ONE PIECE
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マリンフォード海軍本部で2mを越す海兵は珍しくないが頬にハンバーグをつけている特徴的な者はただ1人である。さらには大層な量の荷物とパステルカラーのバラとカスミソウをアレンジした、オーソドックスながらこれまた有り得ない本数の花束を抱えていればいやでも目立つ。
見かけはいかついが、親しみやすく、部下にも慕われている彼に一人の海兵が声を掛ける。
「あれ、ヴェルゴさん、すごい荷物と花束ですね。プロポーズか何かですか?」
ヴェルゴは足を止め、柔らかく微笑んでこう答えた。
「ああ、これか。」
ヴェルゴはそのありえない本数の花束をいとも軽々とひらひらと振りながら答えた。
「妹が少々無理をして体調を崩してね。集中して療養することになったので1ヶ月ほど長期休暇をもらうことになったんだ。
空気の良い田舎町で療養するのでなかなか電伝虫が繋がらないかもしれない。
定期的に連絡は入れるから勘弁して欲しい。」
そして少しうつむき、握ったこぶしを胸に当てる。よほど妹が心配なのだろう。妹の容態を思い出したのか、少し顔色は青ざめ、いささか震えているように見えた。
ヴェルゴには故郷に病弱な妹がいることと、その見舞いのため、たびたび長期休暇を取ることは海軍本部内でも良く知られていることであった。
「ああ、うわさの妹さんですね。お大事に。ゆっくりしてきてください。
写真とかないんですか。」
ヴェルゴは顔を上げ、少し眉毛を下げて困っているように見える。。
「あるにはあるんだが、本人が顔色が悪いのを気にしててな。やつれているからほかの人に見せちゃやだ、と言って、見せられないんだよ。
俺はかわいいと思うんだけど。」
見せちゃやだ、の部分は妹さんの口真似だろうか、ちょっとかわいく言っているつもりのようである。
茶目っ気を見せる上官に海兵は苦笑した。
「そうなんですか、じゃあ元気になったときにでも見せてくださいよ、それか見学に来てもらうとか。」
ヴェルゴはこの上なくにっこりと笑う。
「そうだな、きっと喜ぶよ。」
では、とその場を去る。
もしそのとき彼らの様子を観察している者がいたら、その違和感に気付いただろう。
海兵に背を向け、表情が見えなくなったそのとき、ヴェルゴの顔に先ほどの笑顔は微塵も見受けられなかった。
自然と駆け足になる。
急ごう。俺のかわいいかわいい妹が待っている。
スパイダーマイルズから少し離れた島の、程よく自然に囲まれた静かな街。
瀟洒な建物の中に、その部屋はあった。
ノックもそこそこにヴェルゴは部屋のドアを開ける。
「やあ、サクラ。具合はどうだ?」
サクラは目をぱちくりとさせてドアがある方向へ顔を向ける。
「あれ?ええと、あなたがヴェルゴ、さん?」
ヴェルゴはすかさずサクラのベッドに歩み寄り、そのまま両手を包み込むように握り締めた。
「ヴェルゴさんなんてそんな何を他人行儀な。
たった2人の兄妹じゃないか。」
そこへ大変低く地を這うような声でドフラミンゴが声を掛ける。
「ヴェルゴ、お前妹なんていなかっただろう。」
「やあドフィ、久しぶり。元気そうで何よりだ。
……そうだった、俺には妹なんていやしなかった。」
名残惜しそうに手を離した後、居住まいを正し、背筋をピンと伸ばしてから改めて恭しく一礼する。
「初めまして、サクラ。俺はヴェルゴだ。君のことはドフィから子供のときより何度も何度も何度も聞かされて良く知っているよ。
写真だってロケットに入れて持っている。」
それを聞いてドフラミンゴはあわててこう言った。
「おい、ヴェルゴいつの間に、いやお前ロケットなんて持っていないだろう。」
「そうだった、俺はロケットなんて持ってやしなかった。
しかし持っていてもかまわないだろう?」
大の大人が小首をかしげてこれまた同じくらいの大人にねだっている様はなかなかの見物である。
ドフラミンゴはため息をひとつついてから答える。
「……わかった、ロケットを作ってやるよ。サクラの写真入でな。」
ヴェルゴは満足そうに頷く。
ドフラミンゴはサクラへ向き直った。
「サクラ、こいつはヴェルゴと言ってあの後から今まで俺と一緒にいる一番の相棒だ。
見てのとおり変わっているが信頼が出来る。
現在は特殊任務で別のところにいるがこうやって時々戻ってくる。
アジトに来ることは難しいから今回きっちり顔を覚えておけ。」
サクラはコクリと頷いた。
2人はサクラに仕事の話をするから、と言い置いて部屋を出た。
ヴェルゴは別室に入ってすぐ、椅子にも座らず、ドフラミンゴに語りかける。
「で、具合はどうなんだ。」
ドフラミンゴは眉間にしわを寄せ、ひとつため息をついた。
「サクラはオレが例の悪夢を見て魘されているときに例の実を、……毒見のつもりだったんだろうが、口にして、能力が自動的に発動した。
そのままぶっ倒れて翌日になっても目を覚まさなかったンで医者に診せた。生きてはいるが、わずかに心臓が動いている以外の生命活動が行われていない仮死状態にあるってェ見立てだった。」
オレは心臓が止まるかと思ったよ。
ひどく小さな声でポツリと独り言のように漏らす。
「ドフィ。わかるよ。」
ヴェルゴはドフラミンゴの足元に跪き、顔を見上げる。
ドフラミンゴはヴェルゴの方を見ないまま続けた。
「1週間ほどで戻ってくることは知っていたが本当にそうなのかは確信が持てなかったンで出来るだけそばについていた。戻ってきてからは衰弱状態にはあるが経過は良好だ。
しばらく静養すれば元通りになるだろう。」
話の内容の明るさとは裏腹にドフラミンゴの顔色は優れない。
「オレはもうサクラにあの能力を使わせたくねェ。」
ドフラミンゴはそこで初めて、ヴェルゴと顔を合わせた。
二人の間にしばらく沈黙が流れる。
やがてヴェルゴはあきれた顔で深いため息をつき、振り返るように立ち上がりざまにサクラの部屋の方向を見ながらこう呟いた。
「ふむ。俺からも他の幹部を説得しよう。」
ドフラミンゴはそれを耳にし、安堵のため息を漏らし、破願した。
「それからもう1つ今回の件で発覚したことがある。オレも調べさせているがイマイチ成果が出なくてな、お前に頼みたい。内密でな。」
ヴェルゴはまっすぐにドフラミンゴを見て、深く頷いた。
一通りの打ち合わせや引継ぎ、近況報告を終えた後、ヴェルゴはふと思い出したように辺りを見回し、それからゆっくりとドフラミンゴに向き直った。
「ところでドフィ、コラソンはいないのか。
アイツのことだ、サクラがこういう状態なら縋り付いてでも付いてくると思ったが。」
「あれは置いてきた。」
ドフラミンゴは事も無げにのたまう。
「アイツがいると、サクラの気が安まらねェ。」
ヴェルゴは2代目の性質を思い出し、うむ、と首肯した。
「オレと一緒のときでないと来ないようにきつく言ってある。そうそう顔を合わせることはないだろうが。」
ドフラミンゴは一度言葉を切る。
「“休暇中”ここはお前に任せた。」
ヴェルゴは満足げに頷いた。
ドフラミンゴは相棒を頼もしげに見つめる。
優秀な相棒には報いねばなるまい。
「ところで報酬の件だが、なんかリクエストはあるか?」
ヴェルゴはあごに手を添え、考えたフリをした。
「実は考えていたんだが少し気が変わってな。……許可が欲しい。」
「なんだ、言ってみろ。」
ヴェルゴはここ最近で一番の、しかしこの上なく悪そうな笑顔を見せた。
『ヴェルゴおにいちゃん!』
1ヶ月の休暇が終わり、それ以降月に1度ヴェルゴの元には録音機能付きの電伝虫が届くようになった
海軍本部ではかわいい妹の声を吹き込んだ電伝虫を持ち歩くヴェルゴの姿が見られたとか。
見かけはいかついが、親しみやすく、部下にも慕われている彼に一人の海兵が声を掛ける。
「あれ、ヴェルゴさん、すごい荷物と花束ですね。プロポーズか何かですか?」
ヴェルゴは足を止め、柔らかく微笑んでこう答えた。
「ああ、これか。」
ヴェルゴはそのありえない本数の花束をいとも軽々とひらひらと振りながら答えた。
「妹が少々無理をして体調を崩してね。集中して療養することになったので1ヶ月ほど長期休暇をもらうことになったんだ。
空気の良い田舎町で療養するのでなかなか電伝虫が繋がらないかもしれない。
定期的に連絡は入れるから勘弁して欲しい。」
そして少しうつむき、握ったこぶしを胸に当てる。よほど妹が心配なのだろう。妹の容態を思い出したのか、少し顔色は青ざめ、いささか震えているように見えた。
ヴェルゴには故郷に病弱な妹がいることと、その見舞いのため、たびたび長期休暇を取ることは海軍本部内でも良く知られていることであった。
「ああ、うわさの妹さんですね。お大事に。ゆっくりしてきてください。
写真とかないんですか。」
ヴェルゴは顔を上げ、少し眉毛を下げて困っているように見える。。
「あるにはあるんだが、本人が顔色が悪いのを気にしててな。やつれているからほかの人に見せちゃやだ、と言って、見せられないんだよ。
俺はかわいいと思うんだけど。」
見せちゃやだ、の部分は妹さんの口真似だろうか、ちょっとかわいく言っているつもりのようである。
茶目っ気を見せる上官に海兵は苦笑した。
「そうなんですか、じゃあ元気になったときにでも見せてくださいよ、それか見学に来てもらうとか。」
ヴェルゴはこの上なくにっこりと笑う。
「そうだな、きっと喜ぶよ。」
では、とその場を去る。
もしそのとき彼らの様子を観察している者がいたら、その違和感に気付いただろう。
海兵に背を向け、表情が見えなくなったそのとき、ヴェルゴの顔に先ほどの笑顔は微塵も見受けられなかった。
自然と駆け足になる。
急ごう。俺のかわいいかわいい妹が待っている。
スパイダーマイルズから少し離れた島の、程よく自然に囲まれた静かな街。
瀟洒な建物の中に、その部屋はあった。
ノックもそこそこにヴェルゴは部屋のドアを開ける。
「やあ、サクラ。具合はどうだ?」
サクラは目をぱちくりとさせてドアがある方向へ顔を向ける。
「あれ?ええと、あなたがヴェルゴ、さん?」
ヴェルゴはすかさずサクラのベッドに歩み寄り、そのまま両手を包み込むように握り締めた。
「ヴェルゴさんなんてそんな何を他人行儀な。
たった2人の兄妹じゃないか。」
そこへ大変低く地を這うような声でドフラミンゴが声を掛ける。
「ヴェルゴ、お前妹なんていなかっただろう。」
「やあドフィ、久しぶり。元気そうで何よりだ。
……そうだった、俺には妹なんていやしなかった。」
名残惜しそうに手を離した後、居住まいを正し、背筋をピンと伸ばしてから改めて恭しく一礼する。
「初めまして、サクラ。俺はヴェルゴだ。君のことはドフィから子供のときより何度も何度も何度も聞かされて良く知っているよ。
写真だってロケットに入れて持っている。」
それを聞いてドフラミンゴはあわててこう言った。
「おい、ヴェルゴいつの間に、いやお前ロケットなんて持っていないだろう。」
「そうだった、俺はロケットなんて持ってやしなかった。
しかし持っていてもかまわないだろう?」
大の大人が小首をかしげてこれまた同じくらいの大人にねだっている様はなかなかの見物である。
ドフラミンゴはため息をひとつついてから答える。
「……わかった、ロケットを作ってやるよ。サクラの写真入でな。」
ヴェルゴは満足そうに頷く。
ドフラミンゴはサクラへ向き直った。
「サクラ、こいつはヴェルゴと言ってあの後から今まで俺と一緒にいる一番の相棒だ。
見てのとおり変わっているが信頼が出来る。
現在は特殊任務で別のところにいるがこうやって時々戻ってくる。
アジトに来ることは難しいから今回きっちり顔を覚えておけ。」
サクラはコクリと頷いた。
2人はサクラに仕事の話をするから、と言い置いて部屋を出た。
ヴェルゴは別室に入ってすぐ、椅子にも座らず、ドフラミンゴに語りかける。
「で、具合はどうなんだ。」
ドフラミンゴは眉間にしわを寄せ、ひとつため息をついた。
「サクラはオレが例の悪夢を見て魘されているときに例の実を、……毒見のつもりだったんだろうが、口にして、能力が自動的に発動した。
そのままぶっ倒れて翌日になっても目を覚まさなかったンで医者に診せた。生きてはいるが、わずかに心臓が動いている以外の生命活動が行われていない仮死状態にあるってェ見立てだった。」
オレは心臓が止まるかと思ったよ。
ひどく小さな声でポツリと独り言のように漏らす。
「ドフィ。わかるよ。」
ヴェルゴはドフラミンゴの足元に跪き、顔を見上げる。
ドフラミンゴはヴェルゴの方を見ないまま続けた。
「1週間ほどで戻ってくることは知っていたが本当にそうなのかは確信が持てなかったンで出来るだけそばについていた。戻ってきてからは衰弱状態にはあるが経過は良好だ。
しばらく静養すれば元通りになるだろう。」
話の内容の明るさとは裏腹にドフラミンゴの顔色は優れない。
「オレはもうサクラにあの能力を使わせたくねェ。」
ドフラミンゴはそこで初めて、ヴェルゴと顔を合わせた。
二人の間にしばらく沈黙が流れる。
やがてヴェルゴはあきれた顔で深いため息をつき、振り返るように立ち上がりざまにサクラの部屋の方向を見ながらこう呟いた。
「ふむ。俺からも他の幹部を説得しよう。」
ドフラミンゴはそれを耳にし、安堵のため息を漏らし、破願した。
「それからもう1つ今回の件で発覚したことがある。オレも調べさせているがイマイチ成果が出なくてな、お前に頼みたい。内密でな。」
ヴェルゴはまっすぐにドフラミンゴを見て、深く頷いた。
一通りの打ち合わせや引継ぎ、近況報告を終えた後、ヴェルゴはふと思い出したように辺りを見回し、それからゆっくりとドフラミンゴに向き直った。
「ところでドフィ、コラソンはいないのか。
アイツのことだ、サクラがこういう状態なら縋り付いてでも付いてくると思ったが。」
「あれは置いてきた。」
ドフラミンゴは事も無げにのたまう。
「アイツがいると、サクラの気が安まらねェ。」
ヴェルゴは2代目の性質を思い出し、うむ、と首肯した。
「オレと一緒のときでないと来ないようにきつく言ってある。そうそう顔を合わせることはないだろうが。」
ドフラミンゴは一度言葉を切る。
「“休暇中”ここはお前に任せた。」
ヴェルゴは満足げに頷いた。
ドフラミンゴは相棒を頼もしげに見つめる。
優秀な相棒には報いねばなるまい。
「ところで報酬の件だが、なんかリクエストはあるか?」
ヴェルゴはあごに手を添え、考えたフリをした。
「実は考えていたんだが少し気が変わってな。……許可が欲しい。」
「なんだ、言ってみろ。」
ヴェルゴはここ最近で一番の、しかしこの上なく悪そうな笑顔を見せた。
『ヴェルゴおにいちゃん!』
1ヶ月の休暇が終わり、それ以降月に1度ヴェルゴの元には録音機能付きの電伝虫が届くようになった
海軍本部ではかわいい妹の声を吹き込んだ電伝虫を持ち歩くヴェルゴの姿が見られたとか。