一章
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数日後、土方さんに武器として銃を渡された。
「今から会う、渋川善次郎という男は入れ墨を持つ囚人ではないが、最近になって樺戸集地艦を出所した。昔の手下を再び集めて小樽近郊に潜伏しているという情報を掴んだ」
「手下ごと仲間に入れようって目論見かい」
「いきなり押しかけて上手くいくものなんですか?それは」
堅苦しいものはやめろと、敬語は外していいとみんなに言われたから敬語はやめて素で話すようにしている、が、どうも土方さんと永倉さんには敬語が外れない。
それは私があの新選組に尊敬の意を持っているからなのだろう。
「昼間に使者を送ったが戻らん」
「そらもう拗れてるじゃねえか」
「ならず者を率いる渋川善次郎の手腕は欲しい。渋川は間違っても殺すな」
「こっちは俺とジジイと名前、それと若いゴロツキで9人だ。永倉じいさんの情報じゃあ盗賊団は12人」
「話が通らなかった場合が怖い。3人差とはいえ私は女だから実質4人差のようなものだし……」
私と牛山がそう言うと土方はウィンチェスターに弾を込めながらこう言った。
「いつだって頭数は当てにならんかった。戦力になったのは命を捨てる覚悟が出来ていた者だけだった」
――生き残りたくば死人になれ――
その言葉には確かな重みがあった。
渋川善次郎がいる建物の前へと辿り着く。
「名前、俺の後ろにいろ」
「わかった」
私は牛山の後ろに隠れるようにして立ち、一同は建物の中へと入っていく。
「久しぶりだな、渋川善次郎」
土方さんがそう言うなり一人がこちらに突っ込んでくる。
ちょいと血の気が多すぎやしないか?
短気は損気ってよく言うじゃない。改め直した方がいいよ。
「めんこい坊主だ、ホレこっちゃ来い」
牛山は男の脇を掴みひょいと上に高い高いする。男は天井を突き破り弱弱しくぴくぴくと痙攣する。
あんなに激しく頭を打てば馬鹿になるのも頷ける。
「あんたが網走に移されて以来かい。樺戸じゃ世話になったよなぁ」
土方さんと渋川が話し始める。
感じたことの無い緊張感に喉が渇く。
土方さんが外から包囲しようとしていた人間の頭を渋川の前に放り投げる。
そして襖の外にいる人間の武装を解除しろ、とも言った。
千里眼でも使っているのかと思うぐらいの察しの良さに味方のはずなのに恐ろしく思えた。
「負けたよ。樺戸じゃあ大人しい男だとみんなが騙されていたが、俺はハナからおっかねえ奴だと見抜いていたぜ」
なるほど、これは…
「ぶっ殺せ…」
最後まで言葉を発することのできなかった渋川の頭に土方さんのウィンチェスターが火を噴く。
交渉は決裂、部屋に血の臭いが広がる。
「皆殺しだッ!一人もここから逃がすなッ!」
土方さんの戦いぶりに思わず見惚れながらも、私の手の中にある銃は盗賊らの頭を撃ち抜いてた。変な所で器用だな、私。
血を浴びながら刀を振るい、銃を撃つ土方さんは、私の目にはとても美しく見えた。
殺し合いは当然我々の勝利で終わる。
血腥い室内から出て、外の新鮮な空気を肺いっぱいに吸い込む。
「名前、大丈夫だったか?」
「大丈夫。人が死ぬのを見るのは初めてではないし、怪我もしてない」
「そうか、大した女だな」
「ありがとう、牛山」
ふと、永倉さんと土方さんが話していた会話を思い出す。
『 私はあと百年生きるつもりだ 』
もしも本当にこの人が百年生きるのならば。
あまりの美しさに涙を流すものが現れるだろう。見てみたいものだ。あの人が遥か先の未来で笑う姿を。
「引き上げるぞ」
土方さんの声で現実に引き戻され馬車に乗り込んだ。