Undertale +AU
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「我輩の名を呼んでくれ。」
ひどく苦しそうに、切なそうな声で懇願するボスの言葉に息を呑んだ。
でも呼べない、呼べるはずがない。
呼んでしまったら気付かれてしまう。
だって彼の名は私の、初恋相手と同じだから。
イビト山からモンスターの世界に落ちて、モンスターからの戯れに何度も殺されそうになった。
その時の彼らが殺すつもりでなかったのは今ではわかっているけど
私はとても怖かった。
笑顔で殺しにかかる彼らは一体何なのか、どういうつもりなのかとひどく混乱していた。
彼が、彼だけが私を殺さなかった。
彼の攻撃は確かに私を苛んだけど、色々避けるアドバイスをして、最後には絶対横抱きにして手当てして、隙間だらけの檻に入れた。
三回目には彼は呆れて私を見逃した。
彼とデートして、うかれていたけど、キス出来ない意味の好きだと言われて心底落ち込んだ。
私はいつの間にか彼を好きになっていた。
それでも彼の優しさに、友情に応えるため、頑張って地下世界を解放し、平和に導いた、はずだった。
「これからもお前と俺様は、一番の親友だな。****。」
それだけならまだ良かった。なのに、彼が呼ぶ私の名前は私の名前ではなかった。
それでも精一杯の笑顔を作れた私を褒めて欲しい。
彼と私はいつまで経っても友人のままで、しかも彼が私を呼ぶ名前は私の名前ではない。
苦しくて苦しくて仕方がない。
その苦しみに気づいていたのは恐らくずっと私を見守ってくれたサンズだけで、しかし弟を愛してやまない彼がその違和感を指摘するはずはない。
リセットはできない、セーブもロードも意味はない。
追い詰められていく私の近くにいたのはサンズだった。
皆の前では笑顔を絶やさず、彼に別の名前で呼ばれても微笑みを返し、サンズの前では泣いていた。彼は黙ってただ聞いてくれた。
そしてある日サンズから「話がある。」と言われた。
サンズは珍しく私と目を合わせなかった。
きっと愛想を尽かされてしまったんだ。
そう思った私は逃げ出した。覚悟なんてなかった。
逃げ出して、しまった。
冷たい雪山に向かって、走って走って、一瞬目の前が真っ暗になって、
気づいたら遺跡にいた。
最初は単純にまた地下世界に落ちたんだと思った。
もしくは知らないうちにリセットしちゃったんだと思った。
でも、最初からフラウィが優しい。
トリエルママのパイが美味しくない。
ここは似ているけど違う世界に来ちゃったんだと分かった。
殺すか殺されるかだとも言っていた。
ああ、そうだよ。
これが普通だ。
だってそうでしょう。
お前たちに攻撃されたら私は死んでしまうのに、なぜ前の世界の彼らは分からないのか。
彼らを見逃す度、ずっと、ずっとそう思っていた。
でも自分は殺す気も殺される気もない。
避けて躱して見逃して、先に進んで、またサンズに会った。
嬉しかった。
顔を見たと思ったら泣き出した私は恐怖に震えていると思ったのだろう。
先手必勝とばかりに攻撃しようとしたはずの彼に私は抱きついていた。
サンズ、ごめんなさい。逃げ出して、ごめんなさい。
くっつくな離れろ、と言った後によく分からない罵声を浴びせていた彼は抱きついたまま泣き続け、イヤイヤを繰り返す私に最終的に根負けした。
多分このサンズも、“知っている”サンズなんだ。
私は泣きながら全部話して、サンズはわかったわかったとよく分からない返事をした。
そして私はサンズの家に飼われることになった。
そこでようやくボスに会った。
最初は本当に問答無用で殺されかけた。
だから逆にホッとしてしまった、
ボスはパピルスじゃないんだって、今までの皆とは全く違うんだって。
だってフラウィは最後に会った時と同じかそれより優しいくらいしか違わなかった。
トリエルママは怖くてパイはまずかったけどママは本当は優しかった。
サンズはちょっと乱暴で、エッチな事や悪いことを教えてくれるけどやっぱり優しい。
ボスは、エッジ様は私に首輪を付けて乱暴に扱う。
人前でもお構いなしに私を傷つけて楽しむ。
家に戻ると餌だと言って地べたに置いた器に餌を寄越す。
そうやって投げて寄越したラザニアが絶品すぎる。
地面を這いつくばらせて汚した服を引きちぎり、
「そんな汚らしいザマではアンダインにもましてや王になど献上出来ないな。」と言って献上できるまでは汚すなと柔らかくて綺麗な服を無理やり着せる。
たくさん傷を作って包帯だらけにしては
「まだ献上出来ない、出来損ないだ。」と罵る。
サンズに私の面倒を見させておいて、サンズが私を汚すとありったけの罵詈雑言を持ってサンズを叱る。
檻に入っていた私が熱を出したのでサンズが部屋に入れてくれたのにペットの面倒もきちんと見れない愚兄と言ってサンズを叱る。
風邪をひかれては困るので部屋で私を飼うことにしたサンズが私を部屋の隅ではなく、暖を取るためにベッドに引き入れても怒る。
サンズに教わった「ボスも喜ぶ」方法を試そうとしても顔を真っ赤にして叱る。
何をしても何を言ってもサンズと一緒に怒られる。
毎日毎日毎日毎日。
それでもああ、彼はパピルスと違うと実感して、嬉しかった。
なのにどうして。
今日は夜遅くに二人ともベロンベロンに酔っ払って帰って来た。
いつもだったらどちらかは素面なので水を用意するくらいで私はお世話する事なんてない。
まだ意識がはっきりとしているはずのサンズが、私にボスの世話を頼んで、私とボスをボスの部屋に押し込んだ。
サンズは珍しく私と目を合わせなかった。
初めて入るボスの部屋。
ああ、なんてこと。
今まで何度も通った彼の部屋が。
スーパーカーを模したベッドも、たくさんのヒーローフィギュアも、骸骨の大きな旗も、隅っこにひっそり佇むパソコンも、クローゼットの扉も、
スペシャル攻撃の骨さえも。
寸分違わずそこにあった。
胸に込み上げる吐き気に耐えながらお酒臭いボスの体をベッドに引き上げて座らせる。
確かボスはお酒を飲めないのでは無かったか。
ふと一度だけ見たグリルビーを思い出す。
知っているグリルビーとは少し違う紫色の彼。
無言で私に手を差し伸べた彼に私の首輪ごとリードで引き離し、
「誰が主人かわかっていないようだな、……色目を使うな。」
と睨みつけたボスに震え上がった。
サンズはよくグリルビーズに行くと言っていたがボスも行くとは聞いていない。
まあ、彼もお酒を飲みたい日もあるんだろう。
「ボス、大丈夫?お水飲む?」
うっすらと目を開けたボスの眼窩が私を捉える。
こちらを見たまま何も言わず、私もどうしたらいいか分からない。
返事がないのでとりあえず水を手に取ろうと後ろを向いたその時。
「どこへ、いく?」
ボスの腕が体が、私を捕らえた。
「ここに、いてくれ。」
熱い吐息が耳をくすぐる。
私を抱き込むその体は、その感触は紛れもなくパピルスのそれで。
今では遠くなった“友人”に想いを馳せ、涙が溢れた。
「なぜ、なく?」
ボスが私の体を強引に自分の方へ向かせた。
誤魔化せない。
額を突き合わせる格好で、ボスの光のない目がこちらを見ている。
気遣わしげな声色に、私はますますパピルスを思い出して涙が止まらない。
「貴様に泣かれると、我輩はどうしたらいいか分からなくなる。」
ボスの指がそっと涙を拭う。
パピルスには泣いたところなんか見せたことなかった。
ボスは、ペットに泣かれたところでどうということはない。
私はボスの前で泣いてもいいんだ。
力が抜けて、ボスの肩口に顔を寄せた。
びくりとボスの体が揺れる。
私の涙がバトルジャケットに、マフラーに吸い込まれて行く。
「プレイヤー 。」
今度は私が体を揺らす番だった。
私は、私はずっと、その声で名前を呼ばれたかった。
何よりも彼に、私の名前を呼んで欲しかったのだ。
「プレイヤー 、お前には我輩の前で泣いて欲しくない。笑っていてほしい。優しくしたい。甘やかしたい。他のモンスターには渡したくない。」
ぎゅうと胸が、タマシイが詰まる。
それは、
「プレイヤー お前を、愛している。」
わかっていた。本当はわかっていたんだ。
自分に向ける彼の眼差しを、弱いサンズをモンスターから守るためあえて向ける厳しさを、自分のモノだと誇示すれば、私とサンズを守れるのだという意思を、そして近すぎる私とサンズに対する悋気を、そして私に対する独占欲を。
ああ、ボスはこんな所まで彼とは違うのだ。
彼と違う事に絶望したくなくて、気づかないふりをしていた。
彼と違う彼は好ましい。だからこそ、
「我輩の名を呼んでくれ。」
そのお願いは、聞けない。
ひどく苦しそうに、切なそうな声で懇願するボスの言葉に息を呑んだ。
でも呼べない、呼べるはずがない。
呼んでしまったら気付かれてしまう。
だって彼の名は私の、初恋相手と同じだから。
イビト山からモンスターの世界に落ちて、モンスターからの戯れに何度も殺されそうになった。
その時の彼らが殺すつもりでなかったのは今ではわかっているけど
私はとても怖かった。
笑顔で殺しにかかる彼らは一体何なのか、どういうつもりなのかとひどく混乱していた。
彼が、彼だけが私を殺さなかった。
彼の攻撃は確かに私を苛んだけど、色々避けるアドバイスをして、最後には絶対横抱きにして手当てして、隙間だらけの檻に入れた。
三回目には彼は呆れて私を見逃した。
彼とデートして、うかれていたけど、キス出来ない意味の好きだと言われて心底落ち込んだ。
私はいつの間にか彼を好きになっていた。
それでも彼の優しさに、友情に応えるため、頑張って地下世界を解放し、平和に導いた、はずだった。
「これからもお前と俺様は、一番の親友だな。****。」
それだけならまだ良かった。なのに、彼が呼ぶ私の名前は私の名前ではなかった。
それでも精一杯の笑顔を作れた私を褒めて欲しい。
彼と私はいつまで経っても友人のままで、しかも彼が私を呼ぶ名前は私の名前ではない。
苦しくて苦しくて仕方がない。
その苦しみに気づいていたのは恐らくずっと私を見守ってくれたサンズだけで、しかし弟を愛してやまない彼がその違和感を指摘するはずはない。
リセットはできない、セーブもロードも意味はない。
追い詰められていく私の近くにいたのはサンズだった。
皆の前では笑顔を絶やさず、彼に別の名前で呼ばれても微笑みを返し、サンズの前では泣いていた。彼は黙ってただ聞いてくれた。
そしてある日サンズから「話がある。」と言われた。
サンズは珍しく私と目を合わせなかった。
きっと愛想を尽かされてしまったんだ。
そう思った私は逃げ出した。覚悟なんてなかった。
逃げ出して、しまった。
冷たい雪山に向かって、走って走って、一瞬目の前が真っ暗になって、
気づいたら遺跡にいた。
最初は単純にまた地下世界に落ちたんだと思った。
もしくは知らないうちにリセットしちゃったんだと思った。
でも、最初からフラウィが優しい。
トリエルママのパイが美味しくない。
ここは似ているけど違う世界に来ちゃったんだと分かった。
殺すか殺されるかだとも言っていた。
ああ、そうだよ。
これが普通だ。
だってそうでしょう。
お前たちに攻撃されたら私は死んでしまうのに、なぜ前の世界の彼らは分からないのか。
彼らを見逃す度、ずっと、ずっとそう思っていた。
でも自分は殺す気も殺される気もない。
避けて躱して見逃して、先に進んで、またサンズに会った。
嬉しかった。
顔を見たと思ったら泣き出した私は恐怖に震えていると思ったのだろう。
先手必勝とばかりに攻撃しようとしたはずの彼に私は抱きついていた。
サンズ、ごめんなさい。逃げ出して、ごめんなさい。
くっつくな離れろ、と言った後によく分からない罵声を浴びせていた彼は抱きついたまま泣き続け、イヤイヤを繰り返す私に最終的に根負けした。
多分このサンズも、“知っている”サンズなんだ。
私は泣きながら全部話して、サンズはわかったわかったとよく分からない返事をした。
そして私はサンズの家に飼われることになった。
そこでようやくボスに会った。
最初は本当に問答無用で殺されかけた。
だから逆にホッとしてしまった、
ボスはパピルスじゃないんだって、今までの皆とは全く違うんだって。
だってフラウィは最後に会った時と同じかそれより優しいくらいしか違わなかった。
トリエルママは怖くてパイはまずかったけどママは本当は優しかった。
サンズはちょっと乱暴で、エッチな事や悪いことを教えてくれるけどやっぱり優しい。
ボスは、エッジ様は私に首輪を付けて乱暴に扱う。
人前でもお構いなしに私を傷つけて楽しむ。
家に戻ると餌だと言って地べたに置いた器に餌を寄越す。
そうやって投げて寄越したラザニアが絶品すぎる。
地面を這いつくばらせて汚した服を引きちぎり、
「そんな汚らしいザマではアンダインにもましてや王になど献上出来ないな。」と言って献上できるまでは汚すなと柔らかくて綺麗な服を無理やり着せる。
たくさん傷を作って包帯だらけにしては
「まだ献上出来ない、出来損ないだ。」と罵る。
サンズに私の面倒を見させておいて、サンズが私を汚すとありったけの罵詈雑言を持ってサンズを叱る。
檻に入っていた私が熱を出したのでサンズが部屋に入れてくれたのにペットの面倒もきちんと見れない愚兄と言ってサンズを叱る。
風邪をひかれては困るので部屋で私を飼うことにしたサンズが私を部屋の隅ではなく、暖を取るためにベッドに引き入れても怒る。
サンズに教わった「ボスも喜ぶ」方法を試そうとしても顔を真っ赤にして叱る。
何をしても何を言ってもサンズと一緒に怒られる。
毎日毎日毎日毎日。
それでもああ、彼はパピルスと違うと実感して、嬉しかった。
なのにどうして。
今日は夜遅くに二人ともベロンベロンに酔っ払って帰って来た。
いつもだったらどちらかは素面なので水を用意するくらいで私はお世話する事なんてない。
まだ意識がはっきりとしているはずのサンズが、私にボスの世話を頼んで、私とボスをボスの部屋に押し込んだ。
サンズは珍しく私と目を合わせなかった。
初めて入るボスの部屋。
ああ、なんてこと。
今まで何度も通った彼の部屋が。
スーパーカーを模したベッドも、たくさんのヒーローフィギュアも、骸骨の大きな旗も、隅っこにひっそり佇むパソコンも、クローゼットの扉も、
スペシャル攻撃の骨さえも。
寸分違わずそこにあった。
胸に込み上げる吐き気に耐えながらお酒臭いボスの体をベッドに引き上げて座らせる。
確かボスはお酒を飲めないのでは無かったか。
ふと一度だけ見たグリルビーを思い出す。
知っているグリルビーとは少し違う紫色の彼。
無言で私に手を差し伸べた彼に私の首輪ごとリードで引き離し、
「誰が主人かわかっていないようだな、……色目を使うな。」
と睨みつけたボスに震え上がった。
サンズはよくグリルビーズに行くと言っていたがボスも行くとは聞いていない。
まあ、彼もお酒を飲みたい日もあるんだろう。
「ボス、大丈夫?お水飲む?」
うっすらと目を開けたボスの眼窩が私を捉える。
こちらを見たまま何も言わず、私もどうしたらいいか分からない。
返事がないのでとりあえず水を手に取ろうと後ろを向いたその時。
「どこへ、いく?」
ボスの腕が体が、私を捕らえた。
「ここに、いてくれ。」
熱い吐息が耳をくすぐる。
私を抱き込むその体は、その感触は紛れもなくパピルスのそれで。
今では遠くなった“友人”に想いを馳せ、涙が溢れた。
「なぜ、なく?」
ボスが私の体を強引に自分の方へ向かせた。
誤魔化せない。
額を突き合わせる格好で、ボスの光のない目がこちらを見ている。
気遣わしげな声色に、私はますますパピルスを思い出して涙が止まらない。
「貴様に泣かれると、我輩はどうしたらいいか分からなくなる。」
ボスの指がそっと涙を拭う。
パピルスには泣いたところなんか見せたことなかった。
ボスは、ペットに泣かれたところでどうということはない。
私はボスの前で泣いてもいいんだ。
力が抜けて、ボスの肩口に顔を寄せた。
びくりとボスの体が揺れる。
私の涙がバトルジャケットに、マフラーに吸い込まれて行く。
「プレイヤー 。」
今度は私が体を揺らす番だった。
私は、私はずっと、その声で名前を呼ばれたかった。
何よりも彼に、私の名前を呼んで欲しかったのだ。
「プレイヤー 、お前には我輩の前で泣いて欲しくない。笑っていてほしい。優しくしたい。甘やかしたい。他のモンスターには渡したくない。」
ぎゅうと胸が、タマシイが詰まる。
それは、
「プレイヤー お前を、愛している。」
わかっていた。本当はわかっていたんだ。
自分に向ける彼の眼差しを、弱いサンズをモンスターから守るためあえて向ける厳しさを、自分のモノだと誇示すれば、私とサンズを守れるのだという意思を、そして近すぎる私とサンズに対する悋気を、そして私に対する独占欲を。
ああ、ボスはこんな所まで彼とは違うのだ。
彼と違う事に絶望したくなくて、気づかないふりをしていた。
彼と違う彼は好ましい。だからこそ、
「我輩の名を呼んでくれ。」
そのお願いは、聞けない。