バレンタインデー 智司夢
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学校帰りに商店街を歩いていると、前から三橋伊藤コンビがこっちに向かってやってくるではないか。
しかもどうやら今朝の話題を兄がまだ引き摺ってる様子にギョッとなった。
「アーン?ンなもん、ダセー奴だったらいじめちまえばいーんだよ」
「お前なぁ、俺はそーいう事を言ってんじゃないの。一体あいつの好きな奴が誰なのか……あ、美和子」
げ、聞こえてた?そんなふうに気不味い表情をする。
「聞こえてますよ。そんな事より、お兄ちゃん。家と逆方向だけど……三橋さんと何処かいくの?」
「あぁ、ちょっと公園寄ってから帰るよ」
「よう、美和子。オメーも一緒にタコ焼き食いに公園行こーぜ。オメーの兄貴が奢ってくれるってよ」
「ハァ!?誰がオマエに奢るつったんだよ!そもそも前にかした金返せよー!!」
商店街のど真ん中で声を荒げて、定番の口喧嘩を始める2人。
いつもなら面倒なので無視して置いて帰ってしまうけれど、今日の私は違った。
あそこの公園のたこ焼きが凄く魅力的だったから。
「……ね、ねえ!」
今にも取っ組み合いになりそうな三橋さんと兄の間に割って入った。
「たこ焼き食べたい!」
「「‥…‥オ、オウ?」」
普通の欲求なのに声を張って主張したのが可笑しかったのだろう。名物の言い合いは直ぐに終った。
威圧的だったかもしれない。たこ焼きを求め過ぎるが故に。
平日に夕方も相待って公園には、どちらかと言うと遊具で遊ぶ子供達よりも、学校帰りの不良学生やカップルで賑わっていた。
そんな中、私達一向が向かう先は広場から少し離れた場所にある屋台。
「おう、智司。来てやったぞ」
屋台の暖簾を潜ると、そこにはかの有名な開久の元頭である片桐智司がたこ焼きの種を鉄板に流し込んでいる最中だった。
ニヤニヤしながら現れた三橋さんへばつが悪そうな表情をみせる。
「あー?三橋か。オラァ、忙しいんだ。どっか行きやがれ」
顔を顰めながらシッシッと追い払う手振りをする。
「何だとーテメー!!客に向かってンな態度とっちゃいけねーんだぞ!馬鹿なんか!!」
「オメーは客でも何でもねーよ」
「あぁ!?て「ハーイ!わーかったわかった!喧嘩しに来たんじゃないでしょー、ミツハシー!妹がいんだから、喧嘩はよしてくれよ。ホント、頼むよ」
2人のボルテージが上がる直前、間へ割って入って仲介役を買って出る兄は手を合わせ三橋さんへ懇願する。
なんていうか、いつもこんな感じなんだろうな。
「伊藤、テメーもいたんか。……それに美和子じゃねーか」
片桐さんの視線が兄からこっちにかわった途端、一気に気恥ずかしくなる。
「そーだよ。今日は3人で智司のたこ焼き食いに来たんだよ」
「そーいやぁ、美和子。オメー智司のたこ焼き好きだよな。誘うとゼッテーついて来るしよ。智司に惚れてんじゃねー?」
鉄板の外に散らかる天かすをつまみ食いする三橋さんの何気無い発言。
私からするとそれはもう、兄と片桐さんの目の前で行われた公開処刑に過ぎなかった。
何故なら図星だから。誰にも明かした事はなかったけど、以前から私は片桐さんの事が好きだった。
