日本で二番目の男 三橋夢
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ーーげ、アリャまさか。
今日一日の授業(ただ寝てただけ)も無事に終わり、校舎を背にした伊藤と理子と並んで歩く俺は校門まで後少しという所で足を止める。
校門前で、誰かを待ち伏せる女の姿。
思わず理子の後ろへ身を縮め、隠れる。
「ちょっ‥ヤダ、どーしたの。三ちゃん」
「‥お前、何隠れてんだよ。」
生憎、伊藤達の声は届かない。
其れどころではなかったからだ。
うぞ、マジかよ。
何だって彼奴がこんな所におるのだ。
‥‥ハッ、まさか!今朝の一件が暴露て、復讐しに来やがったのか?!
く、なんてセコい女だ!
そーっと、理子の後ろから顔を覗かせ目を開いたり細めたりして、その存在を何度も確認する。
‥‥間違いねえ、彼奴だ。
そう確信した所でその女と目が合う。
「‥‥あ、貴志」
日本で二番目の男
「‥あ、貴志」
バッチリと目が合った。
ヒャー!!バッと再度、理子の背後へ身を潜めるがもう遅い。
「何してるの?貴志」
気付けば直ぐ其処におったとさ。
「うおっ!?ち、違う!‥オレは何も知らん!知らんぞ!」
見つかったその瞬間、隠れるのをやめたオレは勢い良く立ち上がり、唾を飛ばしながら其奴へ繰り返し述べる。
一方、その姿を静かに見ていた伊藤と理子。
話の内容が全く見えないが、どうせ俺が何かを遣らかしたに違いないと、顔を見合わせた後、深く頷いた。
そんな二人を足の先から頭の天辺までじーっと眺めると、フーンと一人で相槌を打って、何かを確信したところでオンナが口を開く。
「…もしかして貴方達が伊藤くんと、…理子ちゃん?」
「え?‥はい、そうですけど」
「えーっと‥」
キョトンとするのも無理はない。
出会うのは勿論、此奴の話すらした事が無かったからだ。
「いつもうちの貴志がお世話になっております。…一応、姉の美和子です」
「「え、‥姉‥‥‥ぇえええ!!」」
ォオ、ナイスリアクション。
伊藤のカッパは二、三歩退いている。
衝撃の余り校門前という事を忘れ、銅像の如く硬直している理子と伊藤の滑稽な姿ときたら非常に目立つ。
‥つーか、そこまで驚くことかよ。
すると伊藤ちゃんが引けた腰を戻す勢いに便乗して、グワッと俺の肩を掴みかかる。
「おまっ、こんなに静かで平和主義そうで人が良さそーな女性がお前の姉チャン!?ウソだ!夢だ!詐欺だ!エープリルフールだ!」
「そーよ、ウソだわ。だってじゃなきゃ三ちゃん、女のシトの扱い上手な筈だもん」
何ということでしょう。
金ちゃんパーティから出るわ出るわの剥き出しの本音が、何も装備していない裸の僕を襲ってきたのです。
「うるせー、伊藤!!」
「イデッ!何すんだよ~。」
涙目の伊藤が殴られた局部を抑える。
理子の分(と日頃の苛立ち)まで殴ってやったからな、そりゃ痛い筈じゃ。
「貴志、手出しちゃダメっていってるじゃない。ごめんね、伊藤くん。この子昔から何度言っても治らなくて、理解能力が無いのか馬鹿なの、許してやってね」
「馬鹿とはなんだー!美和子!」
〝理解能力がない″
「ブフっ、アハハハー!!確かに、それ言えてるぜー。理解できないなら仕方無いかもねー!!」
そういう新しい方向からの指摘に対してツボに嵌る伊藤と理子は、腹を抱えて笑っている。
クソ、だから身内の紹介は気が引けんだ。
ある意味、俺の弱点みてーなモンなんだからよ。
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