Undertale +AU
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人間の成長は早い。
モンスターが閉じ込められていた地下世界を解放し、その後も人間とモンスターの架け橋となるべく親善大使となった彼女は確かに子供だった。
パピルスの膝に乗り、メタトンの番組に夢中になっているのは今も変わらない。
ただそん時はまだパピルスの腰骨にも届かず、マントで包んでしまえばパピルスの腰骨と肋骨の間に収まってしまうくらい小さかった人間は今やそこに入ろうとしてもはみ出してしまうくらいに大きくなった。
サンズは改めて目の前の光景を眺めた。
地上に出てからマスコットとして、また料理研究家として研鑽を積んだパピルスはもはやバトルスーツを着ていない。
それに寂しさを覚えないわけでは無かったがリブ編みのセーターに細身のデニムを合わせた姿はすでに馴染み深いものだ。
そしてその膝の上には以前と変わらずプレイヤーが収まっている。
同じくお揃いのリブ編みのセーターとデニムに身を包んだ人間は、服装が変わっただけでは無かった。
姿形がさして変わらないモンスターと違い、その背はすでにサンズをとっくのとうに越え、丸まっちかった体は曲線とくびれを醸し出していた。
パピルスの肋骨にその頭を預け、完全に寛いでいる姿は以前と何も変わらない。
ただ笑い合う二人が、前はパピルスがしゃがんで覗き込むか、持ち上げて顔を合わせるのが常だったものが、ソファで座っている時でさえ一定の距離があったその顔が、今は振り向くだけで、少し腰をかがめるだけでより近くなってしまった。
ああ、今も。
メタトンのハプニングに笑いながら、今の見た?とプレイヤーが振り向く。同じように笑いながらうなづくパピルスの顔は触れ合ってしまいそうな程近い。
そして二人は何事もなかったかのようにまたテレビに夢中になる。
その様子を見たアルフィーは何か早口でぶつぶつと呟いていたし、アンダインはすぐさま
「なんだお前たち、付き合っているのか!」
と叫んだ。
さすがアンダイン、行動が早い。
しかし二人は揃って笑いながら、
「「それはない」な」よ!」
と笑うのだ。
そうか、と言ってアンダインはそれ以上聞かなかった。
オイラとアルフィーは顔を見合わせてやれやれと深くため息をついた。
二人がそういうのであればそうだろう。特に問題はない。
それが今までの、変わらない日常だった。
しかし今日は違っていた。
笑い合った後にプレイヤーは前を向いたまま頬を薔薇色に染め、目を潤ませていた。
パピルスは少し顔を背け、やはり頬骨を赤く染めていた。
これは、もしや。
サンズは自分のソウルがゾクリと泡立つのを感じた。
まるで冷水を浴びせられたような感覚だった。
それでも声をかけようとサンズが声を絞り出そうとした時だった。
プレイヤーがスッとソファを立つ。
「そうだった、ごめん、私、ママにお使い頼まれてたんだ。
……もう帰らなきゃ。」
不自然だった。
「おお、わかった。じゃあオレ様が送って、」
「ううん大丈夫。急でごめんね。」
「フリスク?」
パピルスが名前を呼んだ。
プレイヤーはびくりと体を震わせる。
そう、皆彼女のことをフリスクと呼ぶのだ。
彼女の名前はプレイヤーなのに。
ただその名前を知っているのは彼女自身と、そう、オレだけ。
彼女に出会ってからずっと知りたいと思っていたその名前。
地下が開放された時、彼女は名乗ってもいないのに皆がその名前を知っていた。
彼女がその名前を呼ばれるたびに苦しそうな笑顔を浮かべるのが気になって、彼女の後を追った。
彼女が泣きながら名乗った名前はプレイヤー。
しかしその名はいまだに他のモンスターにも人間にも知る者はいなかった。
彼女は皆にフリスクと呼ばれることを拒まなかった。
ただオレの前でだけ時々泣いた。
その時に仄暗い喜びを感じていたことは否定しない。
これから感じる感情に比べれば認めるに容易い感情だった。
パタンと無情にもドアが閉まる。
パピルスが浮かした腰をストンと落とし、がくりと肩を落とした。
オイラは努めて明るい声を出す。
「やっぱりオイラが送ってくるよ、近道でな。」
わざと戯けるようにパピルスに声をかけた。
「ねえ、にいちゃん。僕……おかしいのかもしれない。」
パピルスがつぶやく。
パピルスが自分のことを僕と言い、オレのことをにいちゃんと呼ぶのは余程の時だけだ。
オレは黙ってパピルスを見つめた。
「僕は、ずっとそばにいたい。何かあればいつでもどんな時も何よりも先に駆けつけたい。」
パピルスは俯いたままだ。
誰の、とも何の、とも聞かなかった。
「それは、親友にはできないことなの?」
オレはほっとした。大きな弟の頭を撫でながら答えてやる。
「できるさ、お前になら。」
パピルスは顔を上げた。
「フリスク、が笑っていると嬉しい。喜んでくれて、笑ってくれると嬉しいのに、名前を呼ばれると胸が苦しい。僕が名前を呼んだら苦しそうに笑うのが気になって仕方がない。」
「その笑顔を向けるのがオレ様だけだったらいいのにって、そう、思ってしまう。でもそれは、」
にいちゃんも、だよね?
「パピ、ルス……」
そうなのか、そうだったのか、オレは、オレたちは。
「****のこと、好き、でしょう?」
彼女の名前をパピルスは知らないからなのだろうか、今までフリスクと音を紡いでいたはずのそれは言葉ではなくなっていた。
「****はにいちゃんにだけ、本当の笑顔を見せているんだ。」
でもなパピルス、彼女が好きなのはお前だ。
彼女はずっとずっとお前のことが好きなんだ。
お前がいるから別の名前を呼ばれても受け入れているんだ。
だから彼女はオレを選ばない。
そう言ってやればよかった。
そう言ってやれなかった。
「彼女を連れてくる。……早い方がいいだろう?」
もう人間だからとか子供だからとか言い訳はできなかった。
そもそもモンスターには人間の恋愛のようなタブーは本来ないのだ。
彼女に合わせると言いながら先延ばしにしていたのはオレの諦めからくるものだ。
すぐ二人で気持ちを伝えるつもりだった。そしてオレはフラれるんだ。
しかし彼女にはなかなか会えなかった。
電話にも出ない、メールの返事もそっけない。
親善大使の仕事も減らしているらしかった。
焦れたオレたちはその減ってしまった仕事の隙間を狙うことにした。
そして愚かなことにオレたちは彼女の気持ちを考えていなかった。
そしてとうとうプレイヤーを見つけた。
自覚してしまえば自分の気持ちは明確だった。
彼女の姿をこの眼窩に移すだけで嬉しい。
意を決してオレたちの家に呼び出す。
「話がある。」とだけ伝えたが彼女と目が合わせられなかった。
頬骨に熱が集まる。
彼女の息を飲む音がして、返事がないのを不審に思って顔を上げたがその姿はどこにも見当たらなかった。
雪がうっすらと積もっているのに音すらしなかった。
足跡1つ、彼女の痕跡すら残っていない。
まさかその後、彼女に会えなくなるなんて、こんなに長い間会えなくなるなんて、オレたちは思ってもいなかったんだ。
モンスターが閉じ込められていた地下世界を解放し、その後も人間とモンスターの架け橋となるべく親善大使となった彼女は確かに子供だった。
パピルスの膝に乗り、メタトンの番組に夢中になっているのは今も変わらない。
ただそん時はまだパピルスの腰骨にも届かず、マントで包んでしまえばパピルスの腰骨と肋骨の間に収まってしまうくらい小さかった人間は今やそこに入ろうとしてもはみ出してしまうくらいに大きくなった。
サンズは改めて目の前の光景を眺めた。
地上に出てからマスコットとして、また料理研究家として研鑽を積んだパピルスはもはやバトルスーツを着ていない。
それに寂しさを覚えないわけでは無かったがリブ編みのセーターに細身のデニムを合わせた姿はすでに馴染み深いものだ。
そしてその膝の上には以前と変わらずプレイヤーが収まっている。
同じくお揃いのリブ編みのセーターとデニムに身を包んだ人間は、服装が変わっただけでは無かった。
姿形がさして変わらないモンスターと違い、その背はすでにサンズをとっくのとうに越え、丸まっちかった体は曲線とくびれを醸し出していた。
パピルスの肋骨にその頭を預け、完全に寛いでいる姿は以前と何も変わらない。
ただ笑い合う二人が、前はパピルスがしゃがんで覗き込むか、持ち上げて顔を合わせるのが常だったものが、ソファで座っている時でさえ一定の距離があったその顔が、今は振り向くだけで、少し腰をかがめるだけでより近くなってしまった。
ああ、今も。
メタトンのハプニングに笑いながら、今の見た?とプレイヤーが振り向く。同じように笑いながらうなづくパピルスの顔は触れ合ってしまいそうな程近い。
そして二人は何事もなかったかのようにまたテレビに夢中になる。
その様子を見たアルフィーは何か早口でぶつぶつと呟いていたし、アンダインはすぐさま
「なんだお前たち、付き合っているのか!」
と叫んだ。
さすがアンダイン、行動が早い。
しかし二人は揃って笑いながら、
「「それはない」な」よ!」
と笑うのだ。
そうか、と言ってアンダインはそれ以上聞かなかった。
オイラとアルフィーは顔を見合わせてやれやれと深くため息をついた。
二人がそういうのであればそうだろう。特に問題はない。
それが今までの、変わらない日常だった。
しかし今日は違っていた。
笑い合った後にプレイヤーは前を向いたまま頬を薔薇色に染め、目を潤ませていた。
パピルスは少し顔を背け、やはり頬骨を赤く染めていた。
これは、もしや。
サンズは自分のソウルがゾクリと泡立つのを感じた。
まるで冷水を浴びせられたような感覚だった。
それでも声をかけようとサンズが声を絞り出そうとした時だった。
プレイヤーがスッとソファを立つ。
「そうだった、ごめん、私、ママにお使い頼まれてたんだ。
……もう帰らなきゃ。」
不自然だった。
「おお、わかった。じゃあオレ様が送って、」
「ううん大丈夫。急でごめんね。」
「フリスク?」
パピルスが名前を呼んだ。
プレイヤーはびくりと体を震わせる。
そう、皆彼女のことをフリスクと呼ぶのだ。
彼女の名前はプレイヤーなのに。
ただその名前を知っているのは彼女自身と、そう、オレだけ。
彼女に出会ってからずっと知りたいと思っていたその名前。
地下が開放された時、彼女は名乗ってもいないのに皆がその名前を知っていた。
彼女がその名前を呼ばれるたびに苦しそうな笑顔を浮かべるのが気になって、彼女の後を追った。
彼女が泣きながら名乗った名前はプレイヤー。
しかしその名はいまだに他のモンスターにも人間にも知る者はいなかった。
彼女は皆にフリスクと呼ばれることを拒まなかった。
ただオレの前でだけ時々泣いた。
その時に仄暗い喜びを感じていたことは否定しない。
これから感じる感情に比べれば認めるに容易い感情だった。
パタンと無情にもドアが閉まる。
パピルスが浮かした腰をストンと落とし、がくりと肩を落とした。
オイラは努めて明るい声を出す。
「やっぱりオイラが送ってくるよ、近道でな。」
わざと戯けるようにパピルスに声をかけた。
「ねえ、にいちゃん。僕……おかしいのかもしれない。」
パピルスがつぶやく。
パピルスが自分のことを僕と言い、オレのことをにいちゃんと呼ぶのは余程の時だけだ。
オレは黙ってパピルスを見つめた。
「僕は、ずっとそばにいたい。何かあればいつでもどんな時も何よりも先に駆けつけたい。」
パピルスは俯いたままだ。
誰の、とも何の、とも聞かなかった。
「それは、親友にはできないことなの?」
オレはほっとした。大きな弟の頭を撫でながら答えてやる。
「できるさ、お前になら。」
パピルスは顔を上げた。
「フリスク、が笑っていると嬉しい。喜んでくれて、笑ってくれると嬉しいのに、名前を呼ばれると胸が苦しい。僕が名前を呼んだら苦しそうに笑うのが気になって仕方がない。」
「その笑顔を向けるのがオレ様だけだったらいいのにって、そう、思ってしまう。でもそれは、」
にいちゃんも、だよね?
「パピ、ルス……」
そうなのか、そうだったのか、オレは、オレたちは。
「****のこと、好き、でしょう?」
彼女の名前をパピルスは知らないからなのだろうか、今までフリスクと音を紡いでいたはずのそれは言葉ではなくなっていた。
「****はにいちゃんにだけ、本当の笑顔を見せているんだ。」
でもなパピルス、彼女が好きなのはお前だ。
彼女はずっとずっとお前のことが好きなんだ。
お前がいるから別の名前を呼ばれても受け入れているんだ。
だから彼女はオレを選ばない。
そう言ってやればよかった。
そう言ってやれなかった。
「彼女を連れてくる。……早い方がいいだろう?」
もう人間だからとか子供だからとか言い訳はできなかった。
そもそもモンスターには人間の恋愛のようなタブーは本来ないのだ。
彼女に合わせると言いながら先延ばしにしていたのはオレの諦めからくるものだ。
すぐ二人で気持ちを伝えるつもりだった。そしてオレはフラれるんだ。
しかし彼女にはなかなか会えなかった。
電話にも出ない、メールの返事もそっけない。
親善大使の仕事も減らしているらしかった。
焦れたオレたちはその減ってしまった仕事の隙間を狙うことにした。
そして愚かなことにオレたちは彼女の気持ちを考えていなかった。
そしてとうとうプレイヤーを見つけた。
自覚してしまえば自分の気持ちは明確だった。
彼女の姿をこの眼窩に移すだけで嬉しい。
意を決してオレたちの家に呼び出す。
「話がある。」とだけ伝えたが彼女と目が合わせられなかった。
頬骨に熱が集まる。
彼女の息を飲む音がして、返事がないのを不審に思って顔を上げたがその姿はどこにも見当たらなかった。
雪がうっすらと積もっているのに音すらしなかった。
足跡1つ、彼女の痕跡すら残っていない。
まさかその後、彼女に会えなくなるなんて、こんなに長い間会えなくなるなんて、オレたちは思ってもいなかったんだ。