Undertale +AU
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ああいらっしゃいませ。お客様?
ええ、ここは今日で閉めるんです。
ほら、バリアが壊されて、地上に行けるようになったでしょう。
居ないと思われていたが僅かばかりの生き残っていた人間たちと協定とやらが結ばれて、移住できるってんで、ここも人が減ってねえ。
表のドレスはどうしたのかって?
ははああんた、うちの裏家業知ってるね?
まあ今更だけどうちは仕立て屋ではあるが裏では逃がし屋もやっていたのさ。
モンスターが死んでチリになったことにして、安全なところに逃す。
モンスターのチリなんて判別つかないからね。
そのモンスターがよく身につけていた物と幾らかのそれらしいチリを揃えれば、何とかなるもんだよ。
表のドレスのことを聞くのはその合図。
でも本当は「表のドレスが無い。」が正解なんだ。
逃がし屋としての仕事は注文のふりしてもらう感じだね。
だけどね、1度だけ、本当にそのドレスを買いに来たモンスターがいたんだよ。
ほら、この地下世界は本当に荒れていただろう。
殺すか、殺されるかってね。
だから誰もあのドレスなんか見向きもしなかった。
俺は腕に自信があったから、なんだか腹が立っちまってね。
それで逃し屋を始めて憂さを晴らしていたのさ。
だから初めてあのドレスを欲しいと言われた時はたまげたね。
誰だったと思う?
ふふ、それがあのロイヤルガード、パピルス様だったのさ。
そうそう、おっかなくて尖ってるって言うんでエッジ様とも呼ばれていたね。
あれは今も変わらない、雪の降る寒い夕方のことだった。
え?スノーディンはいつも雪が降っていて寒いだろうって?
まあそう言うなよ、雰囲気ってやつだ。
からんからん
来客を知らせるベルが鳴る。
ああ、またか。
店主はさほど感慨を覚える事もなく入り口へ顔を向けた。
最近多くなった殺戮のため、偽装用のチリには事欠かない。
それでも足りないくらい皆どこかへ逃げたがっている。
どこに逃げても見つかれば同じだと言うのに。
しかしその姿を認めるや否や、ピシリと体が固まる。
赤いマフラー、肩の尖った黒いバトルボディに赤い手袋、黒いタイトなズボンにハイヒールのブーツ。
凶暴さをより示す鋭い歯と赤い瞳。
そして何よりも特徴的なのは左の眼窩に入った三本の傷。
ロイヤルガードの司令官、パピルスだ。
とうとうバレたか?
店主の背中に冷や汗が伝う。
もう終わりだ逃げ否死
……?
しかしパピルスは何も言わなかった。
それどころか何やらモジモジと体をくねらせ、言い淀んでいる。
もしかしたら生き延びられるかもしれない。
店主は努めて明るい声を出した。
「ええ?ああ、これはこれはパピルス様。
このような仕立て屋なんぞに一体全体どう言うご用件でしょう?」
らしくなく小声で何やらぶつぶつと言っている。
店主はそれを慎重に聞き取ったが自身の耳を疑った。
「え?表のドレス?が欲しい?」
初めて言われた言葉だった。
胸の奥から筆舌に尽くし難い喜びが湧き上がる。
しかし相手はあのパピルスだ。
油断はできない。
「あの、ええっとあれはサンプルなんです。ご指定いただければどのような物でもお望みのままにお仕立ていたします。
どう言うものがお好みで?」
そのまま購入?するつもりだったのだろう。
パピルスは傍目に気の毒なほど慌てていた。
頬を赤らめ(スケルトンなのに)、手をバタバタと上下に振っている。
まるで純情な青年のようだ。
店主は奇妙な感覚を覚えた。
「同じもの、はあ。
素材などご希望はございますか。」
このままでは埒が開かないと店主は次々に質問する。
「肌に少しも痛みや不快さを与えないもの?」
スケルトンに肌は無い。
感覚はあると聞いたが寒さ暑さもあまり感じないようだ。
しかしこちらもプロである。相手の要望に100%応える気概はある。
「肌触りのよいシルク、最上級のものがよろしゅうございますね。
ちょうど本日入荷したものがございます。
真っ白に見えますがこう、光を当てますと虹が見えましょう?」
パピルスはひどく満足げだ。
「ええ、表のものと同じ素材です。
なかなか手に入らないんです、ええ。」
店主はいよいよ自身の命の安泰に安堵を覚えた。
「サイズはいかほどで?」
しかしそれを尋ねるとパピルスは今度はピシリと固まった。
やがてぎこちないながらも色々と伝えようとしてくる。
自分の腰より下の身長
まあそれくらいの大きさのモンスターはいくらでもいる。
誰かへのプレゼントまたは献上物かもしれなかった。
しかしその後の身振り手振りに店主は再び硬直する。
優しい手つきで撫でられる頭
掌で包み込まれる頬
片手で容易に絞められるほどの細い首
抱きこむと覆い被されるくらいの大きさ
ソファに座って足の間にちょこんと収まる大きさ
抱き上げた時の顔と腰、足の位置
抱きついてきた時の手の位置
途中不穏ながらいつも通りの表現はあるものの、示された表現に理解が追いつかない。
腕のいいと自称するだけあって店主はこの地下世界のモンスターのサイズはほぼ全て把握している。
だと言うのに誰のことか検討が付かない。
骨格はスケルトンと同じだがそのサイズのスケルトンはいない。
何よりパピルスが先ほどからその誰かを表現するそのさまは、
まるで愛しい愛しいと乞い願うような。
店主は混乱した。
とっさにパピルスには兄がいることを思い出した。
駄犬だ愚兄だと散々罵倒の限りを尽くし表現される兄が。
彼は身長こそは確かに先ほど示された大きさと同じくらいだ。
だから本当にうっかりと、失言してしまったのだ。
「えーあーはい、あのー。」
ごくりと生唾を飲み込む。
「サンズ様ですか。
いえしかしサンズ様がお召しになるには些か幅が。」
結論から言えば店主は死にかけた。
床を舐めるように這いつくばり、許しを乞い、悲鳴を上げた。
チリになる一歩手前だった。
パピルスの顔はますます紅潮していたが、なんとか許された。
過剰なまでの代金を律儀にも置いて行ったのも意外だった。
店主は不眠不休でドレスの制作に取り掛かった。
細心の注意を払い、注文通り傷付いた肌にも障らぬよう縫い目は全て共布で覆った。
同じ布で作ったリボンはお詫び代りのサービスである。
恐る恐る届けに行った時、特に何も言われなかったが、その後も同じ布地と仕立てで何度も注文が入ったところを見るに満足いただけたのだろう。
しかし店主には終ぞその最初のドレスを着たモンスターを見ることは無かった。
ところであんた、そのしっかり着込んだ、今のあんたの顔と同じくらい赤いジャケットの下。
ああ、その真っ白だけど光が当たると虹が見えるスカートの裾。
それにそのリボン。
もしかして、あんたが……
ええ、ここは今日で閉めるんです。
ほら、バリアが壊されて、地上に行けるようになったでしょう。
居ないと思われていたが僅かばかりの生き残っていた人間たちと協定とやらが結ばれて、移住できるってんで、ここも人が減ってねえ。
表のドレスはどうしたのかって?
ははああんた、うちの裏家業知ってるね?
まあ今更だけどうちは仕立て屋ではあるが裏では逃がし屋もやっていたのさ。
モンスターが死んでチリになったことにして、安全なところに逃す。
モンスターのチリなんて判別つかないからね。
そのモンスターがよく身につけていた物と幾らかのそれらしいチリを揃えれば、何とかなるもんだよ。
表のドレスのことを聞くのはその合図。
でも本当は「表のドレスが無い。」が正解なんだ。
逃がし屋としての仕事は注文のふりしてもらう感じだね。
だけどね、1度だけ、本当にそのドレスを買いに来たモンスターがいたんだよ。
ほら、この地下世界は本当に荒れていただろう。
殺すか、殺されるかってね。
だから誰もあのドレスなんか見向きもしなかった。
俺は腕に自信があったから、なんだか腹が立っちまってね。
それで逃し屋を始めて憂さを晴らしていたのさ。
だから初めてあのドレスを欲しいと言われた時はたまげたね。
誰だったと思う?
ふふ、それがあのロイヤルガード、パピルス様だったのさ。
そうそう、おっかなくて尖ってるって言うんでエッジ様とも呼ばれていたね。
あれは今も変わらない、雪の降る寒い夕方のことだった。
え?スノーディンはいつも雪が降っていて寒いだろうって?
まあそう言うなよ、雰囲気ってやつだ。
からんからん
来客を知らせるベルが鳴る。
ああ、またか。
店主はさほど感慨を覚える事もなく入り口へ顔を向けた。
最近多くなった殺戮のため、偽装用のチリには事欠かない。
それでも足りないくらい皆どこかへ逃げたがっている。
どこに逃げても見つかれば同じだと言うのに。
しかしその姿を認めるや否や、ピシリと体が固まる。
赤いマフラー、肩の尖った黒いバトルボディに赤い手袋、黒いタイトなズボンにハイヒールのブーツ。
凶暴さをより示す鋭い歯と赤い瞳。
そして何よりも特徴的なのは左の眼窩に入った三本の傷。
ロイヤルガードの司令官、パピルスだ。
とうとうバレたか?
店主の背中に冷や汗が伝う。
もう終わりだ逃げ否死
……?
しかしパピルスは何も言わなかった。
それどころか何やらモジモジと体をくねらせ、言い淀んでいる。
もしかしたら生き延びられるかもしれない。
店主は努めて明るい声を出した。
「ええ?ああ、これはこれはパピルス様。
このような仕立て屋なんぞに一体全体どう言うご用件でしょう?」
らしくなく小声で何やらぶつぶつと言っている。
店主はそれを慎重に聞き取ったが自身の耳を疑った。
「え?表のドレス?が欲しい?」
初めて言われた言葉だった。
胸の奥から筆舌に尽くし難い喜びが湧き上がる。
しかし相手はあのパピルスだ。
油断はできない。
「あの、ええっとあれはサンプルなんです。ご指定いただければどのような物でもお望みのままにお仕立ていたします。
どう言うものがお好みで?」
そのまま購入?するつもりだったのだろう。
パピルスは傍目に気の毒なほど慌てていた。
頬を赤らめ(スケルトンなのに)、手をバタバタと上下に振っている。
まるで純情な青年のようだ。
店主は奇妙な感覚を覚えた。
「同じもの、はあ。
素材などご希望はございますか。」
このままでは埒が開かないと店主は次々に質問する。
「肌に少しも痛みや不快さを与えないもの?」
スケルトンに肌は無い。
感覚はあると聞いたが寒さ暑さもあまり感じないようだ。
しかしこちらもプロである。相手の要望に100%応える気概はある。
「肌触りのよいシルク、最上級のものがよろしゅうございますね。
ちょうど本日入荷したものがございます。
真っ白に見えますがこう、光を当てますと虹が見えましょう?」
パピルスはひどく満足げだ。
「ええ、表のものと同じ素材です。
なかなか手に入らないんです、ええ。」
店主はいよいよ自身の命の安泰に安堵を覚えた。
「サイズはいかほどで?」
しかしそれを尋ねるとパピルスは今度はピシリと固まった。
やがてぎこちないながらも色々と伝えようとしてくる。
自分の腰より下の身長
まあそれくらいの大きさのモンスターはいくらでもいる。
誰かへのプレゼントまたは献上物かもしれなかった。
しかしその後の身振り手振りに店主は再び硬直する。
優しい手つきで撫でられる頭
掌で包み込まれる頬
片手で容易に絞められるほどの細い首
抱きこむと覆い被されるくらいの大きさ
ソファに座って足の間にちょこんと収まる大きさ
抱き上げた時の顔と腰、足の位置
抱きついてきた時の手の位置
途中不穏ながらいつも通りの表現はあるものの、示された表現に理解が追いつかない。
腕のいいと自称するだけあって店主はこの地下世界のモンスターのサイズはほぼ全て把握している。
だと言うのに誰のことか検討が付かない。
骨格はスケルトンと同じだがそのサイズのスケルトンはいない。
何よりパピルスが先ほどからその誰かを表現するそのさまは、
まるで愛しい愛しいと乞い願うような。
店主は混乱した。
とっさにパピルスには兄がいることを思い出した。
駄犬だ愚兄だと散々罵倒の限りを尽くし表現される兄が。
彼は身長こそは確かに先ほど示された大きさと同じくらいだ。
だから本当にうっかりと、失言してしまったのだ。
「えーあーはい、あのー。」
ごくりと生唾を飲み込む。
「サンズ様ですか。
いえしかしサンズ様がお召しになるには些か幅が。」
結論から言えば店主は死にかけた。
床を舐めるように這いつくばり、許しを乞い、悲鳴を上げた。
チリになる一歩手前だった。
パピルスの顔はますます紅潮していたが、なんとか許された。
過剰なまでの代金を律儀にも置いて行ったのも意外だった。
店主は不眠不休でドレスの制作に取り掛かった。
細心の注意を払い、注文通り傷付いた肌にも障らぬよう縫い目は全て共布で覆った。
同じ布で作ったリボンはお詫び代りのサービスである。
恐る恐る届けに行った時、特に何も言われなかったが、その後も同じ布地と仕立てで何度も注文が入ったところを見るに満足いただけたのだろう。
しかし店主には終ぞその最初のドレスを着たモンスターを見ることは無かった。
ところであんた、そのしっかり着込んだ、今のあんたの顔と同じくらい赤いジャケットの下。
ああ、その真っ白だけど光が当たると虹が見えるスカートの裾。
それにそのリボン。
もしかして、あんたが……