バレンタインデー 智司夢
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たこ焼きを食べてからの帰宅後。それはもう一頻り悩みまくっていた。
突然訪れたピンチだったけど、気持ちを知ってもらえるチャンスに変えれたんじゃないかって。
あわよくば片想いのバレンタインではなく、憧れの恋人同士のバレンタインデートができたんじゃないかって。
そうやって暫くは自室で項垂れていた。
しかし底まで落ちるともう上る選択しかない。
だったらもうバレンタインデーでは、何としてでも本命のチョコを渡して自分の想いを伝えなくちゃ。
そうやって意を決したままの勢いで兄の部屋のドアを開けた。
ノックという名の予告を受けなかったせいか、兄が怯えるように身体をビクッと反応させていた。
「……どーしたの、急に。ビックリするじゃんか」
「わ、私の好きな人って三橋さんの言ってた通り、片桐さんなの!……だから、チョコあげるから邪魔しないでね!!それだけよ、バーカバーカ!」
言いたい事と共に罵声を浴びせると、有無をも言わさぬ間にバタンッと強めにドアを閉める。
終始口をポカンッとしていた兄だけど、もう関係無い。
突然の宣言に驚き過ぎたのだろうね。依然として大声を上げない所か声さえも聞こえてこなかった。
ふふん、開き直るってサイコー。
「ねえ、お姉ちゃん。あの片桐智司のこと好きだったの?噂では凄く恐い人だって聞いてるけど……」
心が晴れ、上機嫌の私は意気揚々と軽やかな足並みで部屋に戻ろうとしていた時に現れた圭子。
「うん。片桐さんって意外と優しくて、堅気な人なのよ」
「フーン、私は会ったことないから噂しか知らないけど……でもいいなぁ、お姉ちゃんは」
私を横目にため息をついた。
「……え、どうして?」
「だって、バレンタインデーあげる人いるじゃない。私はお兄ちゃんだけよ、毎年変わらないもん」
そう言って詰まらなさそうな表情を作ると、圭子は部屋へと入って行った。
そっか、そういうものか。確かに今年のバレンタインデーは、今までとは比べものにならないくらい待ち遠しい。
恥ずかしがり屋な私だからバレンタインデーというイベントに便乗しておかないと、会いに行く口実さえ作れなくて、一人ではなかなか行動に移せない。
だから、ちゃんと勇気出さないとね。
