無情な列車の果ては 三橋夢
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たった今、閉ざされた扉。
「ォオ?!美和子!」「貴志…!」
それが私と貴志の狭間を引き裂く。
プシューと放たれた空気音と共に、彼だけを乗せた本日の最終電車が無情にも発車したのだ。
走り出す電車を必死に追いかける、なんてことは決してせず、ただ静粛に見送る事しか出来ず。
ホームに残された私はポツンと一人ぼっち。
電車が走り去った方向を暫く見据えながら、瞬く間に深い溜め息を吐くと、ボソッと呟いた。
「嗚呼、終電逃しちゃった…。」
無情な列車の果ては
お出掛けの帰宅中に電車内で2人揃って仲良く居眠りしてしまった私と貴志が目を覚したのは深夜。
それも最寄から遠いのいて走っていた為、此処から反対路線の電車へ乗り換える必要があった。
しかし反対側のホームには既に本日の最終電車が来ており、足の速い貴志はギリギリ車内に滑り込むも、追いつけなかった私だけが乗り過ごした。
車掌が扉を開けてくれるかと少し期待していたけれど、世の中というものはそんなに甘く無い。
何事もなかったかの様に発車してしまった。
「…これから、どうしよう」
家から遠く離れた、土地勘のない場所。
タクシーで地元まで帰れるくらいのお金は待ち合わせてなかったし、だからと言って気が遠くなるほど長い距離を歩いて帰るのも現実的じゃない。
始発まで、この街で時間を潰すしか無い。
土地勘の無い夜の街を一人で過ごすのは、正直なところ心細いけれど、この際どうしようもない。
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