烏野男子排球部
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「いいのかよ大地。貴重な部員だろ。ていうか〝チーム〟とかって徐々になっていくモンだろォ」
「わかってる!が!!」
扉の外からは「おい、ちょっとどけ!!」「あたっ!何すんだよおれが話して「主将!!すみませんでした!!部活に参加「おれが先に話し「うるせぇっ!!」と言う感じで二人の言い合いが聞こえる。
「あんな状態で練習になるか。入部を拒否するわけじゃない。でも反省はしてもらう」
大地先輩がそう言うと今度は謝罪の言葉と扉を叩く音。そして「日向ともちゃんと協力します。部活に参加させてください!!」と言う飛雄君の言葉。すると大地先輩が扉を少し開けて顔を覗かせ、本音は?と聞いた。だが飛雄君は少し押し黙ってからぼそぼそと口を開いた。
「…試合で…今の日向と協力するくらいならレシーブもトスもスパイクも全部俺一人でやれればいいのにって思ってます」
「何言ってんのオマエェ!?」
「はっはっは!!何で本当に言っちゃうんだよ本音を!いいと思うよそういうの!でもさ、ボールを落としてもダメ、持ってもダメ、一人が二度続けて触るのもダメ…っていうバレーボールでどうやって一人で戦うの?」
大地先輩はそう言って笑うともう一度扉を閉めた。飛雄君、ホント馬鹿。でもそんなとこもかわいいよ。それからしばらくして先輩達は練習を始めて、練習風景を眺めた。すると急に扉が開き、その音に反応して振り返った。そこには一個上のマネージャーの潔子先輩が居た。その潔子先輩の声を聞きつけて龍が話しかけるが潔子先輩は華麗にスルー。龍はそれに喜んでいる。本当に龍って潔子先輩馬鹿。まあ、龍だけじゃなくてもう一人、潔子先輩馬鹿がいるけどな。ちらっと扉の方を見ると孝支先輩がそそくさと体育館の扉を締めていた。
「蜜景、お疲れ」
「お疲れ様です」
「外にいた子達は?」
潔子先輩は外にいる飛雄君と日向君のことを言っているのだろう。あの子達、大地先輩の話聞かなくて喧嘩始めた挙句、教頭にボールぶつけてカツラ吹っ飛ばして出禁になっちゃったんです。と潔子先輩に説明した。
「…教頭のカツラ吹っ飛ばしたの?」
「はい、すごかったです…色々と」
潔子先輩が黙り込むのでどうしたんですか?と聞いたら、「蜜景の後輩って問題児だったのね」と言われてしまい、二人でマネージャーの仕事をしながらその誤解を必死で解いた。
「〝勝負して勝ったら入れて下さい!!!〟」
「!!」
「ーとか言ってきそうじゃないスか?アイツら」
びっくりした。部活終わりに龍が急に大声出すから。確かにあの子達なら言ってきそうだ。孝支先輩が言うように、頭冷やしてちょっと反省の色でも見せればいいだけの話なんだけどな。でもあの子ら馬鹿だからそれはありえる。
「アイツらそんなに単細胞じゃないだろ」
「なあ、蜜景。あいつらどうすると思う?」
「んー、…もし本当に龍が言ったみたいになったら多分、飛雄君は自分の力だけで何とかしようとするだろうな…。昔はあんなんじゃなかったんだけどなぁ…。まあ、そんなとこもクソかわいいんだけどっ!」
答えてやったのに全く反応がなくて、龍の方を見ると龍は私の方を見ていた。「何だよ」と言うと、龍から「お前、影山のこと大好きだろ」という言葉が返ってきた。
「え、今更だな。当たり前だろ、私の自慢の後輩だし。あと…」
〝あの子だけだったからな。私のことわかってくれて懐いてくれたのわ〟と言う言葉は飲み込んだ。今はその話をしているわけじゃない。龍は不思議そうにしていたが、大地先輩が話を逸らしてくれたおかげで、追求されることはなかった。
「蜜景の言う通りだ。あいつが成長しない限り烏野は上には行けない」
「……………」
「キャプテン!!!」
大地先輩がそう言い、話終わると体育館の扉が開いた。これには龍も孝支先輩も本当に驚いたらしい。私も驚いた。
「!?何だっ!誰だっ!」
「…あれっお前らっ。ずっとそこに居たのかよ!?」
「勝負させて下さい!」
「俺たち対先輩たちとで!!」
「ちゃんと協力して戦えるって証明します!!」
孝支先輩と龍がそう言うと、二人はブツブツ言い合いながら先輩達と自分たちとで勝負させてほしいと言った。本当に単細胞だった。龍は笑ってるし、孝支先輩なんて呆れている。それより今、一番最後の一緒に言う時「せーの」っての聞こえたけど。何この子らかわいいバカワイイ。
「ビバ単細胞!!でも、俺こういう奴ら嫌いじゃないっスよ!」
「負けたら?」
「どんな罰でも受けます」
「……ふーん……丁度良いや。お前らの他に数人1年が入る予定なんだ。そいつらと3対3で試合やってもらおうか」
「でも大地先輩。一人足りないですよ?」
3対3ならどっちも一人足りない。どうするのかと思っていると、大地先輩は龍に飛雄君たちの方に入ってくれと言った。龍は「えぇっ!?俺スか!?」と嫌そうに言う。さっき「こういう奴ら嫌いじゃない」って言ったのにな、とか思っていると大地先輩が私が思ったことを言ってくれた。
「関わるのは面倒臭いです!!てかそれは蜜景に頼めばいいじゃないですか!!こいつ影山の先輩なんだし!!」
龍がそう言って私を指さす。高校上がって来てくれた後輩と直ぐにバレーできるとか幸せかよと思いながら、大地先輩。是非私が飛雄君のチームに入って試合しますよ。と言おうとすれば大地先輩は「そうか……問題児を牛耳れんのは、田中ぐらいだと思ったんだけどな……」と呟いた。
「っしょぉぉがねぇなぁぁあ!!やってやるよ!嬉しいか!?オイ!!」
え、大地先輩それはないでしょう。いや、龍の扱い方は上手いし、良くわかってらっしゃるけど。私も試合出たいです、大地先輩。
「──で、お前らが負けた時だけど、少なくとも俺たち3年が居る間、影山にはセッターはやらせない」
「……は?」
「!大地先輩っ!!」
大地先輩の言葉に飛雄君からは間抜けな声が出、私は大地先輩の名前を呼ぶ。まさか、大地先輩がそんなこと言うとは思わなかった。
「それだけっ?ですかっ?」
それだけという日向君の言葉を耳にして私は日向君に掴みかかりそうになったが、一番悔しいのは飛雄君であることを思い出し、拳をぎゅっと握った。
「単なる罰じゃないぞ。個人技で勝負挑んで負ける自己中な奴が司令塔じゃ、チームが勝てないからな」
そりゃぁ、日向君からしたら痛くも痒くもない罰だろうけど、飛雄君にとっては重すぎる罰だ。確かに飛雄君には欠点がある。でもそんなやり方あんまりだろう。他にも方法はあるはずだ。
「…どうした?別に入部を認めないって言ってる訳じゃない。お前なら他のポジションだって余裕だろ?」
「俺は!!セッターです!!!」
「─勝てばいいだろ。自分一人の力で勝てると思ったから来たんだろ。試合は土曜の午前。いいな」
孝支先輩が体育館の戸を閉めている時、飛雄君と目が合ってしまった。飛雄君の顔は心底悔しそうな顔をしていた。そんな彼にボクは何もしてあげられないのか。また何もしてやれなくなるのか。そんなのは嫌だ。先輩が後輩のために動いてやらなくてどうするんだ。
「─いいのか?田中入れて。戦力になるだろ」
「─有力な第三者がいる方があいつらが如何に連携できていないかが浮き彫りになるさ」
「……大地先輩っ!!」
孝支先輩と大地先輩が話している間に割って入り、大地先輩を見上げて大地先輩の名前を呼んだ。
「!どうした?蜜景」
「私も試合出たいです。」
「……」
「あの子達が連携出来ていないってことを分からせるんでしょう?だったら龍じゃなくて私が飛雄君と日向君のチームに…」
「だめだ」
「!!何でですかっ!私だって第三者ですよっ!?」
「お前が出たら、影山はお前にしかトスを上げなくなるだろ?」
大地先輩は少し困ったような顔をして、私にそう言った。それは考えていなかった。確かに私が飛雄君と日向君のチームに入れば飛雄君は私にしかトスを上げなくなるだろう。
「それは、そうでしょうけど…」
「…〝繋ぎ〟が命のバレーボールで〝バラバラ〟なチームは、弱い。ましてや、まだまだ力不足の日向を抱えて個人主義は致命的だ。…でもお前が入っちゃうと影山にそれを分からせるのは無理だ。お前は影山のトスも打てるし、その個人主義のまま試合に勝ちかねない。だから、だめだ」
「……わかりました。無理言ってすみません…」
クソ、私も試合に出たかった。飛雄君の力になってあげたかった。あんな顔をさせてしまった。後輩に何もしてあげれない先輩とか存在意義ないだろう。
「でも、蜜景は他の1年の方に入ってもらうからな」
「え?今、なんて…」
「だから蜜景には他の1年の方のチームに入ってもらう」
「………敵チームって…」
「ははは。…俺が入ろうと思ったけど、外から見ておきたいし。影山と久しぶりに試合したかったんだろ?どんな形であれ、やってくれないか?」
「……なんか、不服です…」
「そう言うな。これは影山の為だ。だから頼むよ蜜景」
「飛雄君の為……わかりました!!」
今きっと孝支先輩と龍は蜜景(ちゃん)ってホント簡単な(子)奴と思った事だろう。私自身も思ったさ。でも飛雄君の為と聞いたら飛雄君の為にって思うだろう。私は当然のことをしているのだ。頑張ろう。