私と彼女と彼の初七日
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あの世絶景100選の1つ、桃源郷。
天国の住人はほとんどここに住んでいる。
穏やかにのんびりと過ごすのが常である。
それこそ何十年でも何百年でも、何千年でもだ。
酒はうまいし、姉ちゃんは綺麗だ、は伊達ではない。
ある程度の能力や権限はあるにしても、もちろん行く場所に制限はないから、自由に動き回れる。
そう、それが地獄であったとしても。
中国の神獣、白澤も例にもれず、自由であった。
今日も今日とて集合地獄で放蕩三昧。
しかしそれを咎めるものは誰もいない。
居ようはずもなかった。
朝までしこたま飲んで帰ってきた白澤は、自室のさらに奥にある、普段は無い扉が開いているのを見つけた。
その顔からは笑みが消え、さっと酔いが覚める。
白澤は体を滑らせる様にしてその部屋へ潜り込んだ。
ふわりと甘い香が白澤の鼻をくすぐる。
真っ白いその部屋は真ん中にたった一つ、円卓が置かれている。
さらにその上には絹でできたクッションがあり、その上にほんのりと温かみを感じさせる白い真珠が鎮座していた。
白澤はじっとそれを眺めてから、ほう、とため息をついた。
白澤はその真珠をそっと掌にとり、両手を合わせて包み込み、その甲に唇を寄せた。
しばらくそうした後に満足したのか懐から取り出した純白のハンカチで柔らかく真珠を拭き上げると、円卓の上にあるガラスケースへ優しく転がした。
中に敷かれたビロード生地がそっと真珠を受け入れる。
様々な色味の真珠が5個あるのを確認し、白澤はそっと蓋を閉めた。
すぐそばの棚から練香で出来た人形と真珠を取り出すとその人形の真ん中に真珠をぐいと押し込み、表面を丹念に撫でる。
先ほどの円卓に置かれたクッションに今度はぽん、と無造作に置くと振り向きもせずに部屋を出て、扉を後ろ手に閉めた。
途端に先ほどまであった扉は壁と同化し、見えなくなる。
白澤は扉だった壁を背にずるずると座り込んだ。
後、3回。それで僕の罪は消える。
彼女を探しに行こう、とは思わなかった訳ではない。
しかしおそらくあの鬼が必死になって探すだろう。
それを上から見物するのも悪くない。
はは、と乾いた笑いが白澤の口からこぼれた。
何の罪か、何の罰か。
誰が決めたものでも無い。
自分の存在が人間にどんな影響をもたらすか、それを考えなかった若かりし頃の自分。
その報いを望んで受けているだけ。所詮自己満足に過ぎない。
遥か昔、たまたま日本へ遊びに出て、その先で出会った子どもが面白くて、世の理と知識を与え、結果として加護を与えてしまったためにその子が酷い死に方をした。
魂に刻まれたその加護は彼女のヒトとしての寿命を縮め、人ならざる者に変えてしまう。
しかしそれも数回輪廻を繰り返せばまっさらな状態に戻れる。
合計8回でそれが終われば、あとは彼女は自由だ。
本人が望めば天国でずっと暮らすことも、他の人間と同じ様に何回でも何万回でも人間をやってもいい。
そう考えていたのに。
あの鬼が、邪魔をした。
1番目の彼女のそばにあれがいたのは誤算だった。
2番目の彼にあれが何度も会いに行っていたのには気付かなかった。
だから隠した。
あの鬼にも、本人にも、閻魔でさえ。
3番目の彼女の関係者は全て手を回して早急に此岸に送った。
4番目の彼は幼いうちに時代がこちらに寄越したので賽の河原に置きもせずに此岸に送った。
今回の彼女は3番目の関係者と出会っているが、そのおかげで記憶が混じり、やり直せている、はずだ。
「牡丹、牡丹……会いたい。」
天国の住人はほとんどここに住んでいる。
穏やかにのんびりと過ごすのが常である。
それこそ何十年でも何百年でも、何千年でもだ。
酒はうまいし、姉ちゃんは綺麗だ、は伊達ではない。
ある程度の能力や権限はあるにしても、もちろん行く場所に制限はないから、自由に動き回れる。
そう、それが地獄であったとしても。
中国の神獣、白澤も例にもれず、自由であった。
今日も今日とて集合地獄で放蕩三昧。
しかしそれを咎めるものは誰もいない。
居ようはずもなかった。
朝までしこたま飲んで帰ってきた白澤は、自室のさらに奥にある、普段は無い扉が開いているのを見つけた。
その顔からは笑みが消え、さっと酔いが覚める。
白澤は体を滑らせる様にしてその部屋へ潜り込んだ。
ふわりと甘い香が白澤の鼻をくすぐる。
真っ白いその部屋は真ん中にたった一つ、円卓が置かれている。
さらにその上には絹でできたクッションがあり、その上にほんのりと温かみを感じさせる白い真珠が鎮座していた。
白澤はじっとそれを眺めてから、ほう、とため息をついた。
白澤はその真珠をそっと掌にとり、両手を合わせて包み込み、その甲に唇を寄せた。
しばらくそうした後に満足したのか懐から取り出した純白のハンカチで柔らかく真珠を拭き上げると、円卓の上にあるガラスケースへ優しく転がした。
中に敷かれたビロード生地がそっと真珠を受け入れる。
様々な色味の真珠が5個あるのを確認し、白澤はそっと蓋を閉めた。
すぐそばの棚から練香で出来た人形と真珠を取り出すとその人形の真ん中に真珠をぐいと押し込み、表面を丹念に撫でる。
先ほどの円卓に置かれたクッションに今度はぽん、と無造作に置くと振り向きもせずに部屋を出て、扉を後ろ手に閉めた。
途端に先ほどまであった扉は壁と同化し、見えなくなる。
白澤は扉だった壁を背にずるずると座り込んだ。
後、3回。それで僕の罪は消える。
彼女を探しに行こう、とは思わなかった訳ではない。
しかしおそらくあの鬼が必死になって探すだろう。
それを上から見物するのも悪くない。
はは、と乾いた笑いが白澤の口からこぼれた。
何の罪か、何の罰か。
誰が決めたものでも無い。
自分の存在が人間にどんな影響をもたらすか、それを考えなかった若かりし頃の自分。
その報いを望んで受けているだけ。所詮自己満足に過ぎない。
遥か昔、たまたま日本へ遊びに出て、その先で出会った子どもが面白くて、世の理と知識を与え、結果として加護を与えてしまったためにその子が酷い死に方をした。
魂に刻まれたその加護は彼女のヒトとしての寿命を縮め、人ならざる者に変えてしまう。
しかしそれも数回輪廻を繰り返せばまっさらな状態に戻れる。
合計8回でそれが終われば、あとは彼女は自由だ。
本人が望めば天国でずっと暮らすことも、他の人間と同じ様に何回でも何万回でも人間をやってもいい。
そう考えていたのに。
あの鬼が、邪魔をした。
1番目の彼女のそばにあれがいたのは誤算だった。
2番目の彼にあれが何度も会いに行っていたのには気付かなかった。
だから隠した。
あの鬼にも、本人にも、閻魔でさえ。
3番目の彼女の関係者は全て手を回して早急に此岸に送った。
4番目の彼は幼いうちに時代がこちらに寄越したので賽の河原に置きもせずに此岸に送った。
今回の彼女は3番目の関係者と出会っているが、そのおかげで記憶が混じり、やり直せている、はずだ。
「牡丹、牡丹……会いたい。」