君への気持ち
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「……あ」
太陽が西に傾き、空が橙に染まっていく中。
正門前に伸びる影にふと足を止める。
その影の主は、ダルそうに柱に寄りかかり、スマホをいじっている。
部活終わりの生徒たちがまばらに門を潜っていくのを、影の主――福士はチラリを見遣りながら、画面に視線を落としている。
まるで誰かを待っているようだ。
……その”誰か”に心当たりがありすぎて、一気に心が萎んでいく。
クラスメイトの虹野さん。
最近よく話してるみたいだったから、休み時間に軽い気持ちで「もしかして付き合ってんの?」なんてからかい交じりに聞いてみたのが駄目だった。
ドヤ顏で「まぁな」なんて返されると思わなくて、一瞬で後悔した。
え!マジで!?良かったじゃん!なんて思ってもいないことをまくし立てるように言って、トイレに駆け込んで泣いた。
だって、あの福士が。
彼女ほしいほしい言ってるくせに、誰とも付き合ってこなかった福士が。
実は努力家で面白くていいヤツだってこと知ってるのは私だけじゃない。
ひそかにモテるのに、誰かと付き合う素振りなんて見せたことなかったのに。
きっと、福士は虹野さんのことが好きだったんだろうな。
彼女はスポーツ万能で明るくてそのうえ可愛くて、誰からも好かれるタイプだから。
だからこうやって福士は、今日もバスケ部の助っ人に駆り出された彼女の帰りを待ってるんだ。
きっと昨日も一昨日も、こうやって待ち合わせて、一緒に帰って……。
想像すると心臓がぎゅっと握られたような息苦しさが走る。
踵を返して、私は校舎に向かって速足で歩き出した。
このまま福士と目が合ってしまったら、声を聞いてしまったら、自分の中の何かが溢れ出して止まらなくなりそうで怖かった。
普段から長く感じる、校舎へと伸びる林道。
今日はやけに遠く感じる。
早く校舎に入って身を隠したい。
そして、今日渡せなかったチョコレートを、せめて福士の机の中に忍ばせたい。
彼女がいても、少なからず想ってるやつがいるって知っていてほしい。
それでこの気持ちに区切りをつけ――
「ちょい待ち!」
ビクッ!と自分でも分かるくらい肩が跳ねた。
その肩に乗る温かい感触。
この声。
身体が硬直したように固まる。
「えっ、ふ、福士?……なに?」
震えそうになる声をどうにか軌道修正する。
だけど振り向けない。
顔を見てしまったら、きっと溢れてしまう。
「どこ行くんだよ」
「え、っと……教室に忘れ物しちゃって」
「あぁ」
じゃあここで待ってる。
そんな科白が続いたものだから、思わず振り返ってしまう。
「え?なんで?」
「なんで、って……」
「虹野さんのこと待ってたんだよね?」
「あ?」
私の言葉に一瞬クエスチョンマークを浮かべたあと、得心いったように項垂れはじめる。
額を抑えて呻いてる福士に、今度は私が困惑する。
なに、何なの?
「……そうだ、って言ったらお前はくれないんだろ」
「え、何を?」
「そのカバンに入ってるヤツだよ」
そう言って私のカバンを指さしてくる福士の表情は、眉を吊り上げてどこか不機嫌そうだ。
もしかしてもしかしなくても、チョコレートのこと言ってるんだろう。
「なっ……え、だって虹野さんから貰ったんでしょ?私のなんていらないじゃん」
まさか福士からチョコレートを催促されるとは思ってもみなかった。
驚きと困惑で思考がこんがらがって、感傷に浸る間もない。
「そもそも今日チョコなんて持ってきてないし」
「へぇ。だったらちょっとカバンのなか見せてくれよ」
「なっ!何でそこまでしなきゃいけないのよ」
確かに今も入っている。
福士に渡したかったチョコレートの箱が。
でも行き場をなくしたそれを明るみにされるのは、惨めになるから嫌だ。
「彼女から貰えたなら充分でしょ!」
「帰り際にカバンの中から見えたんだよ。いかにもチョコレートですって箱。あるんだろ?」
「もう!あったとしてもなんでアンタにあげなきゃいけないの」
ちょっと口角上げて、からかってる感じなのがむかつく。
彼女いるくせに。
私からのチョコレートが欲しいなんて何考えてるんだろう。
怒りと困惑と惨めさで、さっきとは真逆の涙が溢れそうになってくる。
鼻の奥のツンとくる感覚をどうにかやり過ごそうと俯いてると、今度は随分低いトーンの言葉が落ちてきた。
「もしかして他のヤツにやったとか?」
見上げると、追い詰められた試合の時に見る、鋭い眼差しが私に向けられていた。
どうしてそんなこと言うんだろう。
どうして私にそんな、怒ったような、傷ついたような表情を向けるんだろう。
分からなくて、私は頭をふるふると振った。
「あげてないよ……誰にも」
「だ、だよな」
目に見えて安堵の表情を浮かべる福士の、考えてることが分からない。
……これじゃあまるで、私のことが好きみたいじゃないか。
そんな都合のいい思考を繰り広げそうになって、すぐに振り払う。
余計に惨めになるだけだ。
本当は、名乗らずにチョコを机に忍ばせてこの想いに区切りをつけるつもりだった。
けどこうなった以上、仕方がない。
腹を括って、カバンの中から昨夜ラッピングしたチョコレートの箱を取り出す。
中身は手作りのガトーショコラだ。
「もう。はい、これ。……しつこいからあげる」
差し出した赤い箱を福士はじっと見つめて、また口角を上げた。
「な……なに?」
「手作りっぽいなぁと思って」
「そ、そうだけど。あ、でも虹野さんに悪いし食べなくてもいいよ」
こんな見るからに本気のチョコだ。
彼女がいる人に渡すものじゃないけれど、貰ってくれるだけでもいい。
それだけでこの想いを少しは昇華できる。
「いや、ありがたく食うけどさ……はぁ~……」
そう言って取った箱を手に、突然盛大にため息をついた福士が続けてこんなことを言い放った。
「てかさぁ、なんっっっでこんなウソ信じるわけ?」
「え?」
嘘と言われて目が点になる。
何が嘘なんだろう。
この一連のチョコレートにまつわるやり取りだろうか。
私はやっぱりからかわれただけ?
そんな酷いことするヤツだと思いたくないけど――
一瞬で駆け巡ったそんな思考を断ち切るように、福士が言葉を畳み掛けてくる。
「彼女ほしいけどさぁ、俺だって誰でもいいわけじゃないんだぜ?初彼女はやっぱ好きなコがいいし。
虹野とは最近よく話してたけど、別に好きとかねぇし。いや可愛いけど。そもそも佐々木が好きっつうんで協力してやってただけだし。
お前がまさかあんなウソ信じると思ってなかったよ。虹野と俺が付き合うわけねぇだろ!
お前なぁ、そこはおめでとうじゃなくて否定してくれよ!ツッコめよ!!からかった俺が悪者みたいじゃねぇか!」
猛烈な勢いで言われて、頭が追い付かない。
え?え?と混乱状態でいると、右肩をがしっと掴まれて。
「だからつまり――、俺はお前が好きだ」
夕日を背に向けられる、真剣な眼差しが眩しい。
オレンジ色の光のせいか少し赤く見える顏。
その言葉たちが意味をもって一身に降りかかってきた時、抑えていた想いがどっと溢れ出した。
同時にまた鼻の奥がツンとしてきて、目頭が熱くなる。
「ウソ……」
「ウソじゃねぇって。本気と書いてマジだ」
「つ、付き合ってないの?本当に?」
「だってお前と付き合いたいのに、なんで他の子と付き合わなきゃいけないんだっつぅの」
「……バカ……」
なんなのよ、それ。
分かるわけじゃないじゃん、普通に騙されるよ。
バカ、馬鹿、ばか福士。
言いたいことも文句もたくさんあるのに、喉が詰まってうまく出てこない。
俯いたらぽたっと地面に染みができた。
一度溢れたそれはとめどなく流れて、止められそうにない。
諦めようと思ってたのに。
今まで見てきたさまざまな表情や姿が脳裏を駆け巡って。
福士がどうしようもないほど好きだって想いが全身に広がっていく。
「!?オイ泣いてんのかっ?悪かったよ……」
「だって……うれし、くて」
「……!」
息を呑むような音がした後、福士の匂いがいっぱいに広がった。
眩しい夕日のオレンジ色から、視界は黒に染まった。
抱きしめられたと認識した途端、恥ずかしさで涙が引っ込みそうになる。
「それは……オッケーってことだよな?」
「……チョコ、本命だし」
そう返すと、福士の腕の力が強まって、ますます身体が密着する。
どくどくと鳴っている心臓の音に呼応するように、私の心臓も大きく鳴っていく。
福士の身体は見た目よりも大きくて、肩ががっしりしてて……何というか、言葉通りすっぽり包み込まれているようだ。
恥ずかしいけど幸せで、しばらくこうしていたいなぁなんて思いながら肩越しにちらりと瞳を開けると、林の奥で見覚えのある顏を発見。
あの人たちは間違いない、元テニス部のレギュラーメンバー。
ニヤニヤしながら私たちの様子を見守っている。
そういえばここは校舎と校門を繋ぐ林道の真っ只中だ。
下校する生徒が通るこんな場所で一体何やってるんだろうと、羞恥でさらに顔が熱くなる。
だけど――もうほんの少しだけこの幸せに浸っていたくて、ぎゅっと福士の身体を抱きしめ返した。
きっとこの後バラしたら、福士元部長の怒号が飛ぶんだろうな。
翻弄されたんだから、このくらいの仕返しは許してよね。
動揺して赤くなる福士の顔を想像して、ふふっと胸の中で静かに笑った。
Happy Valentine !
2023.2.15
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去年書いた話と似たり寄ったりな展開になってしまった…
うーん力量不足。もっと引き出し増やさなきゃなぁ。
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太陽が西に傾き、空が橙に染まっていく中。
正門前に伸びる影にふと足を止める。
その影の主は、ダルそうに柱に寄りかかり、スマホをいじっている。
部活終わりの生徒たちがまばらに門を潜っていくのを、影の主――福士はチラリを見遣りながら、画面に視線を落としている。
まるで誰かを待っているようだ。
……その”誰か”に心当たりがありすぎて、一気に心が萎んでいく。
クラスメイトの虹野さん。
最近よく話してるみたいだったから、休み時間に軽い気持ちで「もしかして付き合ってんの?」なんてからかい交じりに聞いてみたのが駄目だった。
ドヤ顏で「まぁな」なんて返されると思わなくて、一瞬で後悔した。
え!マジで!?良かったじゃん!なんて思ってもいないことをまくし立てるように言って、トイレに駆け込んで泣いた。
だって、あの福士が。
彼女ほしいほしい言ってるくせに、誰とも付き合ってこなかった福士が。
実は努力家で面白くていいヤツだってこと知ってるのは私だけじゃない。
ひそかにモテるのに、誰かと付き合う素振りなんて見せたことなかったのに。
きっと、福士は虹野さんのことが好きだったんだろうな。
彼女はスポーツ万能で明るくてそのうえ可愛くて、誰からも好かれるタイプだから。
だからこうやって福士は、今日もバスケ部の助っ人に駆り出された彼女の帰りを待ってるんだ。
きっと昨日も一昨日も、こうやって待ち合わせて、一緒に帰って……。
想像すると心臓がぎゅっと握られたような息苦しさが走る。
踵を返して、私は校舎に向かって速足で歩き出した。
このまま福士と目が合ってしまったら、声を聞いてしまったら、自分の中の何かが溢れ出して止まらなくなりそうで怖かった。
普段から長く感じる、校舎へと伸びる林道。
今日はやけに遠く感じる。
早く校舎に入って身を隠したい。
そして、今日渡せなかったチョコレートを、せめて福士の机の中に忍ばせたい。
彼女がいても、少なからず想ってるやつがいるって知っていてほしい。
それでこの気持ちに区切りをつけ――
「ちょい待ち!」
ビクッ!と自分でも分かるくらい肩が跳ねた。
その肩に乗る温かい感触。
この声。
身体が硬直したように固まる。
「えっ、ふ、福士?……なに?」
震えそうになる声をどうにか軌道修正する。
だけど振り向けない。
顔を見てしまったら、きっと溢れてしまう。
「どこ行くんだよ」
「え、っと……教室に忘れ物しちゃって」
「あぁ」
じゃあここで待ってる。
そんな科白が続いたものだから、思わず振り返ってしまう。
「え?なんで?」
「なんで、って……」
「虹野さんのこと待ってたんだよね?」
「あ?」
私の言葉に一瞬クエスチョンマークを浮かべたあと、得心いったように項垂れはじめる。
額を抑えて呻いてる福士に、今度は私が困惑する。
なに、何なの?
「……そうだ、って言ったらお前はくれないんだろ」
「え、何を?」
「そのカバンに入ってるヤツだよ」
そう言って私のカバンを指さしてくる福士の表情は、眉を吊り上げてどこか不機嫌そうだ。
もしかしてもしかしなくても、チョコレートのこと言ってるんだろう。
「なっ……え、だって虹野さんから貰ったんでしょ?私のなんていらないじゃん」
まさか福士からチョコレートを催促されるとは思ってもみなかった。
驚きと困惑で思考がこんがらがって、感傷に浸る間もない。
「そもそも今日チョコなんて持ってきてないし」
「へぇ。だったらちょっとカバンのなか見せてくれよ」
「なっ!何でそこまでしなきゃいけないのよ」
確かに今も入っている。
福士に渡したかったチョコレートの箱が。
でも行き場をなくしたそれを明るみにされるのは、惨めになるから嫌だ。
「彼女から貰えたなら充分でしょ!」
「帰り際にカバンの中から見えたんだよ。いかにもチョコレートですって箱。あるんだろ?」
「もう!あったとしてもなんでアンタにあげなきゃいけないの」
ちょっと口角上げて、からかってる感じなのがむかつく。
彼女いるくせに。
私からのチョコレートが欲しいなんて何考えてるんだろう。
怒りと困惑と惨めさで、さっきとは真逆の涙が溢れそうになってくる。
鼻の奥のツンとくる感覚をどうにかやり過ごそうと俯いてると、今度は随分低いトーンの言葉が落ちてきた。
「もしかして他のヤツにやったとか?」
見上げると、追い詰められた試合の時に見る、鋭い眼差しが私に向けられていた。
どうしてそんなこと言うんだろう。
どうして私にそんな、怒ったような、傷ついたような表情を向けるんだろう。
分からなくて、私は頭をふるふると振った。
「あげてないよ……誰にも」
「だ、だよな」
目に見えて安堵の表情を浮かべる福士の、考えてることが分からない。
……これじゃあまるで、私のことが好きみたいじゃないか。
そんな都合のいい思考を繰り広げそうになって、すぐに振り払う。
余計に惨めになるだけだ。
本当は、名乗らずにチョコを机に忍ばせてこの想いに区切りをつけるつもりだった。
けどこうなった以上、仕方がない。
腹を括って、カバンの中から昨夜ラッピングしたチョコレートの箱を取り出す。
中身は手作りのガトーショコラだ。
「もう。はい、これ。……しつこいからあげる」
差し出した赤い箱を福士はじっと見つめて、また口角を上げた。
「な……なに?」
「手作りっぽいなぁと思って」
「そ、そうだけど。あ、でも虹野さんに悪いし食べなくてもいいよ」
こんな見るからに本気のチョコだ。
彼女がいる人に渡すものじゃないけれど、貰ってくれるだけでもいい。
それだけでこの想いを少しは昇華できる。
「いや、ありがたく食うけどさ……はぁ~……」
そう言って取った箱を手に、突然盛大にため息をついた福士が続けてこんなことを言い放った。
「てかさぁ、なんっっっでこんなウソ信じるわけ?」
「え?」
嘘と言われて目が点になる。
何が嘘なんだろう。
この一連のチョコレートにまつわるやり取りだろうか。
私はやっぱりからかわれただけ?
そんな酷いことするヤツだと思いたくないけど――
一瞬で駆け巡ったそんな思考を断ち切るように、福士が言葉を畳み掛けてくる。
「彼女ほしいけどさぁ、俺だって誰でもいいわけじゃないんだぜ?初彼女はやっぱ好きなコがいいし。
虹野とは最近よく話してたけど、別に好きとかねぇし。いや可愛いけど。そもそも佐々木が好きっつうんで協力してやってただけだし。
お前がまさかあんなウソ信じると思ってなかったよ。虹野と俺が付き合うわけねぇだろ!
お前なぁ、そこはおめでとうじゃなくて否定してくれよ!ツッコめよ!!からかった俺が悪者みたいじゃねぇか!」
猛烈な勢いで言われて、頭が追い付かない。
え?え?と混乱状態でいると、右肩をがしっと掴まれて。
「だからつまり――、俺はお前が好きだ」
夕日を背に向けられる、真剣な眼差しが眩しい。
オレンジ色の光のせいか少し赤く見える顏。
その言葉たちが意味をもって一身に降りかかってきた時、抑えていた想いがどっと溢れ出した。
同時にまた鼻の奥がツンとしてきて、目頭が熱くなる。
「ウソ……」
「ウソじゃねぇって。本気と書いてマジだ」
「つ、付き合ってないの?本当に?」
「だってお前と付き合いたいのに、なんで他の子と付き合わなきゃいけないんだっつぅの」
「……バカ……」
なんなのよ、それ。
分かるわけじゃないじゃん、普通に騙されるよ。
バカ、馬鹿、ばか福士。
言いたいことも文句もたくさんあるのに、喉が詰まってうまく出てこない。
俯いたらぽたっと地面に染みができた。
一度溢れたそれはとめどなく流れて、止められそうにない。
諦めようと思ってたのに。
今まで見てきたさまざまな表情や姿が脳裏を駆け巡って。
福士がどうしようもないほど好きだって想いが全身に広がっていく。
「!?オイ泣いてんのかっ?悪かったよ……」
「だって……うれし、くて」
「……!」
息を呑むような音がした後、福士の匂いがいっぱいに広がった。
眩しい夕日のオレンジ色から、視界は黒に染まった。
抱きしめられたと認識した途端、恥ずかしさで涙が引っ込みそうになる。
「それは……オッケーってことだよな?」
「……チョコ、本命だし」
そう返すと、福士の腕の力が強まって、ますます身体が密着する。
どくどくと鳴っている心臓の音に呼応するように、私の心臓も大きく鳴っていく。
福士の身体は見た目よりも大きくて、肩ががっしりしてて……何というか、言葉通りすっぽり包み込まれているようだ。
恥ずかしいけど幸せで、しばらくこうしていたいなぁなんて思いながら肩越しにちらりと瞳を開けると、林の奥で見覚えのある顏を発見。
あの人たちは間違いない、元テニス部のレギュラーメンバー。
ニヤニヤしながら私たちの様子を見守っている。
そういえばここは校舎と校門を繋ぐ林道の真っ只中だ。
下校する生徒が通るこんな場所で一体何やってるんだろうと、羞恥でさらに顔が熱くなる。
だけど――もうほんの少しだけこの幸せに浸っていたくて、ぎゅっと福士の身体を抱きしめ返した。
きっとこの後バラしたら、福士元部長の怒号が飛ぶんだろうな。
翻弄されたんだから、このくらいの仕返しは許してよね。
動揺して赤くなる福士の顔を想像して、ふふっと胸の中で静かに笑った。
Happy Valentine !
2023.2.15
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去年書いた話と似たり寄ったりな展開になってしまった…
うーん力量不足。もっと引き出し増やさなきゃなぁ。
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