青葉城西 練習試合
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青葉城西高校との練習試合当日。ホント綺麗だよな、ここの校舎。学校見学でここに来た時は「さすが、私立」とか思ってたっけか。そう言えば、日向君はもう大丈夫だろうか。さっき思い切り龍のズボンの上にリバースしてたけど。いや、大丈夫じゃないか。大丈夫だったら吐くまでにならない。しかも大地先輩が匂いに殺られて貰いゲロしそうになったりしてたしな。てか何日か前から日向君調子悪そうにしてたなぁ。まあ、でも日向君がリバースした先が龍のズボンの上で良かった。うん、良くは無いけどな。
「蜜景」
「はい、何ですか?」
「田中達は?」
大地先輩にそう言われて周りを見渡す。だが龍、月島君、山口君、飛雄君の四人が見当たらなかった。居なくなっている。
「…………消えましたね」
「はあ…あいつら勝手に…」
私がそう言った瞬間、大地先輩は大きなため息をついた。すみません、大地先輩。私がちゃんと見張っとけば。とりあえず潔子先輩にはドリンクとかを作ってもらい、ここの地形をまだ知っている私が大地先輩達と龍達を探す。
「あ、居た」
「蜜景!」
龍達は案外直ぐに見つけることができた。龍達は私のことに気がつく。何してるのかと思って四人に近寄ると耳を疑う事が聞こえてきた。
「昔は強かったか知らんけど、烏野つったらマネが美人ってことしか覚えてないし」
「マジすか!?」
「そーなのよ!ちょっとエロい感じでさ〜」
それは潔子先輩の事だ。てかよその学校の連中はそういうことばっかり頭にあるんだな。次から潔子先輩の周り気持ちガード強めとくか。そんなことを考えていると、もう一つ耳を疑いそうになる言葉が聞こえてきた。
「あともう一人マネ居るんだけどその子も可愛いんだよ。ただ、その子いっつも眠そうな顔しててよぉ。お頭弱そうだったな〜」
「眠そうな顔…」
眠そうな顔。それは私の事か。まあ、それはいいよ。私も否定はしないから。だが待て、私は可愛くない。そしてもう一つ言いたいことがある。てか、このもう一人の声知ってる、忘れもしない。
「あ、そういやガラの悪い奴も居たなぁ。ボーズで目つき悪くてさ〜、そいつも頭悪そうなー…」
「!?」
そう言っている人の前に顔を出した龍を見て、あーあと思った。やっぱりコソコソ言うのはダメだよな。本人が聞いてるかもしれないし。「あっ、えーっと…」って言いながら何とか誤魔化そうとしている青城の選手だがもう無理だろ。すると月島君や飛雄君が龍の後ろに立って、龍が口を開いた。
「…うち(烏野)を…あんまナメてっと…喰い散らかすぞ。」
〝喰い散らかす〟と言った時、ちょうどその辺でちらほら居たカラスが「ア゙ーッ」と一つ鳴き、飛び上がった。そして恐らくどこからかとってきた菓子パンの袋を喰わえていた。多分、今から食べるんだと思う。
「そんな威嚇しちゃダメですよ〜、田中さ〜ん」
「?」
「ほらぁ、〝エリートの方々〟がびっくりしちゃって可哀想じゃないですかあ」
「べっ別にビビってねえよっ!」
「おう、そうだな。イジめんのは試合中だけにしてやんねーとな」
龍に続いて月島君まで青城の選手達に絡み、そして煽る。おいおい、君らいい加減にしなさいよ。てか仲良いな。この前の3対3での仲の悪さなんてなかったみたいだ。いや、別に仲悪くはなかったのか。校舎の影でそう思いながらやめさせようと思い後ろから彼らに声をかけた。
「はい。君らその辺にしとけよー」
「!!…緋蜂、先輩…」
そう呼んだのは私の中学の時の後輩。飛雄君のチームメイトだった金田一だった。うん、やっぱりそうだった。君は変わってないね。相変わらず長いわ、縦に。
「おー。久しぶりぃ、金田一ぃ」
「…緋蜂、先輩は…烏野に行ったんですね」
「……………。」
よく言うよ。そう思いながら白々しく言う金田一を目を細めて見詰めた。あー、そういう感じで来るんだ。ふーん。なるほど。君らがそうさせたんだろ。とは言えないから、私もそれに乗っかってやるよ。
「ああ。そうだよ。私みたいな奴が先輩である事が不服である後輩の君達はそれはそれはさぞかし……安心しただろう。〝ボク〟が別の学校に行ってくれて。」
「っ!」
あーあ、そんな顔しちゃって。驚くこと無いだろうに。二年も私と同じ部活に居たんだからよ。って、違う違う。別にこんな事言いにここに来たんじゃないんだ。
「それより、君ら勝手に…?」
龍達にそう言おうと振り返って四人の顔を見ると言葉をつまらせてしまった。龍と飛雄君は何かに怒っているような、月島君は睨んでいるように見え、山口君は少し怯えたような表情に見えた。山口君のは多分私に向けてる顔だが、他の三人は違う様で。じゃぁ、誰にだと思いながら声をかけようとした時、大地先輩が来てくれた。
「あっ、お前らっちょっと目ぇ離したスキにっ」
良かった私の仕事減った。大地先輩は「失礼しましたっ」と言って頭を下げるついでに龍の頭も同じく下げさせる。
「あっ、イエ…」
「ホラ、ウロウロすんなっ。田中その顔ヤメロ!!」
威嚇し続ける龍に私は溜息を吐く。やっぱりここに来るんじゃなかったか、とも思ったが飛雄君がここに来てるから、私も頑張ろうと思えた。するととんでもない言葉が飛込んできた。
「…………久しぶりじゃねーの、王様」
「!…」
金田一が飛雄君に言ったのだ。またあの時の様に〝王様〟と。私の頭に血が上っていくのがわかる。でも他校と問題を起こせば部活動活動停止にもなり兼ねない。
「そっちでどんな独裁政権敷いてのか楽しみにしてるわ」
何とか落ち着かせようとするが、更に金田一が更にそう続け、もう爆発しそうになった時だった。
「………………、………ああ。」
金田一に嫌味を言われているのに飛雄君は素直に、むしろ開き直るように肯定した。私はその飛雄君の様子に驚きを隠せない。いつもならここで機嫌が悪くなるのにそんな素振りは一切無い。こっちに歩いて来る飛雄君の背中を孝支先輩と龍がバシンッと叩くが、本人は何故叩かれたのかわかってないみたいだった。飛雄君、成長したね。別に怒ってるとかじゃないんだよ。あ、これだけは言っておこうと、私は先輩たちに着いて行く足を止めて顔だけ金田一たちに向けた。
「そうそう、金田一。その人にちゃんと教えておけよ。ボクのお頭が……本当に弱いかどうか、な。」
私のその言葉に金田一の隣に立っている人はまた顔を青くしていたし、金田一は私を睨んでいた。うん、睨まれても怖くない。私は何もなかったかの様に足をまた動かし、先輩たちのあとを追った。すると月島君が足を止めてこっちを見ていた。なんで止まってこっち見てるんだ、月島君は。一応周りに誰もいないか確認して歩いて行くと彼に話しかけられた。
「緋蜂先輩」
「どうした?」
「何話してたのか知りませんけど…開いてますよ、瞳孔…」
「あ、やっぱり?」
自分の目を指さして瞳孔が開いていることを教えてくれた月島君の言葉を聞き返す。瞳孔開いてるとか久しぶりに言われたな。最後に言われたのいつだっけ。あ、中学校の時だ。
「まあ…これはしょうがないよ。それより早く体育館行こうか」
「…はい」
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「挨拶!!」
「お願いしあーす!!!」
「でっ…でかいっ…!体育館もっ…人もっ…!」
大きな体育館と身長のある城西の選手たちを見て、日向君が声を上げる。日向君が驚くのも無理ないよな。うちの体育館はコート一面しかないもんな。ここの体育館はコート二面はあるぞ。大地先輩と孝支先輩がここはブロック強力で有名だと言う話をしていると龍が「それ引っ掻き回す為の日向じゃないですか〜!」と言い、日向君に話を振るが彼の顔は強ばっていた。
「まあ、お前がへたくそなのはわかってっから、カバーは任せろ!」
「でもサーブのカバーは無理だよ。打つ時は一人だしな。挙句、サーブミスは即失点だし」
龍の言葉に少しだけ落ち着いた様な顔になる日向君だったが私の言葉でまた顔が強ばる。おいおい、冗談に決まってるだろ。 すると孝支先輩に「蜜景ちゃん!一言余計!」とまた怒られてしまった。
「日向君、冗談だからな。サーブミスしても大した点にはならないし、君はいつも通り何も心配しないで跳べば…って、日向君どこ行った?」
「トイレ行きました…」
「またかよ!!」
気が付けば居なくなっている日向君はトイレに行ったと言うじゃないか。何度もトイレに行く日向君にまたかよとツッコミを入れる龍。てか、人の話は最後まで聞こうや、日向君。独り言みたいになったじゃないかよ。なんか恥ずかしいんだけど。
「あ、一先輩!」
「おお、蜜景」
烏野側のベンチに向かう途中で中学の時の先輩である岩泉一先輩がいた。一先輩に挨拶をすると、「元気そうだな」と言われた。それはそうでしょうね。と思いながら私は「あの人がいないので元気です」と笑顔で答える。一先輩も笑ってそれもそうだなと言ってくれた。
「まあ、今日はよろしくな蜜景」
「はい。こちらこそよろしくお願いします」
それから烏野のベンチに向かいドリンク等の用意に取り掛かる。すると、力に「中学の先輩?」と聞かれた。その言葉に頷いて「頼りになる先輩だよ」と言った。一先輩は本当に頼りになる先輩だった。今でも頼りになるけど。
その後、トイレに日向君を迎えに行った龍と帰って来た日向君の緊張はやはり取れていなかった。もう試合が始まる。多分、この緊張が取れないまま試合に出る羽目になるんだろうな、日向君。
「日向!緊張しなくて大丈夫だから、リラックス!」
「ハイッ!リラックスがんばりますっ!!」
大地先輩が日向君に声をかけるが逆にプレッシャーを感じてるみたいだった。すると大地先輩が潔子先輩にコソっと何かを言う。成程。でも大地先輩、多分、ダメですそれ。うん、多分じゃない。絶対。
「…ねェ、ちょっと」
「?」
「…期待してる」
潔子先輩に肩をぽんと叩かれて、日向がボンッと爆発した。ほら、大地先輩。私の思った通りになったよ。そりゃあ爆発するだろうよ。潔子先輩にやられたら誰だってな。逆にもっとプレッシャーかかっただろうよ。
「大地先輩、鬼ですか」
「な!違う!いや、確かに日向には悪いことしたと思うけど…。あ、蜜景もなんか声かけてやってくれよ、な?」
「…いいんですか大地先輩。私、また余計な事を言っちゃうかもしれませんよ?」
「あ…うん。やっぱりいいわ、すまん」
「え、それはどう言う意味で謝ったんですか」