恋の予感は狂気 伊藤夢
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あれから黙々と手を引かれ行き着いた場所は、何度かお邪魔したことのある伊藤くんの家だった。
その間、手首を掴む掌からは彼の怒りが犇犇と伝わってきており、明らかに普段とは違う様子だ。
部屋に入るまでの廊下で出会した圭子ちゃんの「お帰り、お兄ちゃん」にも素っ気ない対応で、思わず眉を顰める彼女が(どうしちゃったの?)と、私にアイコンタクトを送るほどだった。
伊藤くんの部屋のベッドの前まで来たところで漸く足が止まるも、乱暴に身体を放り出された所為でボフッとベッドの上へと倒れ込んでしまう。
「ッぁ、…あの、伊藤くん」
一気に心拍数が上がる中恐る恐る見上げれば、そこには優しい
「美和子」
「…ッは、はい」
「俺は今、スゲー怒ってるぜ」
目が据わって冷たい雰囲気を漂わせる伊藤くんの言葉に、ベッドのシーツをギュッと握り締めた。
その姿はまるで何かに縋っていないと不安になってしまう子供のようだろう。
「う、ん…で、でもそれはッ伊藤くんが他の子にデレデレするからでしょう…、他の人はどうなのかなって…だから、ただ検証してただけで…」
「タダの検証じゃねーよ、危なかったろ」
「こ、んな事になるとは思わなかったの…!相手が開久じゃなきゃ、3人じゃなきゃ平気だった」
そう呟くと眉をピクリと動かす伊藤くんがいて
「ッわ、ぁ…ッ」
気付いた時にはベッドの上に組み敷かれていた。
至近距離となった彼の眼光から視線が外せない。
「い、伊藤く…」
「あのさ、男ナメ過ぎ」
今まで聞いた事のない低い声が耳の奥を突いた。
こんなに怒っている伊藤くんは初めてで、普段怒らない人の本気で怒る姿を目の当たりにすれば狼狽えてしまうのは当然で対処法すらわからない。
喉の奥から込み上げてくるものを抑えられない。
「…ご、ごめんなさぃッ」
あと1回でも瞬きすると零れ落ちてしまうんじゃないかと思うくらい涙ぐんでいると、徐に伸びて来た無骨な指が優しく瞼をなぞるように触れた。
顔から手が離れた途端ガバッと抱き締められる。
「…だってさ、俺が来なきゃどーなってたか。想像するだけでヤダ、スゲー疲れた、ホントに」
安堵の溜息と共にギュウッと彼の腕に力が入る。
「伊藤くん…」
「…ホント、無事で良かった」
「…心配掛けて、ごめん」
ギュウーッと抱き締め返した。
「あとさぁ。美和子も本当はわかってるとは思うけどさ、他の子に靡いたりしないからね。だって俺にはこんなに可愛いカノジョがいんだぜ」
堂々と、だけど照れくさそうに口許を緩める。
いつも通りの穏やかな表情に戻った伊藤くんが、自分の額を軽くコツンーッと私の額にくっつけると、自然と2人の視線は至近距離でぶつかる。
そうやって見詰めると優しく口付けてくれた。
小山さんの対応に過剰反応したのはわかってる。
伊藤くんの隣が私じゃ無かった妬みでしかない。
きっとそれは男女問わず人気のある彼だから、自分でも知らず知らずのうちに焦っていたのかも。
「そんでさ…開久は兎も角、検証したんでしょ?三橋とか。皆んなの反応はどーだったの?」
ゴロンと隣に寝転ぶと興味津津な表情をする。
「え、…それは聞くんだ?」
「そりゃ美和子が危険な目に遭ってまでやった検証でしょ。今後の参考までに聞いておきたいし」
「あー、えーっと…」
大した結果にならなかったからなぁ。
唯一検証外となった今井くんの反応に関しては言わない方が良さそうだから伏せておくとしよう。
「みんな微妙だったよ」
「……へー、そーなんだ」
尻目にぶつかった伊藤くんの視線が鋭く感じた。
え、なに…バレてる?
今の間は明らかに何か知ってる反応だった。
「う、ん…もしかして、何か見たの?」
「実はさ、心配でこっそり跡つけてたんだよね。そしたら今井が美和子の手を握ってるとこ見ちゃってさ…会話までは聞こえなかったからよく分かんないんだけど。ねえ、アレってなんなの」
敢えて普段通りの優しい口調を意識しているのは、不機嫌を隠そうとする努力の所為だろうか。
それが又、感情の本気度を物語ってもいた。
「あ、あれはッ…その、検証してる最中にああなっちゃって多分…普通に告白ぽかったんだけど、今井くんの圧が凄くて吃驚して逃げちゃった」
「エ″、やっぱぞーなんだ…!薄々そんな気はしてたんだけどさ…マァでも、恋人がいるからって告白しちゃいかんルールなんてないもんね…」
「うーん、そもそも私に恋人がいるって事も、伊藤くんが恋人だって事も知らないだろうしね」
苦笑しながら伊藤くんの方へ寝返りを打つと
「………ナルホド、それもそーだね」
私の顔をジッと見詰めながらボソッと呟いた。
すると次の日から伊藤くんは、学校でも形振り構わずイチャイチャしてくるようになったとさ。
