一章
……目を覚ますと、知らない場所にいた。
自分の家でも、友人の家でもない。病院、と言い表すのが一番妥当だろうか?
だが病院にしては簡素、いや、少し古めかしいような気がする。
タイムスリップでもしてしまったかな?はっはっは!
…いかん、友人としたやけ酒のアルコールがまだ抜けていないみたい。じゃなきゃこんなアホなこと思いつかない。
ため息をつきながらベッドの上であたりをきょろきょろと見渡すと、丁度部屋に医者らしき人が入ってきた。
医者は少し驚いた様な顔をした後、私の方に近寄って軽い検診を始める。
「具合は?それとどこか痛むところはないかい?」
「いえ、大丈夫です」
医者は安心したように笑い、部屋を出ていく。
誰か連れてくる、みたいなことを言っていたけれど一体だれを連れてくるんだ?
両親…はないか、あの人たちが私のお見舞いに来るわけがないし。やっぱり友人か、一緒にやけ酒した仲だもんね。
数分後、部屋に軍人?が入ってくる。あれ上官の服装だよね。どこかの資料で見たことがある。
その軍人の目元に大きな傷跡、それを白い額当てで隠して……?
あれ、この人どこかで見たことがあるような……。
近づいてくる人物の顔を見ながら頭の中でぐるぐると考えてみる。
……あ。思い出した。この人は、彼は、漫画の中の人間だ。
友人が見ていた漫画に出てくるキャラクターだ。
でもどうして?コスプレにしては衣装とか諸々のクオリティが高すぎるな。
「私の顔に何かついているかな?」
「傷が…」
「ああ、怖がらせてしまったかな?」
「そんな大きな傷を始めて見たもので、少し驚いただけです」
「ふふ、そうか」
にこりと微笑むその人が少し怖く見えた。が、美しいと思ってしまった。
この人は他人を魅了するカリスマ性がある。
「君の名前を聞いてもいいかな?」
「犬走凪です」
「凪、綺麗な名前だね。私の名は鶴見篤四郎、好きに呼んでくれて構わないよ」
そう言って、また笑う。その笑顔に心臓をぎゅっと掴まれたような気がした。
そして彼は私にもう一歩近寄り、声を潜める。
「凪はどこから来たんだ?ここではない、どこか別のところから来たんだろう」
「別のところって…」
"どういうことですか"
そう聞く前に鶴見さんは私の耳元にそっと近づき、囁いた。
「場所、と言うより時代じゃないか?」
心臓がドキリと跳ねる。
「その顔を見るに、私の仮説は正しいやもしれんな。この世界は不思議なことばかりだ。未来から突然人が来るのもあるのかもしれないのだろう」
冷や汗が垂れる。何を答えればいいのか、何をすればいいのか。正解がまるでわからなかった。
混乱している私に立て続けに責めるように鶴見さんはポケットからスマートフォンを取り出した。
「これはこの時代では到底作れないものだろう。私はこれを見て君が未来から来たんじゃないかという仮説を立てた。違うかな?」
小さな子供に言い聞かせるような優しい声音だった。
私はつい目を逸らしてしまった。
「ふふ、当たりのようだ」
「あの、私……」
「行くあてがないんだろう。ここにいていい」
「本当ですか!?」
「あぁ、その代わりと言ってはなんだが…とあることを手伝って欲しくてね」
「とある…事?」
自分の家でも、友人の家でもない。病院、と言い表すのが一番妥当だろうか?
だが病院にしては簡素、いや、少し古めかしいような気がする。
タイムスリップでもしてしまったかな?はっはっは!
…いかん、友人としたやけ酒のアルコールがまだ抜けていないみたい。じゃなきゃこんなアホなこと思いつかない。
ため息をつきながらベッドの上であたりをきょろきょろと見渡すと、丁度部屋に医者らしき人が入ってきた。
医者は少し驚いた様な顔をした後、私の方に近寄って軽い検診を始める。
「具合は?それとどこか痛むところはないかい?」
「いえ、大丈夫です」
医者は安心したように笑い、部屋を出ていく。
誰か連れてくる、みたいなことを言っていたけれど一体だれを連れてくるんだ?
両親…はないか、あの人たちが私のお見舞いに来るわけがないし。やっぱり友人か、一緒にやけ酒した仲だもんね。
数分後、部屋に軍人?が入ってくる。あれ上官の服装だよね。どこかの資料で見たことがある。
その軍人の目元に大きな傷跡、それを白い額当てで隠して……?
あれ、この人どこかで見たことがあるような……。
近づいてくる人物の顔を見ながら頭の中でぐるぐると考えてみる。
……あ。思い出した。この人は、彼は、漫画の中の人間だ。
友人が見ていた漫画に出てくるキャラクターだ。
でもどうして?コスプレにしては衣装とか諸々のクオリティが高すぎるな。
「私の顔に何かついているかな?」
「傷が…」
「ああ、怖がらせてしまったかな?」
「そんな大きな傷を始めて見たもので、少し驚いただけです」
「ふふ、そうか」
にこりと微笑むその人が少し怖く見えた。が、美しいと思ってしまった。
この人は他人を魅了するカリスマ性がある。
「君の名前を聞いてもいいかな?」
「犬走凪です」
「凪、綺麗な名前だね。私の名は鶴見篤四郎、好きに呼んでくれて構わないよ」
そう言って、また笑う。その笑顔に心臓をぎゅっと掴まれたような気がした。
そして彼は私にもう一歩近寄り、声を潜める。
「凪はどこから来たんだ?ここではない、どこか別のところから来たんだろう」
「別のところって…」
"どういうことですか"
そう聞く前に鶴見さんは私の耳元にそっと近づき、囁いた。
「場所、と言うより時代じゃないか?」
心臓がドキリと跳ねる。
「その顔を見るに、私の仮説は正しいやもしれんな。この世界は不思議なことばかりだ。未来から突然人が来るのもあるのかもしれないのだろう」
冷や汗が垂れる。何を答えればいいのか、何をすればいいのか。正解がまるでわからなかった。
混乱している私に立て続けに責めるように鶴見さんはポケットからスマートフォンを取り出した。
「これはこの時代では到底作れないものだろう。私はこれを見て君が未来から来たんじゃないかという仮説を立てた。違うかな?」
小さな子供に言い聞かせるような優しい声音だった。
私はつい目を逸らしてしまった。
「ふふ、当たりのようだ」
「あの、私……」
「行くあてがないんだろう。ここにいていい」
「本当ですか!?」
「あぁ、その代わりと言ってはなんだが…とあることを手伝って欲しくてね」
「とある…事?」
1/1ページ