鬼滅の刃
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胡蝶様の調合した薬は藤の花から抽出した成分が入っていたらしいがそれ自体が私の身体に変調をきたすことは無かった。
眠って?しまったのはどうやら大目に配合した朝鮮朝顔の成分のせいだったらしい。
一通り私の検査をした胡蝶様は、後遺症がないことに安堵された。
本来一塗りで使う予定だった量が一瓶使われていたので私が担ぎ込まれた時は相当焦ったと言っていた。
さすが派手柱、使い方も派手である。
それにしても不可解だったのは私がこの屋敷に担ぎ込まれる少し前、
我が家に押しかけたあと呆けていたという隊員全てが完全ではないものの皆正気を取り戻したことだ。
何が切欠かはわからない。
胡蝶様は後日他の柱にも話を聞いてみると言っておられた。
早めに正気を取り戻した方も居たそうなので、
何か他に特定の条件があるかもしれませんと胡蝶様は言っておられた。
他に、ということは何か条件のうちの一つはわかっているんですね?と問うたら曖昧に微笑んで誤魔化された。
あれは何かわかっている顔だ。
教えてもらえない理由が判然としないが何か言えない理由があるのだろう。
今後同様の事象が発生した時のため、胡蝶様は私から幾らかの血や皮膚、髪、爪、唾液などを採取したがあまり芳しい成果は得られなかった。
それらそのものはヒトと変わりなかったからだ。
ただ違うところはといえば一点だけ。
胡蝶様が本当に申し訳なさそうに少し多めに肉を削いだ時だった。
見る間に肉が盛り上がり、元通りになったのだ。
首を切っても繋がるのだからまあそうなるのだろうが、
目の前でそれを眺めるのは正直かなり気持ち悪かった。
肉片そのものからは何も変化がなくて良かった。
それからもう1人私が再生されたら流石に正気を失っていたに違いない。
ただ私も平静ではなかったのだろう。
じっとその箇所を見つめる胡蝶様に
「腕一本お取りになってみますか。」
と半笑いで申し上げたら笑顔のままで叱られた。
次に蝶屋敷に住んでいる皆様とまずは短時間ではあるが対話を行なった。
以前の隊員たちのように襲い掛かられることはないか、相手が昏倒してしまうのではないかと緊張と心配で眩暈がしそうだったが実際に会ってみると杞憂だった。
挨拶程度ではあるが、彼女らには何の変化も起きなかったからだ。
胡蝶様はその間じっと観察し、手元の帳面に何か書き付けるとやがて満足そうに微笑まれた。
胡蝶様の中で何か思索に進展があったようだった。
まずは蝶屋敷内ではあるが自由に過ごすことが許された。
ただし夜は部屋の外に出る際には例え厠であっても誰か伴うように厳命された。
念を入れて母屋に通じる鈴までご用意いただいたのには恐縮するばかりである。
翌日には私に対する検査結果を報告書にまとめた胡蝶様によって、とりあえず私に対する鬼か否かという嫌疑は晴れた。
まだ他にも柱はいるとのことだったが出合わずに済みそうである。
しかし、私はまだこのまま山に帰れそうにはなかった。
どうやら近くに鬼が出たようで、まだ見つかっておらず、それらから保護をすべきというのが鬼殺隊の意向のようだった。
さしあたって今後の私の処遇を決するに、鬼殺隊の上層部で話し合いが設けられる予定だが、なにぶん上層部とはいわゆる柱のことであり、
その柱は元々大層忙しいとのことだった。
そもそも一同に会するのは半年に一度のことらしい。
先日のあれは滅多にない状況だったのだ。
私は当面の間、蝶屋敷の離れに一室をいただき、滞在することとなった。
部屋の前の中庭には隠の方が山から持ってきて植え直してくれた芋畑がある。
縁戚からもらった貴重な種芋だ。無駄にならずに済んで良かった。
少しずつ家事を手伝ったが驚くことばかりだった。
曲がりなりにも嫁いだ身だ。一通りのことは身についている。
しかしこの屋敷の女性たちはすごかった。
アオイちゃんを筆頭に、きよちゃん、すみちゃん、なほちゃんはかなり手際が良かったのだ。
包丁の手捌きが違う、早さが違う、調味料を目分量で入れているのに味がブレない、洗濯物の回収が片手で終わり、干し方に無駄が無い。
自分より年下の子達の働きに私は感心することしきりだった。
蝶屋敷は病院も兼ねていて、その治療や看護、回復期の訓練も彼女らが行なっているというのだから恐れ入る。
治療や看護については私も手伝いを申し出てみたが、胡蝶様はゆるりと頭を振った。
「気持ちは有り難いのですけど……貴女に会った隊員が発じょ……発狂してはいけませんから。」
今不穏な単語が聞こえたのは気のせいとしよう。
それでも病弱だった過去が功を奏してか薬に幾ばくかの知識があったので簡単な薬の調合や力仕事である薪割りなどは任せてもらえた。
暇を見ては畑の世話も出来た。
裏山もあるので狩りもできると意気込んだがあいにくそれはまだ許可されていない。
新参者の私に対しても家族のように優しい人々に囲まれ、人であった頃と同じ食事を取り、今までにない穏やかな日々を過ごせたのはこれからのことを考えれば奇跡といえよう。
私は彼に再び出会うまで、何も知らずほけほけと日々を過ごしていたのだ。
胡蝶しのぶは怒っていた。
いや、表情そのものはいつも通りの笑みを浮かべている。
目の前の男が任務の後、傷だらけ血だらけで戻るのもいつも通りである。
ただこの男は、普段この程度の怪我で(それでも重傷ではあるが)診せてはくれない。
必要であれば薬や治療の包帯を隠に命じて取りに来させるぐらいである。
しかししのぶはそれが男の気遣いであることは知っていた。
姉の亡き後、この年若の者ばかりの蝶屋敷を気にかけ、できるだけ負担の無いように自身でやれる治療は自身でやってしまう男である。
よほど重体で蝶屋敷に担ぎ込まれれば別であるが。
怪我が無い時も何くれとなく気にかけてくれるこの男が、選りに選って今、ここに来る、という事実にしのぶは腹を立てていたのである。
「不死川さん?……わざとでは無いんでしょうね?」
「何だァ、藪から棒に。」
しのぶが問い掛けると不死川は何でも無い風に返事をする。
不死川はその体質故に積極的に自身を傷つけ、その血を使って滅殺を行なっている。
しのぶはある程度それを許容せざるを得なかったが、かと言って納得しているわけではなかった。
「分かってんだろォ。……今はとにかく手が足りねえ、早く済むならそれに越した事はねえ。」
もっともである。大変ごもっともなお返事ではあった。
しかし今、この蝶屋敷には処遇決定待ちの彼女がおり、彼女の穏やかな暮らしのためには不穏分子は避ける必要があった。
その為彼女に出会っていつもとは違う挙動を行なったものに関しては柱と言えども面会は許されていなかった。
「治療であればこちらから伺うと申し伝えてましたよね?」
わざと下から窺うように尋ねる。
「お前だって忙しいだろう、そんな手を煩わせる気はねえよ。」
おっしゃる通りである。
柱同士とは言え、その屋敷の場所は互いに秘されており、隠を何人も通してしか訪れることは出来ない。
しのぶ自身かアオイが出向くにしても治療のためとは言えその分手が取られる事には変わりない。
しかししのぶは見抜いていた。
さりげなさを装いつつも不死川の視線が誰かを探すように彷徨っていることを。
彼女がここに来てまだ10日ほどである。
彼にとってはもう10日、ということですか。
しのぶは不死川の顔をじっと見つめた。
不死川はすでにそっぽを向いているが幾らか耳が赤い。
もうバレていると分かっていて、しらばっくれているのだろう。
それほどまでに彼女に会いたかったのか。
しのぶは深く溜息をついた。
まあ、不死川さんはまだマシな反応でしたし。
彼は予防のための薬をも飲んでいない状態で理性的な行動を取れていた。
面会を許してもいいかもしれない。
まあ、後の2人はそういうわけにはいくまい。
ここで面会を許せば厄介な事になることは間違いない。
しのぶは頭を悩ませた。
「大丈夫か?胡蝶。」
不死川は唸り続けるしのぶを心配してか声を掛ける。
やはり、この人は。
誤解を受けやすいが、優しい人なのだ。
それに彼が理性的でいられる理由はもしかしたら、彼女にとって良い方向に向くかもしれない。
ああ、姉さん、どうかお願いします。
しのぶは亡き姉に祈りを捧げつつ徐に口を開いた。
眠って?しまったのはどうやら大目に配合した朝鮮朝顔の成分のせいだったらしい。
一通り私の検査をした胡蝶様は、後遺症がないことに安堵された。
本来一塗りで使う予定だった量が一瓶使われていたので私が担ぎ込まれた時は相当焦ったと言っていた。
さすが派手柱、使い方も派手である。
それにしても不可解だったのは私がこの屋敷に担ぎ込まれる少し前、
我が家に押しかけたあと呆けていたという隊員全てが完全ではないものの皆正気を取り戻したことだ。
何が切欠かはわからない。
胡蝶様は後日他の柱にも話を聞いてみると言っておられた。
早めに正気を取り戻した方も居たそうなので、
何か他に特定の条件があるかもしれませんと胡蝶様は言っておられた。
他に、ということは何か条件のうちの一つはわかっているんですね?と問うたら曖昧に微笑んで誤魔化された。
あれは何かわかっている顔だ。
教えてもらえない理由が判然としないが何か言えない理由があるのだろう。
今後同様の事象が発生した時のため、胡蝶様は私から幾らかの血や皮膚、髪、爪、唾液などを採取したがあまり芳しい成果は得られなかった。
それらそのものはヒトと変わりなかったからだ。
ただ違うところはといえば一点だけ。
胡蝶様が本当に申し訳なさそうに少し多めに肉を削いだ時だった。
見る間に肉が盛り上がり、元通りになったのだ。
首を切っても繋がるのだからまあそうなるのだろうが、
目の前でそれを眺めるのは正直かなり気持ち悪かった。
肉片そのものからは何も変化がなくて良かった。
それからもう1人私が再生されたら流石に正気を失っていたに違いない。
ただ私も平静ではなかったのだろう。
じっとその箇所を見つめる胡蝶様に
「腕一本お取りになってみますか。」
と半笑いで申し上げたら笑顔のままで叱られた。
次に蝶屋敷に住んでいる皆様とまずは短時間ではあるが対話を行なった。
以前の隊員たちのように襲い掛かられることはないか、相手が昏倒してしまうのではないかと緊張と心配で眩暈がしそうだったが実際に会ってみると杞憂だった。
挨拶程度ではあるが、彼女らには何の変化も起きなかったからだ。
胡蝶様はその間じっと観察し、手元の帳面に何か書き付けるとやがて満足そうに微笑まれた。
胡蝶様の中で何か思索に進展があったようだった。
まずは蝶屋敷内ではあるが自由に過ごすことが許された。
ただし夜は部屋の外に出る際には例え厠であっても誰か伴うように厳命された。
念を入れて母屋に通じる鈴までご用意いただいたのには恐縮するばかりである。
翌日には私に対する検査結果を報告書にまとめた胡蝶様によって、とりあえず私に対する鬼か否かという嫌疑は晴れた。
まだ他にも柱はいるとのことだったが出合わずに済みそうである。
しかし、私はまだこのまま山に帰れそうにはなかった。
どうやら近くに鬼が出たようで、まだ見つかっておらず、それらから保護をすべきというのが鬼殺隊の意向のようだった。
さしあたって今後の私の処遇を決するに、鬼殺隊の上層部で話し合いが設けられる予定だが、なにぶん上層部とはいわゆる柱のことであり、
その柱は元々大層忙しいとのことだった。
そもそも一同に会するのは半年に一度のことらしい。
先日のあれは滅多にない状況だったのだ。
私は当面の間、蝶屋敷の離れに一室をいただき、滞在することとなった。
部屋の前の中庭には隠の方が山から持ってきて植え直してくれた芋畑がある。
縁戚からもらった貴重な種芋だ。無駄にならずに済んで良かった。
少しずつ家事を手伝ったが驚くことばかりだった。
曲がりなりにも嫁いだ身だ。一通りのことは身についている。
しかしこの屋敷の女性たちはすごかった。
アオイちゃんを筆頭に、きよちゃん、すみちゃん、なほちゃんはかなり手際が良かったのだ。
包丁の手捌きが違う、早さが違う、調味料を目分量で入れているのに味がブレない、洗濯物の回収が片手で終わり、干し方に無駄が無い。
自分より年下の子達の働きに私は感心することしきりだった。
蝶屋敷は病院も兼ねていて、その治療や看護、回復期の訓練も彼女らが行なっているというのだから恐れ入る。
治療や看護については私も手伝いを申し出てみたが、胡蝶様はゆるりと頭を振った。
「気持ちは有り難いのですけど……貴女に会った隊員が発じょ……発狂してはいけませんから。」
今不穏な単語が聞こえたのは気のせいとしよう。
それでも病弱だった過去が功を奏してか薬に幾ばくかの知識があったので簡単な薬の調合や力仕事である薪割りなどは任せてもらえた。
暇を見ては畑の世話も出来た。
裏山もあるので狩りもできると意気込んだがあいにくそれはまだ許可されていない。
新参者の私に対しても家族のように優しい人々に囲まれ、人であった頃と同じ食事を取り、今までにない穏やかな日々を過ごせたのはこれからのことを考えれば奇跡といえよう。
私は彼に再び出会うまで、何も知らずほけほけと日々を過ごしていたのだ。
胡蝶しのぶは怒っていた。
いや、表情そのものはいつも通りの笑みを浮かべている。
目の前の男が任務の後、傷だらけ血だらけで戻るのもいつも通りである。
ただこの男は、普段この程度の怪我で(それでも重傷ではあるが)診せてはくれない。
必要であれば薬や治療の包帯を隠に命じて取りに来させるぐらいである。
しかししのぶはそれが男の気遣いであることは知っていた。
姉の亡き後、この年若の者ばかりの蝶屋敷を気にかけ、できるだけ負担の無いように自身でやれる治療は自身でやってしまう男である。
よほど重体で蝶屋敷に担ぎ込まれれば別であるが。
怪我が無い時も何くれとなく気にかけてくれるこの男が、選りに選って今、ここに来る、という事実にしのぶは腹を立てていたのである。
「不死川さん?……わざとでは無いんでしょうね?」
「何だァ、藪から棒に。」
しのぶが問い掛けると不死川は何でも無い風に返事をする。
不死川はその体質故に積極的に自身を傷つけ、その血を使って滅殺を行なっている。
しのぶはある程度それを許容せざるを得なかったが、かと言って納得しているわけではなかった。
「分かってんだろォ。……今はとにかく手が足りねえ、早く済むならそれに越した事はねえ。」
もっともである。大変ごもっともなお返事ではあった。
しかし今、この蝶屋敷には処遇決定待ちの彼女がおり、彼女の穏やかな暮らしのためには不穏分子は避ける必要があった。
その為彼女に出会っていつもとは違う挙動を行なったものに関しては柱と言えども面会は許されていなかった。
「治療であればこちらから伺うと申し伝えてましたよね?」
わざと下から窺うように尋ねる。
「お前だって忙しいだろう、そんな手を煩わせる気はねえよ。」
おっしゃる通りである。
柱同士とは言え、その屋敷の場所は互いに秘されており、隠を何人も通してしか訪れることは出来ない。
しのぶ自身かアオイが出向くにしても治療のためとは言えその分手が取られる事には変わりない。
しかししのぶは見抜いていた。
さりげなさを装いつつも不死川の視線が誰かを探すように彷徨っていることを。
彼女がここに来てまだ10日ほどである。
彼にとってはもう10日、ということですか。
しのぶは不死川の顔をじっと見つめた。
不死川はすでにそっぽを向いているが幾らか耳が赤い。
もうバレていると分かっていて、しらばっくれているのだろう。
それほどまでに彼女に会いたかったのか。
しのぶは深く溜息をついた。
まあ、不死川さんはまだマシな反応でしたし。
彼は予防のための薬をも飲んでいない状態で理性的な行動を取れていた。
面会を許してもいいかもしれない。
まあ、後の2人はそういうわけにはいくまい。
ここで面会を許せば厄介な事になることは間違いない。
しのぶは頭を悩ませた。
「大丈夫か?胡蝶。」
不死川は唸り続けるしのぶを心配してか声を掛ける。
やはり、この人は。
誤解を受けやすいが、優しい人なのだ。
それに彼が理性的でいられる理由はもしかしたら、彼女にとって良い方向に向くかもしれない。
ああ、姉さん、どうかお願いします。
しのぶは亡き姉に祈りを捧げつつ徐に口を開いた。