子達か。
「今日から入部する月島と山口だ」
眼鏡の長身の子が月島君、そばかすの子が山口君というらしい。月島君が大きいから小さく見えるけど山口君も大きいな。二人を見ていると二人は「よろしくお願いします」と言って挨拶をしてくれた。
「2年マネージャーの緋蜂です。こちらこそ、これからよろしく」
「土曜にある3対3なんだけど、月島達の方には蜜景が出るから」
大地先輩のいう事に素直にはいと返事をする二人。あれ?案外、普通だな。普通はここで「なんでマネージャーが試合に出るんですか?」って聞くところだと思うんだけどな。いや、でも問題児じゃなくてよかった。そんなことを思っていると大地先輩は「土曜の打ち合わせとかするならしといていいからな」と言い残し、孝支先輩の方に行ってしまった。
「緋蜂先輩って北川第一の〝蜂鳥〟ですか?」
「!…」
急に月島君に名前を呼ばれ、出身中学と中学の時に短い間だけついた異名を言い当てられた。私はぱちくりと瞬きしてから口を開く。
「珍しいな、その名前を知ってるなんて」
「知らない人の方が少ないんじゃないですか?有名ですよ、緋蜂先輩」
そう言って胡散臭く笑う月島君。あ、この笑い方私の苦手な人の笑い方と似てる気がする。いや、でもあの人はもっとうざい感じだから似てはないか。
「ツッキーは先輩と話せて嬉しいんですよ」
「へ?」
「黙れ、山口」
「ごめんツッキー!!」
ああ、ツッキーっていうのは月島君の事か。成程、わかりやすいあだ名だ。山口君はネーミングセンスがある。でも多分、私が月島君の名前をそう呼んだら怒られるんだろうな。とりあえず、部活が終わる前に土曜日の試合について話をしておこう。
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「ね、蜜景ちゃん」
「はい。何ですか?」
部活が終わり、孝支先輩に呼ばれて振り向くと「影山って中学ん時より大人しくないか?」と聞かれた。私は一瞬、〝あの時〟のことが頭に過ぎった。でもここで話すことでもない為、誤魔化しておくことにした。
「…そうですか?中学のままのかわいいかわいい私の後輩ですけど」
「そっか、ごめん。蜜景ちゃんに聞いたのも間違いだった」
孝支先輩って偶にトゲのある言葉を発するよな。ちょっと傷ついたよ。それよりも、明日のことが心配だ。私は先輩達にお疲れ様でしたと伝えて荷物を手に飛雄君と日向君の元へ向かった。
体育館出禁になってから、たまたま昼休みに飛雄君と会って、どこで練習してるのか聞いた。広い運動場で練習してますと彼は言ったので運動場を見渡してみる。すると外灯の光に照らされている飛雄君と日向君が居た。でも良く見ると先に帰った筈の月島君と山口君もいるではないか。もう仲良くなったのかよ。そんな呑気なことを思いながら静かに近付いて行けば全く違っていた。
「…県予選の決勝見たよ」
「─!」
手にあるボールをポンポンと投げて遊ぶ月島君の言葉に飛雄君も私も表情が固まった。違う。仲良くなってるんじゃない。月島君は飛雄君を煽りに来たんだ。だめだ、飛雄君にその話をしては。私の中で警報が鳴り続ける。こんな話やめさせなければ。
「あ〜んな自己チューなトス、よく他の連中我慢してたよね。僕ならムリ…ああ。我慢できなかったから〝ああ〟なったのか」
「……………!」
「!!」
頭で考えるより先に体が動いて、肩にかけていたカバンを地面に放り投げて、飛雄君と月島君の間に入り、月島君の胸倉を掴もうとしたであろう飛雄君の腕を掴んだ。
「!!」
「緋蜂先輩!」
突然の私の登場に驚いている日向君と山口君、そして月島君と飛雄君。あと、私がここにいる訳がわからないと言いそうな日向君。
「試合間近だからどんな感じかと思って来てみれば…来て正解だったな」
「蜜景、さん…」
弱く私の名前を呼んだ飛雄君を見上げた。少し俯いていて飛雄君の表情はよく見えない。多分、すごく悔しい表情をしてるんだと思う。私は飛雄君の腕を掴んでいる手を離した。
「これでハッキリしましたね」
「あ゙?」
「緋蜂先輩は〝王様に尽くす蜜蜂(はたらきばち)〟ってことがです」
飛雄君の事を酷く言う月島君に腹を立ててついドスの効いた声を出してしまったがそんな事はどうでもいい。月島君が急に口を開いたものだから、何を言うかと思えば私の事を飛雄君に尽くす蜂だと言う。私はその言葉に黙る。
「初めは〝蜂鳥〟なんて呼ばれてたけど、途中から〝蜜蜂〟って呼ばれはじめてましたもんね」
「ちょ!ツッキー!!…」
「そうだな、そんな名前でも呼ばれてたな。」
月島君は嫌味を混ぜてそう言ってくるが全く痛くも痒くもない。平然としていると月島君のポーカーフェイスが少し崩れた。残念だったな月島君。
「……………切り上げるぞ」
「!!?ええっ!?おいっ」
「逃げんの?〝王様〟も大した事ことないね〜。明日の試合も王様相手に勝っちゃったりして―…!?」
「!?」
そこから去ろうとする飛雄君に月島君はボールを片手でポンポンと投げて遊びながらそう言うと、日向君が月島君の後ろで跳び、長身の月島君からボールを奪った。てか今すげー跳んだけど。
「〝王様王様〟ってうるせえっ!俺も居る!!試合でその頭の上打ち抜いてやる!!」
「……は?」
急に月島君の口調が強くなり日向君は怖いと思ったのだろう、急に弱い口調になる。すると月島君も急に柔らかく笑顔を作り、たかが部活なんだから明るく楽しくほどほどにやろうと言った。
「〝たかが〟ってなんだ!!」
「そのままの意味…じゃぁ、また明日ね」
月島君と山口君は私達から背を向ける。日向君は「おいまてコラぁっ!結局お前どこのどいつだっ!!」と大声を上げた。
「…1年4組、月島蛍。今日から君らのチームメイトだよ。あ、明日は敵か。〝王様のトス〟見れるの楽しみにしてるよ。先輩もお疲れ様でーす」
「おー、お疲れー」
そう言って今度こそ私たちから背を向けて帰っていった月島君と山口君。月島君ってこういう子だったのか。人は見かけによらないな。
「なんだよすっげー感じ悪い奴!明日、絶対ブッ倒すぞ!!」
「…言われるまでもねぇよ!!」
「やっぱお前も感じ悪ーっ」
「…飛雄君」
私が飛雄君の名前を呼べば、飛雄君は返事をしてゆっくりと私の方にちゃんと振り向く。うん、ちゃんということ聞いてくれるし素直なんだけど、ちゃんとダメなものはダメって言わなきゃいけない。
「私が言いたいことわかるか?」
「何となくは…」
「…ああいうことしちゃダメだ。ホントに問題行動になって部活出来なくなるぞ?」
そう言って注意してやれば飛雄君はもっと不満そうな顔になる。多分、月島君のことが気に入らないのと、部活できなくるのが嫌だからだろう。でもわかりましたって言ってくれた。
「まあ、気持ちは分かるけどな。あれは私も腹が立ったし…。でも気をつけろよ?私はな、ちゃんとセッターしてる飛雄君が見たいんだからさ」
そう言えば飛雄君は「うっす」と返事をしてくれた。そう言えば日向君も居るのかと思い、日向君も頑張って月島君の頭の上打ち抜けよ。と言うと日向君も元気よく返事をしてくれた。
でも明日、私が月島君たちの方に入るんだよなぁ。そんなことを頭の片隅で考えた。