私と彼女と彼の初七日
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酷く眩しい光に照らされた気がして、彼女は目を開けた。
見たことのない部屋が視界に飛び込み、慌てて身を起こす。
白いドーム型の天井には照明がなく、壁と天井そのものが発光しているように見える。
そして床一面を虹色の花が埋め尽くしている。
自分はまだ夢を見ているのだろうか。
それとも既にここは天国なのだろうか。
牡丹は首を傾げた。
自分は悪人でもないが善人とも言い切れない。ごく普通に生き、そして死んだただの人間である。
てっきり三途の川を渡るか、牛頭馬頭に閻魔様の前に引き摺り出されるかと思ったが、とそこまで思い至って顔をしかめる。
女が三途の川を渡る時、とある人におぶわれねばならないと聞く。
自分はそれが嫌で仕方がなかったのでもしかしたら逃げてしまったのだろうか。
しかしそれはそれで自力で渡ると言えば断られることは、ない、はずだ。
とは言えこんな大層な扱いを受ける謂れは無い。
牡丹は自身の身の回りのものを見た。
自分が先ほどまで身を横たえていた寝具は肌触りの良い絹で出来ており、
上掛け布団の上からさらになぜか周りの意匠とはそぐわない黒の着物が掛けられていた。
不思議に思ってそれを手に取ればふわりとあの香が薫る。
死ぬ直前にかいだあの香だ。
やはり自分は死んでいる。
牡丹は少し安堵した。
では、他に何か手掛かりがないかとその着物をしげしげと眺める。
上等な仕立てのそれは袖の丈が短く、所謂振りの部分があまり無い。
襟は襟先、襟下に至るまで、そして袖口も濃い赤で仕上げられている。
着物かと思ったが博物館で見た漢服のようである。
背中にあたる部分を見て、牡丹は息を呑んだ。
「ほおずき?」
一針一針刺繍で施されたそれは大変見事なものだった。
ズキリと胸が痛む。
喉の奥がきゅうとしまり、なぜかホロリと一筋涙がこぼれた。
「なんで、私、」
ほおずき、ほおずき
口の中で何度も繰り返すが答えは出そうにない。
諦めて牡丹は布団から花園の中へ、出来るだけ花を踏まないよう足を踏み入れる。
その身の軽さに彼女は違和感を覚えた。
体が軽い。それに痛みもない。
ふと自身の手を見る。
若返っている。それもかなり。
享年から考えれば有り得ない年齢だ。顔を触ってみるがつるりとしており瑞々しい感触がする。
慌てて鏡を探して辺りを見渡すが生憎ここにはなさそうだ。
まあいい、もう死んでいるのだから、何が起こっても不思議はなかろう。
とりあえず誰か人を探さなくては。
牡丹はほおずきの着物を腕に抱え、ドアらしき方向へ向かった。
見たことのない部屋が視界に飛び込み、慌てて身を起こす。
白いドーム型の天井には照明がなく、壁と天井そのものが発光しているように見える。
そして床一面を虹色の花が埋め尽くしている。
自分はまだ夢を見ているのだろうか。
それとも既にここは天国なのだろうか。
牡丹は首を傾げた。
自分は悪人でもないが善人とも言い切れない。ごく普通に生き、そして死んだただの人間である。
てっきり三途の川を渡るか、牛頭馬頭に閻魔様の前に引き摺り出されるかと思ったが、とそこまで思い至って顔をしかめる。
女が三途の川を渡る時、とある人におぶわれねばならないと聞く。
自分はそれが嫌で仕方がなかったのでもしかしたら逃げてしまったのだろうか。
しかしそれはそれで自力で渡ると言えば断られることは、ない、はずだ。
とは言えこんな大層な扱いを受ける謂れは無い。
牡丹は自身の身の回りのものを見た。
自分が先ほどまで身を横たえていた寝具は肌触りの良い絹で出来ており、
上掛け布団の上からさらになぜか周りの意匠とはそぐわない黒の着物が掛けられていた。
不思議に思ってそれを手に取ればふわりとあの香が薫る。
死ぬ直前にかいだあの香だ。
やはり自分は死んでいる。
牡丹は少し安堵した。
では、他に何か手掛かりがないかとその着物をしげしげと眺める。
上等な仕立てのそれは袖の丈が短く、所謂振りの部分があまり無い。
襟は襟先、襟下に至るまで、そして袖口も濃い赤で仕上げられている。
着物かと思ったが博物館で見た漢服のようである。
背中にあたる部分を見て、牡丹は息を呑んだ。
「ほおずき?」
一針一針刺繍で施されたそれは大変見事なものだった。
ズキリと胸が痛む。
喉の奥がきゅうとしまり、なぜかホロリと一筋涙がこぼれた。
「なんで、私、」
ほおずき、ほおずき
口の中で何度も繰り返すが答えは出そうにない。
諦めて牡丹は布団から花園の中へ、出来るだけ花を踏まないよう足を踏み入れる。
その身の軽さに彼女は違和感を覚えた。
体が軽い。それに痛みもない。
ふと自身の手を見る。
若返っている。それもかなり。
享年から考えれば有り得ない年齢だ。顔を触ってみるがつるりとしており瑞々しい感触がする。
慌てて鏡を探して辺りを見渡すが生憎ここにはなさそうだ。
まあいい、もう死んでいるのだから、何が起こっても不思議はなかろう。
とりあえず誰か人を探さなくては。
牡丹はほおずきの着物を腕に抱え、ドアらしき方向へ向かった。