フラワーバレンタイン 中野夢
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「これ、お父さんに。」
思春期真っ只中である中学生の娘が、帰宅した誠へ押し付けるようにしてチョコを手渡す。
照れ臭そうな表情をする娘の結奈とは違って
「………。」
イベント事に疎い誠は、今年もまた受け取った物をただボンヤリと眺めているだけだった。
「ほら、明日はバレンタインでしょ。だから今日ね、お家で結奈が友達と一緒に作ったの。だから貴方にもって、一生懸命作ってたわ」
「…アリガトウ。」
抑揚の無い返事をしながら、指で頭を掻く。
それは照れた時に見せる彼の仕草だった。
「結奈ったらね、去年まではチョコ買ってたのに。今年は好きな人にあげるんだって!だからスッゴーク、張り切ってんのよ。フフ」
「ちょっと、お母さん!余計な事言わないでよ!そんなの、お父さん興味無いったら!」
上擦った声で私に詰め寄る娘は、父の反応が気になるのか様子を伺うように誠を横目に見るが
「……風呂入る。」
素っ気ない態度で脱衣所へと向かって行った。
そんな誠の姿が見えなくなるまで確り見送った後、途端にニヤついてみせる私がダイニングテーブルを指で叩いて、椅子に座るよう娘を促す。
「フフ。…あれは、妬いてるわ。」
「え、何処が?有り得ない、顔色一つ変えなかったし。全然興味無いですよーって感じ!」
思わず結奈が眉間に皺を寄せると溜息を吐く。
「私には、わかるのよ。」
「フーン。だけど、あんなに無愛想で口数少ないのに恋愛結婚だなんて、想像つかない。だって愛情表現皆無じゃん。切っ掛けは何なの?」
「…そうね、切っ掛けになったのは今と同じバレンタインの季節だったかな。愛情表現はあるわよ、言葉よりも大体は行動で示す人だから」
「え″、なにそれ…!うぇ、真逆!あのお父さんが、急に抱きついてきたりするって事?」
「イヤァね、そう言う事じゃなくて…」
あれは、私が23歳で誠が高校生だった頃の話。
フラワーバレンタイン
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