日本に住む特に秀でた能力のない平凡な少女がいた。

強いて言うならば人に何かを教えるのが上手かったり、気遣いが出来る、そんな少女。

その性格ゆえに損をしたり必要以上に疲れてしまうこともしばしばあったのだが、それが下風和音という少女だった。

その日の和音はバイト代が出たため、趣味であり特技でもあるぬいぐるみを自作するためのキットを購入し、休日に完成させてあげようと思い帰り道を歩いているところだった。


「……みだ」


不意に声が聞こえた気がして振り返る。突然声が聞こえたことに驚いたのもあるのだが、和音はそれが自分に向けられたものだと何故か勘違いをしたのだ。小さく首を傾げながらも再び足を動かし始める。

だが先ほど聞こえた声がさらに大きくなって聞こえた。


「ようやく見つけた。君だ。私たちは君を探していた」

「え……？」


　和音が困惑の声を発したのも僅か。和音の意識が強制的に落とされる。